悪の帝王サターン、病院に行く
こんにちは。
私だ、悪の帝王サターンだ…
なに?今日は静かだなだと?
HAHAHAHA、勘弁してくれたまえ画面前の諸君
ーーーークソが…!!
空気で察しろ愚か者どもが!!
私は今、重大な危機に直面しているのだ!
なに?全然、分からないから説明しろだと!?
ふ☆ざ☆け☆る☆な!!
危機に直面している悪の帝王になんたる鬼の所業!
あぁ、良いだろうゲスを極めし鬼畜者め!受けたってくれるわ!!
ーーー私は今…!!!
「胃がキリキリして苦しんでいるのだ…!!」
ぐほっ!声が胃に響く~!!
おのれ、人間め!謀ったな!?(違います)
「ぐふっ…!だ、だが悪の帝王がこ、これしきの胃の痛みで…!!」
あっ、ダメだ。痛すぎる。
何なのだ、何だと言うのだ。この痛みは!?
う、動かん…体が全く動かんぞ!!
ーーーピーン、ポーン…
誰だ、インターホーンを鳴らすのは!?
私は今、死にそうなのだ!ほっといてくれ!(泣)
「おじちゃーん」
なんだ、隣の少女Aか…
「少女Aだと!?ぐぉぉぉ!!!」
叫んだら胃がぁぁ!!
「おじちゃん、すごい声がしたけど大丈夫?」
「何をナチュナルに部屋に入ってきているのだ、少女A!!」
そして身の心配をするな少女エーーー!!(吐血)
ーーー説明しよう!
悪の帝王サターンは悪の根元(笑)のため、優しい言葉や慈しむ心で接すると心身に甚大なダメージを受け、その痛みはタンスの角に足の薬指と小指を強打した挙げ句、そのままタンスに押し潰されてしまった痛さに匹敵し、最終的に吐血するのだ!!
「ぐふっ…!もうダメだ…サターンの野望が潰えて消えるのだ…」
「始まってもいないわ」
グハッ!棒読みで顔の側面にチョップをだとーー!?
あっ、ちょっ、やめろ!!チョップをするな!わかった、わかったからやめて!やめてください!!(切実)
ーーーーこの後、リンゴのタルトを与えたらやめてくれました(泣)
「……で、おじちゃんどうしたの?」
「咀嚼しながら喋るのはやめろ、顔にリンゴが…あぁー!ちょっと布団に食べカスがぁーーー!!」
もうやだこの小娘ぇぇぇぇ!!!
「…逆に考えよう、汚されてもいいやって…」
ストップ犯罪臭!!意味深かっ!!
「止めなさい、年頃の女の子が!!と言うか、なんなのだ今日の貴様は!?」
「ボケかツッコミか…私の存在理由を考えていまして」
聞きたくないわ!そんな悲しい自分探し!!
「ゲホッ…!聞け、少女Aよ。私の体は今、得体の知れぬ事態に陥っているのだ。胃がキリキリして堪らん上にすこぶる体調も悪いのだ、分かるな?」
「分かりません」
分かりなさい、このイカの目少女がっ!!
「とにかく、私は今、静かに休みたいのだ」
「はい」
「部屋に居てていい。だが、静かにしてろ。いいな?」
「はい」
うむ…そこまで頷いてくれるならもう心配ないな。
悪の帝王、一安心!
「では、私は眠る。静かに頼むぞ?」
「分かりましたぁぁぁ!」
ーーードドドドドドドドッ!!
「ギャァァ!!!」
暴れないで下さい、狭い部屋でぇぇぇ!!!
ーーー数分後ーーー
「三回も言うので騒げと言う意味なのかと思いまして」
「黙れ小娘!いい加減にし……人が喋っている時に真顔で跳ねるな!!」
クソッ!!余計に胃がキリキリしてきおったわ!!
このままではますます酷くなる一方ではないか!
「やむを得ん…!!」
「おじちゃん、どこ行くの?」
ーーーどこ?決まっている…
「病院だ…!」
「そんな必死な顔して言わなくても~」
なんでそこだけ早口?
「病院に行く道は知ってるの?」
「む…」
そう言えばこの町に来てしばらく立つが知らないな。
そうだな…大体、一ヶ月頃か、うーむ。実に長い
「病院はここから左に曲がって……」
「ゲボボボッ!!聞いてもいないのに親切に道案内を始めるなぁぁ!!!」
胸が!胸が裂ける!!
早く、早く病院への遠回り道をーーー!!!
