#10
私は薄暗い屋上に向かう踊り場に突っ立っていた。
「あれ?」
私はつい先ほどまではジャスパー先生のところにおり、出たところまでは覚えているが、どのようにしてここに戻ってきたかは分からない。
私は無事に学校に戻ってこられたことが嬉しく感じられた。
その時、ドタドタと階段を駆け上る音が聞こえ、徐々に近づいてくる。
「友梨奈!」
「木野さん!」
柚葉と白鳥さんの声が私の耳に入ってくる。
私が振り向くと、彼女らはもちろんのこと、凪と早紀、そして、聡の姿があった。
「友梨奈ー、早紀と柚葉から訊いたよー」
「僕は白鳥から訊いた。白鳥、ありがとな」
「う、うん……」
聡が白鳥さんの方を向くと、彼女が照れてしまったのか俯いていた。
「木野さん、ごめんね。あたし……」
白鳥さんは一瞬だけ私の方を見たが、すぐに俯いてしまった。
「いいよ。私がみんなに言わなかったことが悪いんだから、こちらこそごめんね」
私は彼女らに謝る。
「そうだよ! 友梨奈は言いたいことがストレートに言わないから駄目なんだよ」
「確かに、友梨奈は常に周りを気にしすぎて、自然といい子を演じちゃうこともあるしな」
凪といい聡といい、早紀も柚葉も私の性格が分かっている。
「そうだね」
私は少し呆れながら相槌を打つ。
「あたしは木野さんと同じクラスになったの、はじめてだし、意外と繊細なとこがあるしね」
「白鳥さんも意外とクラスメイト思いなところあるしね」
「そ、それ、ここで言っちゃう!?」
「うん。言っちゃう。ここに私達以外に誰もいないし」
「もう、木野さんったら!」
私と白鳥さんは顔を赤くして笑いあった。
「友梨奈と白鳥、顔が赤いぞ!」
「本当だ」
聡と早紀がそんな私達を微笑ましく見ている。
「友梨奈。これからはあたし達を頼ってもいいんだよ?」
凪が私の目をしっかりよく見て言う。
「友梨奈ちゃんが困った時はボク達が相談にのるし」
「あたしも木野さんとのつき合いは浅いけど。まぁ、困った時はお互い様だよね?」
「わたしも」
「僕も」
それに続けて、早紀、白鳥さん、柚葉。
そして、聡まで――。
私は彼女らの顔を見回してこう言った。
「……ありがとう……」
私は笑顔で応える。
その時、ふと思ったことがある。
私は友達に恵まれているのかなと――。
チャイムが校内に鳴り響く。
「あっ、チャイムが鳴っちゃったね」
「もう授業が始まるね」
「教室に戻ろうか」
「授業は嫌だけどね」
「だよねー」
私達は足早にそれぞれの教室に戻る。
私はこの先、新たな闇の中に入るとは知る由もなかった……。
2016/02/06 本投稿