表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/53

#1

【作者より】

本作品は友梨奈の一人称で進めております。

また、作者は一人称で連載ははじめてですので、暖かい眼差しで読んでいただければと思います。

 ジリリリリ……。


 目覚まし時計が私の部屋の中でけたましく鳴り響く。


「むぅ……」


 私、木野(きの) 友梨奈(ゆりな)は目覚まし時計のアラーム音で目が覚めた。


「寒い……」


 掛け布団の中からゆっくり左手をのばして目覚まし時計を止める。

 やっぱり朝だから、冷たい空気が左手に包まれてすぐに冷えてしまう。


「うーん……(もう少し温まろうかな……)」


 本来はもう少し温かいお布団の中にいたいけど、今日からはそうはいかない。

 仕方なくベッドから起き上がり、部屋のカレンダーを見てみる。


 今日は4月8日で始業式。

 今日から中学校最後の年である3年生!

 だけど、私が通っている学校は私立の中高一貫校だから、正しくは中等部3年生。

 中学生活最後の運動会に学校祭、修学旅行などと楽しい行事がたくさんあるけど、公立の中学校に通ってる人は高校受験があるんだっけ?

 私立に通っている私はエスカレーター組だから、受験を受ける必要はないから大丈夫。


 そんなわけで今、私が1番楽しみなことはクラス替え!

 私が通っている学校は毎年クラス替えが行われているから今年はどうなのかなぁと思ってて。

 3年間一緒のクラスになる人はいないかなと思うと少しワクワクする。

 まぁ、逆に3年間一緒のクラスじゃなかったよという人もいると思うけど。



 *



「おはよう、友梨香(ゆりか)


 私はパジャマ姿のままで、部屋の本棚に置いてある写真立てを手に取り、話しかける。

 それが私の毎日の日課なの。


 その写真は2つの同じ顔で持っている楽器と髪型が違うだけの写真。

 それは去年の夏に行われた吹奏楽コンクールの時に撮った大切な写真なんだ。

 サラサラのショートボブでクラリネットを持った私とロングヘアーでフルートを持った姉の友梨香が笑顔で写っている。


 私達は一卵性の双子だった。

 友梨香は交通事故で先に逝ってしまったけど……。


「友梨香。私、今日から3年生だよ。友梨香も一緒に3年生になりたかったよね……」


 写真の中の友梨香はニコニコしているだけで、何も答えてくれない。


 でも、どこかで「うん」と言ってくれている気がする。


「友梨奈ー、まだ寝てるの? 早く起きなさーい!」


 ママのよく通る声が私の耳に入ってきた。


「もう起きてるってば!」

「だったら、早く制服に着替えて下りてきなさい! 朝ご飯が冷めてしまうわよ!」

「ハーイ!」


 私は急いでパジャマから制服に着替え、通学鞄に楽譜と筆記用具を入れ、チャックを閉める。

 ベッドのお布団をある程度きれいに直し、カーテンを開ける。

 窓から暖かな太陽の光が入り、小鳥がさえずっている。


「じゃあ、行ってくるね」


 写真立てをそっと伏せ、私は鞄とクラリネットが入った楽器ケースを持ち、パパとママが待つリビングに向かった。



 *



「パパ、ママ、おはよう」


 私がリビングに着くと、パパが新聞を読みながらコーヒーを飲み、ママは温かいスープを注いでいる。

 もう、ママったら、また冗談で「冷めちゃう」って言ったな……。


「おはよう」

「おはよう、友梨奈。今日から3年生だな」

「うん」


 私が返事をした時、パパはコーヒーを1口飲む。


「友梨奈、私立で高校受験がない代わりに日々の勉強を頑張ってほしい。高等部に入ったら違う中学からくる人もいるから、成績を下げないようにしっかり勉強してくれ。パパは応援してるからな」

「あと、友梨香がフルートを吹けなかった分、友梨奈がその分クラリネットを高校卒業まで続けてくれるとママは嬉しいわ」


 パパが新聞を畳むと同時に、ママはお盆に温かいスープを運んでくる。


「パパ、ママ、大丈夫だよ。成績はできるだけ落とさないようにするし、クラリネットも高校卒業まで辞めないから!」


 私は両親を前に笑顔で宣言する。

 その時は友梨香がいない分、私が前向きに生きなきゃならないと思ったの。


「いい意気込みだ!」

「そうよ、友梨奈。頑張ってね!」

「うん!」


 私が笑顔で元気に頷く。


「さて、冷めないうちに朝ご飯をいただこうか」

「いただきましょう」

「そうだね」

「「いただきます」」


 パパに促され、私達は朝ご飯を食べ始めた。


 ママが作ってくれた温かくて美味しいご飯。

 友梨香が生きていた頃は家族揃って食べることが当たり前だった。

 それが1人いなくなっただけなのにこんなに違うなんて思ってもいなかった。



 *



 私は朝ご飯を食べ終えて、歯磨きをしたり、寝癖を直したりと身支度を整えていく。


「行ってきまーす!」

「行ってらっしゃい、友梨奈」


 私が玄関から出ると、パパが手を振って見送ってくれた。


「友梨奈ー、お弁当とクラリネット、忘れてるわよ!」


 ママがお弁当とクラリネットを私のところまで走って持ってきてくれた。


「あっ、忘れてた! ママ、ありがとう!」


 私はママからそれらを受け取ると、お弁当を通学鞄に入れ、クラリネットが入った楽器ケースを右手に持った。


「じゃあ、今度こそ! 行ってきます!」

「行ってらっしゃい!」


 こうして、私の朝の生活が慌ただしく終わった。


 クラス替えの結果が気になるから、早く学校に着くといいな。

2015/11/25 本投稿

2015/12/11 改稿

2016/01/31 改稿

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

その他の作品はこちらから(シリーズ一覧に飛びます。)

cont_access.php?citi_cont_id=790045725&size=200
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