#19
彼は再び、ふと冷笑を浮かべる。
私を私以外の人物にさせるために……。
私は少し不安ではあるが、少し楽しみだ。
私以外の人物はどんな人物なのだろうかと……。
*
翌日。
ついに、私は木野 友梨奈として最期の日である手術の日を迎えた。
私は病室で簡単に体操をしている時、コツコツと足音が近づく。
私の病室の前でその音が止まり、ドアを叩く音が聞こえてきた。
「ハイ」
「失礼します。友梨奈さん、おはようございます」
「おはようございます!」
「昨日はよく眠れましたか?」
「ハイ……」
私は少し苦笑するが、実はよく眠れなかった。
「そういえば、今日の手術って痛くないですか?」
「今回の手術は全身麻酔ですので、痛くないと思います。あなたが目を覚ましましたら、別世界ですよ」
なんだ、今回は全身麻酔なんだ。
なら、手術は大丈夫かな?
「……ジャスパー先生、最後のは大袈裟ですよ……」
「そう思いましたか? 実際は本当ですよ?」
今はジャスパー先生の言ったことに少しだけ、信用できなかった。
本当ならば前世にちゃんと戻れたら素直に喜ぼう。
「さて、友梨奈さん。あと少しであなた以外の人になれるのですよ?」
「そ、そうですね」
彼が言ったことにやっぱり信用できないけど、なってみなければ分からないことってあるよね。
「では、僕は手術の準備をしてきますね」と言うと、ジャスパー先生は私の病室から出て行った。
*
あれから、1時間くらい経ったあと、看護師によって私はベッドで病室から手術室へ連れて行かれた。
そこには手術着を着た何人かの医者と看護師がいる。
「ベッドから担架に移動します」
「「いち、にっ、さんっ!」」
ここが手術室なんだ……。
凄く本格的!
なんだか医療ドラマに出てるみたい!
私はいろいろな意味で興奮していた。
「みなさん、準備はできましたか?」
「「ハイ!」」
あれ?
今の声はジャスパー先生だよね?
私は彼をよく見てみる。
他の医者達と同じ手術着を着て……あっ、髪型が違う。
いつもなら隻眼なのに、両目が――!
イケメンがよりイケメンになっているではないか!
「友梨奈さん、顔が真っ赤ですよ?」
「いぇ、なんでもないですー……」
私達が話していると、他の医者達に笑われてしまった。
「では、これから全身麻酔を投与します。徐々に意識は遠退きますが、目覚めたら手術は成功。あなたの第2の人生の始まりです。よろしいですか?」
「ハイ。分かりました」
「では、麻酔の投与をお願いします」
私の身体に全身麻酔が投与されていく。
意識が朦朧する中で「手術を始めます」と微かに聞こえたが、その時には麻酔によって私は深い眠りについていた。
2016/04/09 本投稿
2016/10/02 後書き欄の「次回更新予告」の削除




