#24
私が入院している時に友梨奈の葬儀及び告別式が終わっていた。
パパとママがいろいろと落ち着くまではリハビリと今までの授業の遅れを取り返そうと勉強に励んでいる。
私は1人で談話室でカップに入った冷たいミルクココアを飲みながら国語の教科書を読んでいた。
「結衣ちゃん、いたいた!」
突然、大声で私を呼ぶ声が耳に入ってきた。
よく「病院では静かにしましょう」と言われていることを忘れているのではないかと思う私がいる。
「こんにちは、おじさま」
なんだ、パパの声か。
私はにっこりと微笑みながら、パパに挨拶をする。
「こんにちは。さっき、先生が退院の日を言ってたよ?」
「本当ですか? いつかしら?」
「やったぁ! 退院できる! いつ?」と言いたかったんだけど、今は友梨奈じゃない。
結衣だから、こんな風に変換されてしまう。
「明後日だってさ。次の日から学校に行ってもいいでしょうって言ってた」
「退院して次の日から……」
次の日から学校に行かなければならないということは私が通っていた学校の転校生という扱いなのかと思うとなんか複雑だ。
「あっ、前の学校で嫌なことがあったのか?」
「え、えぇ……。実は前の学校で吹奏楽部でクラリネットをやっていたのですが、なかなかコンクールメンバーに入れませんでしたの」
嘘をついてしまったが、こればかりは仕方がない。
「結衣ちゃんもクラリネットやっていたのか。逝ってしまった友梨香と友梨奈も吹奏楽部だった」
「2人とも、クラリネットを演奏されていらしたのですか?」
「クラリネットは友梨奈だけ。友梨香はフルートだった。そうだ、もしよかったら、このクラリネットを君に託そう」
「それは友梨奈さんの……」
パパの手には私が使っていたクラリネットが入ったバック。
それを結衣に手渡してきたのだ。
「使わずにずっと放置しておくより、誰かに使ってほしいのさ。きっと、友梨奈もそれを望んでいると思うんだ」
「おじさま……」
私は嬉しくて、目から一筋の涙がこぼれた。
だって、パパは私の遺品として残しておいてくれたんだもん。
パパ、楽器を売らないで取っておいてくれてありがとう。
私の楽器を取っておいてくれたんだから、友梨香の楽器も取っておいてくれてるよね?
*
そして、無事に病院を退院し、久しぶりの我が家へ戻った私は次の日の学校の準備を始めた。
私の部屋の机の上にはすでに新しい教科書が届いていた。
それと同時に、今までの嫌な記憶が蘇る――。
だけど、これからは「自殺する前までの伏線回収するために客観的に見ていき、できたらハッピーエンドにする」と誓った。
もう完全に後戻りできない。
そんなのは分かってる。
私は後悔しないよう、第2の人生のスタートラインに立った。
2016/05/07 本投稿