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#14

 私のクラスの女子グループがトイレから出て行ったあと、凪が「何? あの子達」とボソッと言った時、私はくしゃみをする。


「大丈夫? 友梨奈、そのままだと風邪引いちゃうよ?」

「そうだよ。体操着は持ってる?」

「うん」

「一応、念のために先生に相談した方がいいんじゃないの? ハンカチ、濡れてるかもしれないから、ボクのハンカチを貸してあげる」


 早紀は私にハンカチを貸してくれた。


「ありがとう。そう思ってるけど……。今日、早川先生は出張だからね……」


 私は彼女からハンカチを受け取ると、頭についた水滴を拭き取る。


「今日じゃなくても明日、言えばいいじゃん?」

「そうだね。凪と早紀、ありがとう」


 私は早紀にハンカチを返そうとした。


「友梨奈ちゃん、ハンカチはあとで返していいからね」

「ごめんね。お言葉に甘えて、借りるね」


 私は彼女のハンカチをきれいに畳み、左ポケットに入れ、トイレから出た。



 *



 私が彼女らと別れたあと、聡が理科の教科書とノート、筆記用具を持って歩いていた。

 実は私、彼に言いたいことがあるため、彼は1人で歩いているので、都合がいい。


「友梨奈?」

「聡」


 聡はずぶ濡れになった私を見て、


「髪や制服が濡れてるよ?」


と彼は私に問いかける。


「…………」


 私は黙って下を向き、俯いていた。


「どうした?」

「……同じクラスの女子にやられた……」


 彼は再度問いかけてきたので、私は素直に答える。


「えっ!?」

「だから、同じクラスの女子にバケツの水をかけられたの!」


 聡は素っ頓狂な声を出したため、私は少しイライラしていた。

 本当ならば、普通に言いたかったのに……。


「……本当か……?」

「……うん……」

「風邪、引かないようにしないとな?」

「うん。一応、体操着があるから、それに着替えるよ」

「そうか」


 一旦、話は途切れた。

 伝えたいことがあるから、今がチャンスだ!


「あ、あのね……。わ、私は聡と別れたい……」


 私は勇気を振り絞って彼にこう告げた。

 彼は「なんで?」と言い、首を傾げている。


「私がこの状況なのを知ってるでしょ!? ずっと、私達がつき合ってたら、聡までいじめられちゃうかもしれないんだよ!?」


 私が勢いに乗ってこう言うと、周りからの冷たい視線とくすくす笑っている人が視界に入ってきた。


「荒川や白鳥は?」

「裏切られた。最悪の場合、凪と早紀も――」

「最悪すぎるだろ……」

「私からはそれだけだから。返事はメールを送って。さようなら」


 私は彼に向かって冷たい態度で接してしまった。

 穏やかな別れ方ではないけど、今の状況を考えたらそれしかなかったのだ。


 その日は丸1日、体操着で周りの目を気にしながら過ごした。



 *



 次の日。

 部活の朝練を終え、私達は楽器倉庫で楽器を片付けていた時、


「凪、早紀、ちょっといいかな?」


と凪と早紀が柚葉に呼ばれた。


「んー?」

「柚葉ちゃん、どうしたの?」


 彼女らはそれぞれの反応を示す。


「楽器を片付けたら、音楽室にきて」

「分かった」

「了解」


 柚葉……。

 もしかして、あなたは早紀や凪も私から奪う気ですか?


 あなたは知ってるでしょ?

 私は彼女らがいなくなったら1人ぼっちなんだよ?


 凪、早紀……。

 柚葉はこれからどんな話をするか分からないけど、私のところから離れないで――。


 お願い、お願いだから――。

2016/03/05 本投稿

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