悪の帝王サターン、焼肉屋へ行く ミカエル編2
ようやく投稿です(;-ω-)
待ってくれた方、長らくお待たせいたしました(汗)
《ミカエル》side
「ん~~、サターンったら、一体どこに行ったのかな~?」
町の明かりに照らされながら夜空を飛び回って、既に数十分…一向にサターンの姿が見当たらない。
目立つ格好はしているのに見当たらないのはやはり、サターンのキャラが薄いのが悪いのかもしれない…
-------バカめ!!
そんなことを考えていると、丁度真下の方から声が聞こえてきた。
何事かと視線を向けるとどことも言えぬ方向で一人喋っているサターンがいた。
ほんっっとうになにやってんだかあの魔王は…
「お~い。サタ~ン」
ゆっくりと降下しながらサターンの隣に降り立つとまたも気づいていないのか、サターンはキメ顔で言った。
「紳士なら何も言わずに黙っていているものだ!」
「誰に言ってるの?サターン」
「画面の前の皆様だ、ってミカエルぅぅぅ!!」
「うわ!急になによ?!」
気づくなり、オーバーリアクションで驚くサターンに逆に驚いてしまうミカエル。
この悪魔は毎回、こんな反応をしなければ会話ができないのだろうか…
「留守番の筈の貴様がなぜここいるのだ!?」
「なんか面白そうなので来ましたー」
ベタな質問に素直に答えるとこれまたベタに嘆くサターン。
そして、コロコロと忙しなく態度を変えながら危機迫った顔で質問してきた。
「鍵は…ちゃんと閉めてきたのか…!?」
「……子どもじゃないんだから当たり前でしょー?ホラ、この通り~」
ヒラヒラと家の鍵を見せびらかすとサターンは飽きれとも、安堵とも取れるため息を吐いた。
「夕飯に招待してやるついでにしっかりと少女Aに謝ってもらうぞ。ミカエル」
「は~い。任せなさ~い任せなさ~い」
…サターンは一体、なんの心配をしているのやら。
気楽に答えたあたしは迷うことなく、目が痛い程色鮮やかに輝く目の前の店へと入っていった。
ーーーーーーーーーー
「いらしゃいアルね!」
「う、うむ…先に入って行った娘の連れなのだが…」
「あの髪止めの子アルね?奥の席案内したアルよ!」
入って早々、チャイナ服を着た元気な女店員が出てきた。
ややしゃべり方が早口な上に語調が上がり下がりな店員に言われ、店の奥に進んでいく。
「悪趣味な店だな」
サターンがそう呟いたのを聞いて、辺りを見る。
サターンの言う通り、確かに、壁や天井にに吊るされた妙にリアルな牛や狭い鳥かごに入れられた妙にリアルな鶏、香ばしい肉の焼ける匂いの中に混じる血生臭いに加え、牛と鶏の鳴き声まで流すと言う何とも言えない内装の店ではあるが…
「魔界の王だった奴が言うセリフ?」
「魔界には魔界のモラルがあるわ!それにこんな牛やら鶏やらよく分からんオブジェなど魔界にはないぞ。失礼な奴だな!」
「あはは~、ごめんごめん。ん~…それにしても」
この内装のセンスってたしか、中国とか言う土地によくいるゾンビはこんな内装を好んでいたはず
と言うより、もしさっきの店員がそうだとしたら、人に害を成すアンデット族をこのまま見過ごすのわけにも……
「…まあ、いいか!この部屋だよね?サターン」
「他に部屋が無かったから多分そうだ」
日本で焼肉店をしてるくらいなら別に大丈夫でしょ!
気配を感知した感じ一人で切り盛りしてるみたいだし、なによりお腹すいてるだし?ですし?!
たとえ、毒が入ってたとしてもあたしとサターンには効きませーん!!
-----スパーン!
「す、すまん!少女A!驚かせ…て…?」
「ロース、肩ロース、ミスジ、肩サンカク、リブロース、バラ肉、シンタマ、シャトーブリアン、ザブトン、とうがらし、シンシン、カルビ、カイノミ、サーロイン、ランプ、イチボ、トモサンカク、シラミ、ヒレ…」
「えっ、なに?呪文?」
あれ、部屋間違えた?
「ハラミ、サガリ、タン、ミノ、ハチノス、センマイ、ギアラ、テッチャン、マルチョウ、レバー、ハツ、シビレ、リードヴォー…」
って、そんなわけないよねぇ~…
一人真剣な表情でブツブツと呪言のように肉の部位をまぁ…
昔見た魔女狩り並みに怖いわ。大天使であるあたしでもこの光景は怖い。ものすごく怖い。
この子の為に怒ったって言うならサターンは不憫な悪魔だと思うわ…
本当にこの子人間なの?※人間です
「……ふぅ、あっ…おじちゃん…」
ようやく気づいた彼女はサターンの顔を見るなりにへっと笑ってきた。
…ふんぬっ!!!!ふんふんふーーーーん!!!!
このやろこのやろこの悪魔がっ!!!!