ーーーーこの後、悪の帝王サターンは少女Aに病院への遠回り道を教えてもらい、襲いかかり続ける胃の痛みとの必死の攻防の末病院に辿り着いたのだが…ものの見事に近道でした(笑)
「(笑)じゃないわぁ!ナレーション!!」
目に見えない優しさで我が命を削りに削りおってからにあの小娘め!!
帰ったらじわじわとなぶり説教してくれる!!
ーーーーー病院内
ふむ、人間界の病院とは存外、静かなものなのだな…
私の元いた世界の病院は混沌がひしめき合い、闇に覆われているのにこの差はなんなのだろうか…
誰だ!今、そんなの病院じゃねぇよって思った人間は!!?
ーーーポーン、佐田さまー
「ほぅ…」
なるほど、こうやって名前を呼ばれた者から病室に行き、検査してもらうのか…
人間界の病院は親せ…グババババ!!
しまった、暖かみを感じてしまったぁぁ!!
「ゲフッ…!(病院に来たのは良いが痛みが増している気がするな…)」
ーーーポーン、ジャンボスレイサー西口さまー。
なんだ、その名前はーー!!?
ジャンボスレイサー西口!?どこ産の魔族だ!?
と言うか、ジャンボスレイサーに全部、持ってかれてる上に西口が浮きすぎて霞んでいるではないか!
てか、あれか!ジャンボスレイサー西口!覆面しているではないか!
初期の勇者の父親か!!違和感しか感じ取れんぞ!!
何故、誰もツッコミを入れんのだ?!
「…来る病院を間違えたか?」
いやいや、落ち着け悪の帝王サターンよ。
これはあれだ…そう、少女Aの優しさと胃の痛みから起きた幻覚、悪い夢だ。
逆に考えろ、私は悪の帝王サターンさまだぞ…っと。
ーーーーポーン、ジャイアント頭領さまー。
もはや何者なんだよ、ジャイアント頭領!?
悪の組織的なボスではないか、町の電力とか奪いそうな名前じゃないか!!
私の名前サターンだよ?サターンなんだよ?
なんで人間界にそんな名前があるの?こんなの絶対可笑しいよ!
って、あれか!?あれがジャイアント頭領!!?
完全に名前負けしているじゃないか!!メッチャ小柄じゃん、滅茶苦茶小柄じゃん!!!
ーーーーポーン、悪の帝王サターンさまー。
「………」
普通じゃねぇかぁぁぁ私ぃぃぃ!!!
インパクト負けしまくっているではないかぁぁぁ!
ジャンボスレイサー西口とジャイアント頭領に全部、持っていかれたぁぁぁ!!
返せ!!私のインパクト返してよぉぉぉ!!!
「メッチャ普通じゃん(笑)」
黙れジジィィィ!!確認してから呟いてんじゃねぇぇぇぇ!!
メッチャ聞こえてんだよ!!メッッッチャ聞こえてんだよ!!
なにさりげなく(笑)とか付けやがってこのジジィめ!
「…胃の痛みが増してきたわ」
早く帰って、ゆっくり休みたい…(泣)
ーーーそして、帰宅後…
「あっ、おじちゃんお帰りなさい」
「…まだいたのか。少女A」
「おじちゃん、検査はどうだったの?」
「ストレスで胃に穴が開いていたらしい」
「ストレス?」
「今さらなのだがな。私は悪の帝王故に優しさや慈しまされると尋常ではないストレスを感じる体質なのだ」
まあ、私は悪の帝王だから胃潰瘍くらい数日もあれば治るのだがな…
「優しさ…」
「うむ、貴様の優しさが胃潰瘍の原因と言うわけだな」
「そんな…」
「別に責める訳ではないが…貴様の優しさは私には毒のようなモノだ。故にしばらくは優しくされたくないのだよ」
でなければ、日常生活もままならんからな。
それほど、私の体には負担がかかるのだよ。
「と言うか…貴様のそのばか正直な優しき心は一体何なのだ?正直、親の顔が見てみたい………」
ーーーーバチン…!!
「………えっ?」
ーーー最初は何が起きたのか全く理解できなかった…
しかし、頬から伝わる痛みですぐに平手打ちされたのに気がついた私だったのだが…自分でも呆れる程、間の抜けた声を出して私は目の前の…
「両親の事を言わないで下さい…!!」
ーーーーいつもの生気を感じさせない瞳いっぱいに涙を溜め、初めて見せる怒りの感情をさらけ出す少女Aをただ、見つめていた…
「……帰ります」
「お、おい!少女A…!」
引き止めようと伸ばした手は空を掴むばかりで少女Aには届かず、少女Aは部屋を去っていったのだった…
ーーーこの時の私は…まだ少女Aの涙の理由を知るよしもなかった。




