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#3

 私達が通う私立花咲大学付属中等学校。

 この学校は中高一貫校だから、1番最初に私やパパが言ったとおり、高校受験がないエスカレーター式の学校だということが分かる。


 ちなみに、私立の中高一貫校の中で指折りの人気校。

 中等部は1学年1クラスあたり35人が6クラスある。


 中等部の学生達はたまに移動教室や先生から呼び出されない限り、高等部の敷地内に少しお邪魔するくらいのため、そこは1学年何クラスあるかは分からない。



 *



 私と聡が正門をくぐった時にはすでにたくさんの学生達がクラス表付近に集まっている。


 また、別のところに2年生が同じように集まっているため、校内全体が騒がしい。


「うわー……凄く混んでるな」

「そりゃ、仕方ないよ。各学年200人以上が一斉に見にきてるんだもん」

「だよな……。新井達はすでに着いて、あの中に紛れてるかな?」


 聡が凪達を首を無駄に動かし、捜し始める。


「あっ、いたいた! 早紀達も見始めてるみたいだから、私達も見に行ってみよう?」

「本当だ。見に行こう」


 私達が人混みの隙間から早紀と凪を見つけると、彼女らはすでに1組から順番にクラス表を見始めている。

 私達もあとを追うように1組から順番に見に行くことにした。



 *



 ううっ……。

 なかなか自分の名前が出てこないよ……。

 早紀は3組、凪は2組に名前があった。

 残りは私と聡だけ。

 どうか、私達だけでも同じクラスになれますように……。


「おっ、僕は4組だ」

「私の名前がないから、別のクラスだね」


 聡は4組かぁ……。

 肝心な私の名前は残念ながらまだ出てきてない。

 神様。

 なぜ、私達は同じクラスじゃなかったのですか?

 私は3学期が終わってすぐくらいからずっと祈っていたのに……。


「友梨奈の名前が見つかるまでつきあうよ?」

「ありがとう」


 聡はなんて優しいの……。

 私達は速やかに4組のクラス表をあとにした。



 *



 5組のところにも私の名前はなく、最後の6組のところに足を踏み込んだ。


「やっと見つかった!」

「お疲れ様」

「なんか、みんなバラバラだね……。聡は3年間同じクラスの人いた?」

「2人だけだけどいたよ。友梨奈は?」

「私は残念ながらいないね……。ほとんどはじめての人と1年の頃以来が数人くらい」

「やっぱり、1学年が200人以上だから仕方ないよな」

「うん」


 聡は愚か、凪と早紀まで別々のクラスになってしまった。

 これじゃあ、凪達に会う顔がないよ……。

 私が肩を落として落ち込んでいる時、


「おはよう。木野 友梨奈さんだよね?」


と声をかけられた。

 その声は聞き覚えのあるようなないような……なんとも言えない。


「ハ、ハイっ! おはようございます!」


 私は驚いて、思わず素っ頓狂(すっとんきょう)な声を出してしまった。

 私の隣にいる聡はふと見たら、噴いて大爆笑してるし!


「あはは……」


 聡が大爆笑したせいで、知らない人まで笑い始めちゃったじゃん!

 もう! どうしてくれるのよ!?

 私は聡に怒られる覚悟で彼の靴の先を軽く踏んだ。


「突然、話しかけて、おまけに笑っちゃってごめんね。わたし、吹奏楽部でホルンのパートリーダーをやってる、荒川(あらから) 柚葉(ゆずは)。今日から同じクラスだから、よろしくね」

「荒川さん、よろしくね」


 確か、同じ部活にそういうような名前の人がいたような気がする。

 あとは……定期テストの上位者のランキングに毎回載っていたような記憶がある。


「部活でもパートが違くて、あまり話したことがないのに、少しわがまま言って申し訳ないけど、わたしのことは柚葉って呼んでほしいな。わたしも友梨奈って呼ぶから」

「うん。改めてよろしくね、柚葉」


 同じクラスに同じ部活の人がいてよかった。

 それだけでも嬉しかった。


 神様、ありがとう。

 聡や早紀、凪と同じクラスになれなかったけど、同じ部活の柚葉と同じクラスになれただけでも私は幸せです!


「オーイ! 友梨奈、秋桜寺!」

「あっ、柚葉ちゃんもいる! おはよう」


 凪と早紀が私達を見つけて駆けつけてきた。

 早紀は柚葉がいることに気づき、手を振っている。


「おはよう、早紀」

「みんなは何組だった? 僕は4組」

「ボクは3組」

「あたし、2組」

「私と柚葉は6組」


 聡をはじめ、早紀、凪、私の順にクラスの報告をしていく。


「みんな、バラバラだね。わたし、友梨奈と同じクラスでよかった」

「荒川は同じクラスに知り合いはいないのか?」

「実は友梨奈と同じく知らない人しかいないんだ」

「そうか。荒川ももしよかったら友梨奈と一緒に顔出しにおいで」


 聡はいつもの優しい笑顔を柚葉に向けて言う。


「あ、ありがとう。漢字はすぐに出てくるけど、名前の読み方が分からないから教えて?」

「ああ。僕、変わった名字だから最初は誰も読めないけど、秋桜寺と書いて『しゅうおうじ』と読むんだ」

「なるほど……。秋桜寺くん、ありがとうね」


 聡の名字を本人から聞いて納得したみたい。

 柚葉はさっき、凪が彼の名字を呼び捨て言っていたことを忘れたかもしれないけど。


「じゃあ、またあとで話そうな!」

「「うん!」」


 こんな時間がずっと続けばいいなと思ったけど、実際は私と柚葉以外はみんな、別々のクラスということが現実なんだよね……。



 *



 新しい教室で新たな生活が始まるという不安と緊張感がある。

 おまけに知らない人が多すぎて私は戸惑っていた。


 知っている人は柚葉と何人かしかいないのに凄く心強いと思っているやさき、3年生の一部ではこんな噂が流れていたの。


「3年6組は問題児が多い」

「落ちこぼれクラス」

「他のクラスの余り物しかいない」

「すぐに学級崩壊が起こりそう」

「このクラスの成績上位者と中位者が可哀想」


などと言われ始めていた。


 その噂を聞いた私はこう思った。


 このクラスで中学生活最後の1年間は楽しく過ごせるという保証はないということを……。

2015/12/12 本投稿

2016/01/31 改稿

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