#40
「えっ!? なんですって? もう1度、言ってごらんなさい?」
先ほど、篠田さんが言ったことはちゃんと聞こえていた。
しかし、そこで普通に話しを続けても面白くないので、私はあえて聞かなかったふりをする。
「だから、ウチはあの人をいじめて超ー愉しかった」
その言葉を再度聞いた白鳥さん達の表情が凍りついた。
そう。その表情――。
私は彼女らのその表情を求めていたのだ。
ふと嫌らしく笑う私がいる。
「それはそれは愉しかったでしょうね? あなたと他の何人かが中心となって友梨奈さんをクラス全員でいじめたのでしょうから。あなたの指示で。そうでしょう?」
「……ハイ……」
篠田さんは私の質問に詰まらせながら答える。
「さて、次の質問。秋桜寺くんと彼女がつき合い始めた時、あなたは友梨奈さんに対して、嫉妬していた。彼女が憎かった。それは本当のことかしら?」
「……半分本当で半分、嘘……」
彼女から返ってきた答えは曖昧な答えだった。
「曖昧な回答ですわね? どちらか決めてくださらない?」
「………………」
私が篠田さんに問いかけるが、彼女は何も言わない。
「わたくしは曖昧な回答が大嫌いですの。もう1度伺います。それは本当ですか?」
「ハイ、本当です。3年生になって木野さんと同じクラスになったら、ハメようと言ったのも、まひろさんと柚葉さんを含めたクラス全員を巻き込んで愉しんだのものも……」
彼女は私の質問にようやく答えてくれた。
篠田さんは1度言葉を切り、こう続ける。
「最初にまひろと調子に乗りやすい男子グループに話しかけた。そうしたら、彼らは喜んでやってくれた。実際にやっているウチはやられている木野さんを見ていることが愉しかった。そこからどんどんクラス全員にまで広げてエスカレートしていったんだと思う」
彼女は自分が思ったことを口にした。
これですべてかどうかは分からないが、篠田さんは最低な人間なことが明らかになった。
「よって。すべて、あなたの責任でよろしいのかしら?」
「ハイ」
「ならば、明日の全校集会の時に先生と全校生徒の前で謝りなさい? きちんと土下座をしていただければ、わたくしは教育委員会に訴えなくて済みますので」
私がそのように言うと、彼女は「分かった」と返事を返し、教室から出て行く――。
*
薄暗い診察室のようなところから白衣を着ている男性がモニター画面からその様子を見ていた。
「彼女らのやり取りは見ていて面白いのに、終わってしまいましたね……」
彼がその電源を消す。
「あなたの解析は終わりました。あとは最終日を決めるだけですね……」
彼はそこから電気を消さず、静かに姿を消したのであった。
2016/08/03 本投稿
2016/08/04 修正
2016/10/02 後書き欄の「次回更新予告」の削除