#33
「バッドタイミングでしたね……」
「ジャスパー先生!」
彼からするとバッドタイミングではある。
しかし、私からはグッドタイミングだ。
噂をすれば彼は時間を止め、ぬっと現れる。
その時だけ、私は「野澤 結衣」という架空の人物から、本来の「木野 友梨奈」に戻れるから、ちょっとした休憩時間だったりするんだよね。
「まるで、修羅場みたいだ……」
「そうですね」
「友梨奈さん、ちょっと……」
「ハイ?」
「彼女はおそらく重要な手がかりを持っていらっしゃると思いますよ?」
「篠田さんですか? やっぱりそう思いますよね!?」
「さぁ……それはどうでしょう……」
ジャスパー先生はここ最近は酷いし、こればかりは矛盾してるなぁ……。
やっぱり、篠田さんが絡んでいたのか曖昧だ。
「僕はヒントを与えただけです。それを見極めるのは友梨奈さん。あなた自身ですよ?」
「……そうでした……」
私はふと疑問に思った点がある。
ちょっと、訊いてみようかな。
「あっ、変な質問をしてもいいですか?」
「どうぞ?」
「……やっぱり、いいです……」
「……いいのですか?」
「ハイ」
しかし、あえて訊かないことにした。
その理由は「もし、目的が果たされたらどうなるか」。
それで、私は本当に死んでしまうのではないかと不安になったからだ。
「さて、僕もそろそろ解析を始めなければ……」
「解析?」
「……いぇ……友梨奈さんのことではありませんので、ご安心を」
「ハイー!?」
えーっ!? 何それー!?
私にとって、それは1番重要なことですよ!
ジャスパー先生からすると全く違うことかもしれないけど――。
もし、私に関することだったらどうするのよ!?
「あははは……。それだから友梨奈さんは面白いのです」
「それはどうも」
私のどこが面白いのか分からないけど、ジャスパー先生は大爆笑していた。
そんな彼をよそに私は適当にそう答えておく。
「ところで、話は変わりますが、昼食後の友梨奈さんのクラスは体育なのですね?」
「そうですよー」
「急がなくていいのですか?」
「うっ……ちょっとヤバいかもしれません!」
「その通りですね。お友達も移動や授業の準備などの時間もありますので、急いだ方がいいと思いますが……」
気がついたら食堂にある壁時計を見たら13時10分を指していた。
5時間目の授業が始まるのは13時30分から。
確かに、先ほども言われた通り急がなければならない状況だ。
「デスヨネー」
「さて、僕は戻りますかね……」
「もう戻るんですか?」
「えぇ、一応はこちらも休憩時間なので、少し様子を見にきただけですので、では」
あっ、戻っちゃった。
まぁ、病院で働く人も休憩時間くらいはあるだろうし。
私は心の中でいろいろと揺らいでいた。
本当に篠田さん達が張本人なのかどうか。
他のクラスの生徒なのかどうか――。
アレが正しいのか、コレが正しいのか……といろいろと考えているうちに、頭がこんがらがってしまっている自分がいる。
その解答を出すその時まで――。
2016/07/16 本投稿