色気づいてんじゃぁない!!
「…?おじちゃんの知り合い…?」
少女Aと呼ばれる彼女があたしに気づいた。
これは良いチャンスかも…
「はいはーい!初めまして~!あたし、大天使ミカエルで~す!サターンとは小さいときからの幼馴染みだよ~」
ついでに言えば、あんたを一回死なせてからもう一回甦らせたのもあたしだよ~なぁんて口にすればもっかい、サターンに天界までぶっ飛ばされ兼ねないから言わないけど~…
「……大天使と悪の帝王が仲良く出来る世界があるんですね…」
……………そうね~。
「まあなんと言うかさ。色々迷惑かけてごめんね。これからヨロシク~!」
「…???こちらこそ…よろしくお願いします…?」
……ん?そこのあなた。今、嘘臭さ~とか、軽すぎだろ~とか思ったでしょ。
これでも反省はしてるわよ。ホントよ?えぇ、ホントホント。
神に誓って言うわ~これっぽっちもあたしは信仰してないけど。
「……さて、まずは何から注文していこうか?」
「まず最初はタン塩、次にカルビ、カイノミ、ロース、ミスジと行き、そのままホルモンに入りミノ、ハチノスと……ブツブツ…ブツブツ……(※早口でお送りしております)」
えぇっと…肉は任せて、まずは~……酒から行くか。
「ご注文決まったアルか?決またなら今すぐ牛切るアルよ」
おぉ早いわねぇ~、まだ何にも呼び鈴鳴らしてないけど~
「うちは注文入てからお肉出すアル。その方が新鮮お肉美味しいアルね!」
現場直送システムなんだこの店。
道理で獣臭いと思った~。まあ元々食べるのは死肉味だから何の支障も出ないし別に良いけどね~。
いや、食欲は失うわよ?そんな目で見ないでくれる?
「うちの牛は活きが良いアルよ!」
「うはぁぁ…とんだクレイジーな店ね…」
やっぱりこのゾンビ店員滅するべきかな?
でもなぁ、肉食いたいしなぁ…!
「だからこそ…命の有り難みをより一層感じさせてくれます…」
おっ、良いこと言うわね。この子…!
サターンがてこずるのも無理ないわ。
サターンが昔苦手って言ってた“ジャンヌダルク”も生前はこんな感じだったな~、今は天界で生前のリミッター外してはしゃいでるから面影ゼロだけどね。
「牛からいくアルか?それとも鶏からアルか?」
「ささみのポン酢あえを三つください」
「あっ、ついでに生ビール、ジョッキでー」
「はいアルー。少々お待ちくださいアルねー!」
出来る子だわ~!!なにこの子!?注文品の選び方が神じゃない!
あぁ~!ダメだわ~~!!ダメダメだわ~~~!!!!
サターンが勝てる訳がないわ~~~!!!!!!天使だもん!神通り越して女神だもん!!
諦めた顔した鶏が連れていかれた様に涙目の魔王を置いて、大天使ミカエルの中で少女Aのランクは急上昇していくのであった…
「ささみのポン酢あえ三つと生ビール、お待ちどうさまアルー!」
「うはぁー!キレイな彩り!!これがさっきの鶏だなんて到底、思えないわね~!」
「さっきの鶏はここのジョークですよ…」
えっ、そうなの?ゾンビ店員だしそれくらいあるかなぁ?って思ってたのに…サターンはガッツリ騙されたみたいだけど…
「普通信じる方がおかしいアルね」
あぁ…これはサターン。グーの音も出ないわね~。
「では…ここから……ここまでのお肉六人前ずつ…」
一人三人前計算っ!?
「あたし、そんなに食べられるかな~?」
「大丈夫…です。わたしが…残さず平らげますから…」
「おぉ~!えーちゃん、逞しい~!!じゃあ、じゃんじゃんたのもー!!」
「おー…」
サターンを放っておいて、宴の合図の乾杯。
しゅわしゅわに泡立つ生ビールが最高に美味しそうに輝いている。
天界にある時代遅れの発泡酒とは違う。神々しいとも言えよう!!
「いっただきま~す!!」
グビグビグビ……
「プッハ……カァァァ!!!!」
スッキリとした喉ごしに無駄のない絶妙な苦味!!
飲む度に感動すら起きる深い味わい、飲み干したい気持ちをグッと堪えてした息継ぎの瞬間、体全体に広がる爽快感は耐え難い快感が……五臓六腑に染み渡るっ!!!!
さて、お酒の肴であるささみのポン酢はどうかな?
……くぅぅぅ!!これまたお口が至福祭じゃぁぁ!!!!
ただの人間の少女、そう思ってたけどこんな旨いビールと肴がある店を知っているだなんて……!!
ただ者じゃないわね、少女A!!
「タン、ハラミ、カルビ。お待ちどうさまアルよー!!」
きたきたキターーーーーー!!
食事会の幕開けよーーー!!
