#45
私は壇上でまだ土下座している篠田さんを見て、くっくと肩を振るわせながら笑いを堪えている。
「野澤さん。いつまで、下げてなきゃならないの?」
「あと2、3分くらいかしら?」
彼女を見ていて面白かった。
かつては復讐するはず(?)ではなかったのに……。
「もういいでしょう。頭を上げなさい」
「は、恥ずかしかった……」
私は篠田さんに頭を上げるよう指示をすると、彼女は顔を赤くしていた。
「まもなく、1限目が始まりますが、中等部3年の野澤さんの用件はお済みですか」
「えぇ、全校集会を終えても大丈夫です」
「分かりました。今から午前中の授業は50分授業から45分授業へ短縮します。午後は通常通りですので、ご了承ください」
全校集会の司会をしている先生からアナウンスが流れると、講堂から生徒達がぞろぞろとそれぞれの教室に戻っていく。
「篠田さん、あなたが恥ずかしいことをしたからこんなことになりましたのよ?」
「ごめんなさい。本当に木野さんには悲しい思いをさせたから……」
「今さら後悔しても遅いですわ。友梨奈さんはもう還ってこないのです」
「……だよね……」
そう。
私はあと少しで「木野 友梨奈」及び「野澤 結衣」しての人生を終える。
強制的に終止符を打たされるのだ。
「そうなのです。わたくしはあなたに謝っていただけたので、後悔はしていません」
「……そうなんだ」
「きっと、友梨奈さんは許してくれると思いますわ」
「……きっと……?」
彼女はそう言うと、私は静かに頷く。
「結衣、教室に戻ろう!」
「授業が始まっちゃうよ!」
柚葉と白鳥さんが講堂の入口で私を呼んだ。
私は「分かりましたわ!」と返事をする。
「篠田さん。では、後ほど」
「うん」
私は篠田さんと別れ、柚葉達と教室へ向かった。
*
ジャスパー先生はおそらく、診察室でさっきの全校集会の様子を見ていたと思う。
「友梨奈さん、よくやってくれましたね……」
彼はふと苦笑を浮かべ、手元に置いてあるメモパッドに何かを書き始めた。
「やはり、自殺行為が起きたからには、人権やヒトの命に関する授業をしていただきたいものですね……」
ジャスパー先生が書いたメモ。
それは「授業内容の変更」と書かれていた。
2016/08/08 本投稿
2016/10/02 後書き欄の「次回更新予告」の削除




