#41
私達は違う場所ではあったが、私と彼はおそらく、同じタイミングでふと笑っただろう――。
それは嫌味っぽく、冷酷に――。
*
「あっ……診察室の電気を消し忘れてしまった……」
彼は診察室の電気の消し忘れに気づいたらしい。
そこに戻ろうとして後ろを振り向いた時、私は「ジャスパー先生?」と呼んだ。
「おや? 友梨奈さんからこちらに伺うなんて珍しいですね」
ジャスパー先生が私に気づいてくれ、私はほんの一瞬だけ微笑む。
私はすぐに真顔に戻ると、「あの……実は私、訊いておきたいことがあったので……」と少し躊躇いながら彼に言った。
「それは、なんでしょう?」
彼は私に問いかける。
「……もし、私の目的が果たされたらどうなるのかが知りたくて……」
「僕もあの頃から、ずっと脳裏に引っかかっていました。そのことについて訊きたかったのですね?」
「ハイ」
「実は僕も先ほど解析を終えたところです。まぁ、友梨奈さんの解析ではないと言った僕も同じことをしましたから」
「やっぱり、私のことだったんですね」
「ご察しの通りです」
やはり、彼が言っていた解析は私の解析だったんだ。
お互いに隠していた胸のモヤモヤが晴れたような気がする。
「早速で申し訳ありませんが、友梨奈さんは目的を果たしましたら、あなたの存在はなくなります」
「転生する前に言ってた、魂しか存在しない「亡霊」ですか?」
「えぇ。しかし……」
彼は即答していたが、私は再びショックのあまり何か言ってるけど、聞き流してしまった。
もう、目的を果たしたら私の存在がなくなってしまうのは寂しすぎる。
「私の第2の人生もやっぱり短いのか……」
「後悔はしていませんか?」
「実はしてますね。部活に顔を出していなかったので……」
まだ、私が「野澤 結衣」として学校に通い始めてまだ1日しか経っていない。
クラスのみんなと話したいし、部活にも行きたいし、まだまだやり残したこともあるから――。
「そうでしたか。友梨奈さんが「野澤 結衣」として前世にいられる最終日が近づいているのです」
「あと何日、猶予があるんですか?」
「あと、2日間です」
「あと2日でやり残したことをやるのはキツいと思うけど、少しでも後悔のないように過ごします」
2日でやり残したことを全力で片づけようと決意した。
「木野 友梨奈」としても「野澤 結衣」としても――。
2016/08/04 本投稿
2016/10/02 後書き欄の「次回更新予告」削除