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#27

 松井くんはまだ私の方を見ており、今度は複雑な表情を浮かべている。


「どうかされましたの?」


 私は彼に問いかけた。


「実はその席、亡くなったクラスメイトの席なんだ……」


 松井くんはどこか寂しげに言う。

 やっぱり、この席は私の席になる予定だったんだ。

 そして、彼はこう続ける。


「僕が……僕がもう少し周りを見ていれば、彼女は自ら命を絶たずに済んだのに……」

「松井くん、でよろしかったかしら?」

「あ、うん?」

「……わたくしはその人の親戚に当たる者ですの」


 私は彼にさらっと告げた。


「えっ!?」


 その時、松井くんはもちろん、他のクラスメイトから一斉に視線を向けられ、周囲はざわめき始める。


「野澤さんが木野さんの親戚?」

「マジで!?」

「あの女と血が繋がってるわけ?」

「ありえない!」

「つーか、全く似てないよねー」

「そうだよねー」


 教室中にそのような声が聞こえてくる。


「えぇ、そうよ」


 結衣(わたし)は友梨奈の親戚であることをアピール。

 「木野 友梨奈」本人であることを隠さなきゃならない。

 だって、「木野 友梨奈」という人間は姿は存在しないけど、魂だけは存在している身なのだから――。


「木野さんの親戚ならば、告別式に参加してるはずだよね?」

「こんなに可愛い子、いなかったし……」


 白鳥さんと柚葉が私に対して、非難の目で見ている。

 絶対にあの2人には結衣(わたし)が友梨奈だということが分かっているような口ぶりだった。


「実はわたくし、入院していまして……」


 私は入院してたんだよ!

 入院(これ)は本当のことなんだよ!


「なるほど」

「だったら、告別式とかに出られるわけがないよね」


 2人ともあっさりと認めている。


「ところでさ、あの女が死んだだろ?」

「それで、こんなに可愛い子がこのクラスにきただろ?」

「「俺達、ラッキーだよな!」」


 このクラスの主犯格である男子とその取り巻きがゲラゲラと笑いながら私に向かって指を指した。


「人に向かって指を指すことを止めなさい?」


 私は泣きたい気持ちになりながら言う。

 ここで泣いたら今までの自分に逆戻りしてしまうし、これでは前世に戻った意味がなくなってしまう。

 今はどうにかして伏線を探らなきゃ。


「ハ、ハイ!」

「す、すみませんでした!」


 なんて、素直なんでしょう……。

 彼らがすぐに謝ってくるなんて、今まではありえなかったのに。


「さて、どなたでも構いませんが、わたくしにこの学校を案内してくださらない? さあ、今すぐに!」


 私はクラスメイトの視線を浴びながら、こう告げていた。

 さすがに最後のは言い過ぎかなと思ったが、こういうのもアリかなと――。


「僕が!」

「あたし達が!」


 挙手をしてきたのは松井くん、白鳥さんと柚葉の3人だ。

 この3人なら、何か分かりそうな気がする。


「ならば、わたくしを含めて4人で行きましょう」

「「4人で!?」」

「えぇ。もし嫌でしたら、他の方に頼みますので」

「「……ハイ……」」


 彼らはしぶしぶ返事をした。

 実際は案内する必要はないけど、自分から申し出たのだから、きちんと案内してもらおう。

2016/05/28 本投稿

2016/06/04 誤字修正

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