#28
そう思ったやさき……。
「の、野澤さん? さ、さすがに今からだと1時間目が始まっちゃうから昼休みにしよう?」
柚葉が少し慌てたような口調で私に言ってくる。
よく考えてみたら、あと数分後には1時間目が始まってしまう。
「そうだよ。昼休みにしようよ」
「授業はサボっちゃダメだしねー」
「白鳥さんはいつもサボってるだろ?」
「バレた? さすが、学級委員長!」
白鳥さんと松井くんは楽しそうに話している。
彼女は相変わらず、授業をまともに受けていないらしい。
さすがに彼も柚葉もそれには呆れているようだった。
「そうですね」
ふと気づいたら私の周りに人だかりができていた。
やっぱり、この時期に転校生は珍しいし、話したいことはたくさんあるだろう。
短い休み時間はできる限り、クラスメイトの質問に答えていくようにした。
なぜなら、最初が肝心だから――。
*
校内にチャイムが鳴り、4時間目が終わった。
少しずつ教室から人が出ていく。
私がこのクラスにきてから、まだ半日しか経っていないのに、周りのクラスメイトからたくさん話しかけられたのは久しぶりだった。
こうして今も私の周りには小さな人だかりができている。
「野澤さん、一緒にご飯食べに行こう。僕は学食だからさ」
そんな中、松井くんが私に声をかけた。
「いいですわよ。わたくしも学食ですので」
私は彼の誘いに快く応じると、柚葉と白鳥さんが人だかりの間を縫って顔を出した。
「松井くんは野澤さんを独り占めだね。わたしとまひろも学食だから、みんなで行こうよ! 食堂までいろいろ案内しながら行けるしね」
「そうだね。ご飯はお弁当の持ち込みも大丈夫だからね」
「どちらでもいいのですね。ありがとうございます」
「学校案内ツアーの始まりだ!」
*
その時、私はアレ? と思った。
「友梨奈さん?」
私はそのふと問いかけに「ハ、ハイ!」と素っ頓狂な返事をする。
「って……ジャスパー先生じゃないですかぁ……」
「久しぶりですね」
「言われてみれば……久しぶりかもしれないですね」
ジャスパー先生は軽く頷き、彼は「さて……」と呟いた。
「現段階で分かったことはありませんか?」
「え、今のところはないですね……」
確かに、ここまでの収穫は0だなぁ……。
「そうですか……。何か分かるといいですね?」
「……ハイ……」
「では、僕はこれで」
うっ……何、この威圧的な雰囲気を放った言い方は!
ジャスパー先生が出てこなかったら、いくつか伏線回収できたのにー!
2016/06/04 本投稿