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#11

 あれから少しの間、消しゴムを投げつける以外、特に大きな出来事は何も起きなかった。


 3年生に進級し、はじめての中間テストが終わり、いつも通りの生活が再開されたある日のこと……。


「ねぇ、木野さんってさぁ……」

「えっ!? 本当!?」

「本当」

「マジで!?」


 ここ最近、クラスの何人かの女子が私のことで噂している。


 なんだろう。

 私は何も噂になるようなことをした覚えは全く持って心当たりがない。


「はぁ……」


 私は溜め息ついた。


「友梨奈、最近、溜め息が多いよ?」


 柚葉が私に近づきながら問いかける。


「んー……なんか、陰口を叩かれてるような気がして……」


 なんだか日を追うごとに溜め息が多くなっていることは事実だ。


「それで、か」

「うん」


 その噂話が気になる。

 柚葉はそのことを知ってるのだろうか?


「ねぇ、柚葉?」

「ん?」

「あっ、早紀が教室にきてる」

「本当だ! 珍しいね」


 私はそのことに気になり、柚葉に訊いてみようと話を切り出そうとしたが、早紀が教室の前に姿を現していることに気づいた。


「あっ、まひろちゃん。友梨奈ちゃんと柚葉ちゃんは教室にいる?」

「いるよ。木野さんと荒川さん、お客さんだよ!」


 教室のドアのところにいる白鳥さんが私達の方を振り向き、手招きをする。


「ハーイ」

「今行く!」


 私達が彼女に呼ばれ、そこへ向かった。


「あたしも一緒にいた方がいい?」


 白鳥さんは心配そうに早紀に訊く。


「うん。できればね」

「分かった」

「早紀、ごめんね」

「遅くなっちゃった」

「いいよ。今日の朝、今回の中間テストの順位が廊下に貼り出されたみたいから、みんなで見に行こうと思ってね」


 もうそんな時期か……。

 私達の学校では定期テストの上位者50名が廊下の掲示板に貼り出される。

 同じ点数の場合はあいうえお順で早い人が上の順位となる。


「早紀、みんなで見に行こうって言ったけど、凪や聡はどこへ行ったの?」

「多分、掲示板にいるはずだけど……」


 早紀は聡と凪の姿を探すが、彼らの姿は見当たらない。

 それはそうだ。

 1学年200名以上いるため、一斉に見に行くと、全く持って掲示板は見えなくなってしまう。

 そのため、時間をずらして見に行く人も少なくない。


 早紀はもちろん、私達3人も彼らを少し探してみる。

 聡は掲示板から離れたところにいた。


「秋桜寺くん、掲示板は見ることができた?」

「いや、実は凄く混んでてまだ見てないよ」

「凪は?」

「新井はトイレに行ってくるって」


 凪はトイレか……。

 早く戻ってこないかな……。



 *



 あれから数分経った後、凪が私達のところに駆けつけた。


「ごめんね! トイレを我慢してて……」

「トイレは生理的欲求だから、いいんじゃない?」

「あたしを差し置いてみんなで見に行っちゃった?」

「いや、まだご覧の通りだよ。凄く混んでるし……」


 凪と柚葉、早紀が話している時、私はその場所にいることが怖くなった。


「木野は今回の中間テストでカンニングしたから成績がいいんだよ」

「えっ、マジで!?」

「カンニングかよ」

「ヤバくないか?」

「だから、毎回成績がいいのか」


 例のクラスの主犯格とその取り巻きの男子がそう言うと、周りは蒼然としていた。


「木野さんがカンニング?」

「ありえない……」

「嘘だよな……」


 周りがざわめき始めた。

 彼らのせいで私は今回の中間テストの順位を見なかった。


「友梨奈ちゃんは実力で頑張ったんだよね?」

「友梨奈はカンニングしてないよね?」

「友梨奈はカンニングなんてしないもんね?」

「友梨奈は頑張ったんだよな?」

「あたしは木野さんの近くだったから、カンニングしてないと信じるよ?」


 早紀、凪、柚葉、聡、白鳥さん……。

 みんな、私に対して疑問文で訊いてくる。


「……してない……してないもん」


 私はカンニングなんてしてない。

 テストはカンニングペーパーなんか用意していないし、すべての問題を自力で解いた。


 カンニングは全く持って嘘だ。

 これは事実だ。


 みんなに信じてほしい。


 それなのに、周りはその噂を鵜呑みにする。


 疑われるのは私だ。


 おそらく、私を信じてくれないだろう。


 誰1人として――。

2016/02/13 本投稿

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