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#12

 私のカンニング疑惑はあっという間に学年中に広まった。


 私はテスト中にカンニングなんてしていないし、自分の実力だけで解いたのに……。


 徐々に周りの目が険しくなり、ひそひそ話をしながら、私を避けるようにそれぞれの教室に戻って行く。


 やはり、周りはその噂を鵜呑みにされたようだ。


 私はあまりにも周りの厳しい視線を向けられて怖くなり、少し俯いていた。


 凪や早紀、柚葉、白鳥さん。

 そして、聡。

 彼女らは絶対に私をおいてみんなと一緒にそそくさと教室に戻るだろうと思っていた。


「友梨奈ちゃん」

「友梨奈」

「木野さん」


 早紀と柚葉、白鳥さんが私に話しかける。

 私が視線を上げると彼女らは教室に戻らずに私のところにいた。


「僕は友梨奈がカンニングしてないと信じてるよ」

「ボクも」

「あたしも」

「わたし達は友梨奈の味方だからね」

「だから、なんでもあたしたちに話してもいいんだからね?」


 聡、早紀、凪、柚葉、白鳥さんの順番で彼らは私に言ってくれた。

 その時、チャイムが鳴り始める――。


「チャイムが鳴ったから教室に戻らないとね」

「そうだね」

「じゃあ、荒川と白鳥は友梨奈をよろしくな。そこは同じクラスである君達しかできないことだから」

「うん」

「分かった。木野さん、教室に戻ろう?」

「……うん……」


 私は周りの冷たい視線を浴びながら、柚葉と白鳥さんと一緒に教室に戻った。



 *



 私達3人が教室に戻ってきた瞬間――。


「うわぁ!?」


 私が教室のドアを開くとそこから黒板消しがボフッと私の頭に降ってきた。

 黒板消しについたチョークの粉で咳き込む。

 私の髪の毛は真っ白になり、紺色のブレザーも白くなっていた。


「あっ……髪と制服が真っ白になっちゃった……」

「友梨奈、大丈夫?」

「もう誰だし……」


 私と柚葉が制服や頭についた白い粉を落とし、白鳥さんが黒板消しを拾い、黒板に戻す。


 私はふと、教室を見る。

 私を見て大爆笑する人がいれば、じと目で見てくる人、一瞬だけちらっと見て視線を逸らす人……。


 クラスメイトは一切、心配している素振りをしていなかった。


 自分には関係ない。


 自分はそのようなことはしてない。


 自分はここまでの経緯は知っているが、あえて知らないふりをしておこう。


 そういった空気が教室に流れていた。


「あっ、カンニング女が教室に戻ってきたぜ!」

「本当だ!」

「木野 友梨奈さーん、カンニングはよくないよー!」

「カンニングは最低な行為だぞー」


 クラスの主犯格である男子とその取り巻きが私に向かって言い放つ。


「私はカンニングなんかしてないもん!」


 私は思わず、彼らに言い返していた。


「してない? どうやったら、あんな高得点をとれるんだよ!?」

「それは私の実力だもん」

「マジかよ? 実力でも限界があるんだぜ?」

「私の実力とあなたの実力を一緒にしないで! 私はカンニングしてないから!」


 私が男子と言い争っている間、柚葉と白鳥さんはクラスの女子に何か伝えているようだ。


「遅くなってしまってすまないな! 授業、始めるぞー。それにしても、お前らは他のクラスよりうるさいぞー! 全員、席に着けー!」


 英語の吉原先生が勢いよく教室に駆けつけた。

 彼は頭と制服がチョークの粉によって白くなっている私を見て、


「木野、髪と制服が白くなってるじゃないか? 何かあったのか?」


と訝しげに問いかける。


「……なんでもありません……」


 私は俯きながら答えた。


「そうか。何かあったら、早川先生に相談しろよ」

「ハイ」


 私が自席に着こうとした時に通路に出ていた誰かの脚に引っかかり躓く。

 なぜか知らないが、みんなに笑われた。


「木野さん、ごめんねー。うち、脚が長くって」

「ちゃんと下を見て歩こうねー」

 それはわざとだったらしい。

 クラスの女子がわざと私に躓かせようと仕掛けてきたのだ。


「ごめん。気をつけるね」


 私は彼女に謝り、再び自席へ向かって歩き出す。

 彼女らは私を見てクスクスと笑っていた。


 一方の柚葉と白鳥さんは心配そうに見ているようだが、彼女らは何を考えているんだろうか。


 人が考えていることは分からないから――。


 誰か教えてよ。


 どうして、私だけ標的にするの?


 私をいじめてそんなに楽しいの?


 私は考えているだけで、心が折れそうだよ。


 このような行為をされるのはもうこりごりだよ。


 生きることが怖い。


 その時、今の私にとっては生きることは罪や罰だと感じ始めていた――。

2016/02/20 本投稿

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