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#30

 私は親子丼とサラダうどん、ミックスフライ定食のうちどれにしようか迷った。

 なぜならば、学食はとても美味しいから!

 あとは久々に何人かと食事をすることも楽しみだったから。

 少し単純すぎる理由たけど、今日はコレを食べよう。


「じゃあ、わたくしは松井くんと同じく親子丼にしましょう」

「おっ、野澤さんも親子丼か。僕のこと分かってるね?」

「いいえ。美味しそうでしたから」


 さっき、松井くんが「玉子がふわっとしてて美味しい」と言っていたことを思い出した。

 実は私、学食の中で親子丼が1番好き。

 親子丼だけだと野菜がないからサラダもつけよう。


「僕は親子丼単体にする」


 えっ!?

 松井くん、それは本気で言ってるの?

 それとも、冗談なの?


「栄養バランスがよろしくなくて?」

「あははは……。そうだよね。僕はほうれん草のおひたしをつけよう」

「松井くんが冗談言ってるー。まひろにも聞かせたかったなぁ」


 松井くんが言ったのはやっぱり冗談だったんだ。

 柚葉はクスッと笑っている。


「松井くんが冗談を言うのは珍しいことですの?」

「超レアだよ! 普段はあまり言わないもん!」


 へぇー……。

 松井くんが冗談を言っているところ、はじめて見た。

 確かに、前は冗談を言っているところは見かけなかったかったので、彼の意外な一面が見ることができたような気がする。


「さてさて、まひろはわたし達の席、取れたかな?」

「どうでしょうね?」

「まずは行ってみようか」


 私達は白鳥さんがいるところを探し始めた時、彼女は私達を見つけて手を振っている。


 私はふと気づく。

 よく見たら白鳥さんの近くには早紀や凪、聡の姿があったから。


「柚葉ちゃん、遅かったね。その子がまひろちゃんが言ってた野澤 結衣ちゃん?」


 早紀が柚葉に問いかける。

 彼女は「そうだよ」と答えると、白鳥さんが「木野さんの親戚だってー」と補足を入れた。


「友梨奈の親戚なの!?」

「友梨奈の親戚なのか!?」

「友梨奈ちゃんの親戚なの!?」


 凪達は驚いた表情で同じ言葉を柚葉の後ろにいる私の方を見ながら言ってきた。


「え、えぇ」

「せ、せっかくだから、座って話さないか? 通路が塞がってるからさ」


 聡が後ろの方に指を指す。

 私達が早く座らないせいで後ろの方が数珠つなぎとなっていた。


「「そうだね」」

「みなさま、すみませんでした」

 私は後ろにいる人に向かって謝る。

 私達は適当に座ると、私は偶然、聡の隣だった。


「僕と白鳥さん、荒川さんは自己紹介済んでるから、みんな、お願いね」


 松井くんがそう言うと聡が納得したように頷く。


「そうか。白鳥や荒川達は同じクラスだもんな。僕は秋桜寺 聡」

「あたし、新井 凪。呼び方はなんでもいいよ!」

「ボクは工藤 早紀だよ」

「わたくしは野澤 結衣と申します。よろしくお願いします」


 なんでだろう?

 私は「野澤 結衣」として転生したのに、なぜか、聡達とははじめて話した気にはならなかった。

 パパやママも同じようなことを言っていたので、今さらではあるけど、それが少し分かったような気がする。


「「よろしくね」」

「よろしく」


 聡のいつもの優しい笑顔。

 凪の無邪気な声。

 早紀のおっとりとした話し方……。


 みんな、全然変わらなかった。


 私は思わず涙を零していた。


 彼らは私が周りから避けられる前と同じように接してくれたから――。

2016/06/18 本投稿

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