#18
うーん……。
私はペンを持ったまま固まっている。
私が今現在、望むものってなんだろう。
さっき、ジャスパー先生が「僕があなたの要望に添った人物にしますので」と言われたからなぁ……。
もし、男の子になりたいと書いたら男の子になれるかもしれないのである。
せっかく「やり直し」という選択肢を選んだのだから、女の子でやり直すけどね!
私は彼から受け取った紙をざっと見る。
そこには、容姿、性格、住みたいところなどといろいろと書くところがあった。
えっと……まずは容姿。
私は今の身長は150cmだから、身長はそのままにしたい。
友梨香みたいに髪は長くて、今もクリクリとした二重の目は外せない。
とにかく清楚な女の子みたいな外見になりたい。
次に性格かぁ……。
それ1番悩むところだなぁ……。
そうだ!
見た目とは裏腹に自分の意見をはっきり言えるようになりたいな……。
住みたいところは私が家である木野家かな。
親戚の女の子という設定にしてほしいな。
職業は学生で中学3年生。
通う学校はもちろん、私立花咲大学付属中等学校!
転校前の学校?
そんなのまで設定できるの?
だったら……私立白川大学付属中学校かなぁ。
確かそこの中学校の制服もブレザーで凄く可愛いんだよ。
*
他にも項目をすべて埋めて、最後の項目は――。
「今回の目的はなんですか?」という質問が最後の項目だった。
今回の目的?
ジャスパー先生、なんという質問をしているの?
私は一瞬、笑ってしまったが、よくぞ訊いてくれたと思う。
今回の目的は「クラス全員に対する復讐」ではない。
なぜ、私は「特に目立ったことを何もした覚えがないのに、私がいじめられた原因」が知りたい。
私以外の他の人物となって、客観的に――。
*
大体お昼を回ったくらいにジャスパー先生が病室に駆けつけた。
「書けましたか?」
「ハイ」
私は書いた紙とペンを彼に手渡す。
「ありがとうございます。ざっくり拝見させていただきますね?」
「お願いします」
彼は私が書いた紙をざっくりではなく、じっくりと見ている。
「なるほど。では、明日が手術ですね。ゆっくり休んで明日の手術に備えましょう」
「ハイ!」
ジャスパー先生が病室から出たあと、私は少し後悔したことがある。
それは最後の項目である「今回の目的は何か」という質問に「過去の自分を客観的に見る」という言葉を書くことを忘れてしまったから。
なんて、私はおっちょこちょいなんだと思いながら、サイドテーブルを動かし、身体を横にした。
*
同じ頃、彼は診察室らしき場所で私が書いた紙を再度見ている。
「友梨奈さん、あなたは面白いですね……」
彼は冷笑を浮かべた。
2016/04/02 本投稿