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#46

 私は彼が一体全体何をしたのか何も知らない。


 なんか、昨日の午後あたりから授業の内容が違うなと、各教科のノートを見て私は薄々と気がついていた――。



 *



 私のクラスはほとんどが講堂から教室についていた。


 私のせいで午前中の授業は短縮かぁ……。

 そう思っていた時に授業開始を告げるチャイムが教室中に鳴り響く。


 先生が「授業を始めるよー」と言いながら教室に姿を現した。


「起立! 礼! お願いします!」

「「お願いします!」」

「着席!」


 松井くんの号令で授業が始まる。

 今日のこの時間は国語で私達は昨日から人権についての作文を書いている。


 えっ!? 人権週間って12月だよね!?

 なんで、人権週間じゃない6月なのに、人権作文なの!?

 最初はこのクラス全員が「おかしい」とか「変」とか言っていた。


「みんな、木野さんが自殺をしたことを知ってるでしょ? 本来は12月が人権週間だけど、今回はこのようなことが起きちゃったからね……」


 先生が私達に説明している。

 確かに、友梨奈(わたし)が自殺したのは5月の下旬だった。


 私達が通っているこの学校は何度も書いているが、人気校である。

 そのようなことが今後もあると学校のイメージは一気に下がってしまうだろう。


 そのため、今から人権について常に考えていかなければならないというわけで人権作文を書こうということなのかなと思っていた。


「今日は短縮で45分しかないんだからある程度は進めておくように。急ではあるけど、明日発表してもらうからね!」

「先生、もしこの時間までに書き終わらなかったら宿題ですか?」

「そういうことになるね」

「家に着いたら寝ちゃうから、今のうちに頑張って書こう」


 明日、発表かぁ……。

 私は作文は苦手だし、人前で話すことも苦手だ。

 ちょっと、恥ずかしいな……。

 私は他の生徒が騒がしくしている時に手を上げた。


「野澤さん、何かな?」

「先生、原稿用紙は最低何枚分くらい書いた方がよろしいですか?」


 私は先生に問いかける。

 最低○枚と指定があると、それに向けて少し頑張れるから。


「うーん……この原稿用紙は1枚400字だから3枚分1200文字くらい書けるといいね」

「ありがとうございます」


 私は自分が書いた原稿用紙を数えてみると最低枚数と同じくらい書いていた。

 しかし、私はその枚数だと足りない。

 書きたいこと、伝えたいことがたくさんあって原稿用紙3枚分だと足りないのだ。


「先生、あと何枚か原稿用紙をいただいてもよろしいですか?」

「おっ。そんなに書けたの? 何枚くらいほしい?」

「あと5枚ほど……」


 私が先生にそう言うと、教室中にざわめきが起こる。


「もし、余ったら戻してね」

「ありがとうございます」


 私は周りを気にせずに先生から原稿用紙をもらう。

 私は昨日の続きを書き始めた。


 今まで経験してきたことをすべてその原稿用紙に綴り、授業終了までに書き上げ、残りの1枚を先生に戻す。


「書き終わりましたので、お返しします」

「あっ、お疲れ様。みんな、もう少しでチャイムが鳴るから、キリのいいところで止めてね」

「「ハーイ!」」

「分かりました!」


 授業はまだまだ続くけど、私の存在がなくなるまでの時間は少しずつ近づいている。


 これからの授業も1時間1時間大切に受けていこう――。

2016/08/09 本投稿

2016/10/02 修正及び後書き欄の「次回更新予告」の削除

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