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#34

 一時的な休憩を終え、ジャスパー先生がいなくなったあと、私は1人でずっと悶絶していた。

 おそらく、周りから見ると、「この人はなぜ難しい表情をしているんだろう?」と思われているかもしれない。


 現段階の収穫は「篠田さん」という名の重要な鍵を握る人物がいるだけだ。

 私はそのままの表情ですっかり冷めてしまった親子丼をパクパク食べる。


「…………今は周りに人がいっぱいいるから言えない!」

「なんで!?」


 私がそれを食べ終え、難しい表情から普通の表情に戻ると、篠田さんが白鳥さんに言った。


「篠田さんに白鳥さん?」

「「の、野澤さん」」

「周りをよくご覧になって? みなさま、驚いていらっしゃいますわよ?」


 私が彼女らに注意を促す。


「そ、そうだね」

「そう言われると、さっきから、ウチらは恥ずかしいことをしてたよね。ごめん……」


 白鳥さん達も周りの学生達が通り過ぎるところを見るとくすくす笑われているようだった。


「もし、そのことについて話されるのでしたら、わたくしにも聞かせていただこうかしら?」

「……僕も」

「……あたしも」

「……ボクもー」

「……わたしも」

「……僕も知りたい」


 私がそう言うと、聡、凪、早紀、柚葉、松井くんも反応した。

 彼らはまだ食べているようで、急いで飲み込んで答える。

 その光景には私も少し驚きを隠せなかった。


「……野澤さん達や委員長まで……今日はいろいろと忙しいと思うし。明日の放課後、話すから! それでいいでしょ?」

「えぇ。分かりましたわ」

「分かったー」


 明日の放課後、篠田さんの口からその経緯が語られる。

 これで100%ではないけど、手がかりが得られるといいなと思っていた。

 それはわずかな望みではあるが――。


「じゃあ、ウチらは先に行くから」


 彼女はそれだけ言うと、そそくさと食堂をあとにした。


「みんな、5時間目は体育だよ? 急がなきゃ」

「そうだね。間に合わなくなっちゃうしね」


 松井くんと白鳥さんがお茶を口に含むと、椅子から立ち上がる。


「まぁ、野澤さんは何もかもがはじめてだから、少しずつ慣れていってね」

「ハイ」


 柚葉が私に声をかけたのと同時に早紀達も彼らと同様に立ち上がった。


「あたしのクラスは美術!」

「いいなぁ。柚葉ちゃん達は体育で凪ちゃんのクラスは美術なんだ。ボクのクラスは嫌いな数学だよ」

「僕のところは英語だよ」


 みんな別々のクラスだから授業がバラバラなことは仕方がない。

 確か、私のクラスの体育は5組と合同だったはず。

 私はそう思いながら、食器を片付けていた。


「「結衣ー! はーやーくー!」」


 食堂の入口の方からかな?

 私の名前を呼ぶ声が聞こえる。

 その声の主は柚葉と白鳥さんだった。


「今、行きますわ!」


 私は急いで片付けを終え、彼女らのところに駆けつけた。

2016/07/22 本投稿

2016/10/02 後書き欄の「次回更新予告」の削除

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