----二時間後----
「でさぁ~!やんなっちゃうわけなのよ~!!死者の迎えが下級天使の仕事なのに自由奔放でほんっっっっとぅにたちが悪いありゃしないんだから~!!!」
「そう…なんですか。それは……大変ですね…」
「えーちゃんだけだよ~!!あたしの苦労を分かってくれるのは~!!」
やってらんないっすよー!!とビールジョッキ片手にミカエルは少女Aが頼んだ【オラに鉄分分けてくれ!気合いのカルビレバー玉!!】と、某アニメの各話タイトルのような山の如く肉を食べながら永遠と同じセリフを少女Aに愚痴る。
ふと、ミカエルが視線をサターンに向けると何故かサターンは吐血して悶絶していた。
酔っていてもサターンが吐血した理由をすぐに理解し、ミカエルは呆れたようにげふっ、と息を吐く。
「なに勝手に清らかな心を感じているのよ~。サターン?」
一応、心配の声をかけては見たがサターンの性格も合い重なって怨めしそうな目で見てきた。
まあ、悪魔で元魔王だから心配されるのは癪か…
「お客さん血出てるアルよ?摂取するアルか?」
「うぉぉい!!床を拭いていた雑巾で拭こうとするな!!見ていたんだぞ!」
「これ死体拭くやつアルよ。キレイキレイアルよ」
店主は肉を削がんとばかりの勢いで生臭い雑巾でサターンの顔面を拭き始める。
さすがに止めてあげないと可哀想だから助けてあげるか…
ゆっくりと腰を上げ、ミカエルが止めようとした…
-------その時であった。
ポロ…ゴトリ…(※何かが取れて床に落ちた音)
「ファッ?」
「ろっ?」
「おっ?」
落ちた音に続くミカエルとサターンと店主の間の抜けた声がほぼ同時に発せられた。
落ちた何かは私のまさに目の前にある。目先にあまり、私の脳はそれが何なのか言葉を忘れ、理解するのに遅れたが…離れた場所で目撃していたミカエルは意図も簡単に口を開いた。
「腕、取れたよ」
鼻から吸った酸素を口から吐き出すと二酸化炭素になって出ていくのが当たり前のように、ミカエルは淡白に言ったが…
画面の前の諸君よ!!今、貴様らが思っている以上のスプラッタだからな!!!!
流石の私でもこれは………
-----カサカサ!!(※落ちた腕が動く音)
いぃぃぃぃぃぃやあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
動いてるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ?!!!?!??!!?!
台所に潜むGなる存在の如く、落ちた店主の腕が床を這い蠢き回る。
声にならない悲鳴と共に私は蠢き回る腕から天井の隅へと確実に仕留める間合いと力と作戦を練るために戦略的撤退(逃げたのでは無いぞ!?)をした。
と言うか、何故ミカエルは悲鳴どころか慌てふためかんのだ!?
天井の隅にへばりつきながら私が蠢き回る腕と無反応のミカエルに驚愕していると…腕が落ちて蠢き回っているのを見つめていた店主は億劫そうに頭を掻きながら口を開かせた。
「あぁー…“また落ちてしまた”アルよ」
「あっ、やっぱりあんた、“そう言う種族の人”だったんだ」
「ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!……ってなに?」
そう言う…種族の人????
ミカエルの何でもない一言の言葉に、私は疑問を抱かずにはいられなかった。
----数分後----
「なんだと!?貴様、“アンデッド”なのか!?」
「正確には“キョンシー”アルよ。ほら、札もちやんとあるアルよ」
ぺろり、と中華帽の中から札を見せくれた店主は蠢く腕を捕まえると自身の体に淡々と手慣れた様子で縫い付けていく。
……食欲の失せる映像と音がする。
「最初、見た時はもしかして~って思ったけど、まさか本当にキョンシーだとはね~。こりゃぁびっくりだ~!キッヒヒ!」
「何故それを早く言わんのだお前は…!」
「いや、サターン…あなた、魔王なんだから気づいてなきゃダメでしょ」
「しかしなんだ!?何故キョンシーと言えど魔族である貴様が人間界に?それも人間相手に商売しているのだ?」
「いやぁ~。アンデッド族言えど、昔と違って今の世の中はどこの魔族も不景気で大変アルね。生活苦しいの、全種族共通アル。死んでも辛いの変わりは無いアルよ」
…案外、魔族も大変なんだな。
ふむ…私が魔界の王をしていたときはあまり政治をしていなかったのが原因なのかもしれんな…
あの時は歯向かう者には死を!!みたいな所があったし…何より力で捩じ伏せていたからな。まさか人間界に来て…貧乏暮らしをしていたおかげで気づかされるとはな……
「苦労しているのだな。アンデッド族も……」
「ふん!ふん!!」
「人間襲うよりもよぽど稼げるから今のしごと、嫌いじやないアルからへちやらアルよ!」
「ふん!!!ふん!!!!」
「ははは、そうか。それは頼もしい…ってミカエルさっきから痛い!私の足を親の仇のような顔で踏みつけるでないわ!!」
「言い返す言葉が見つからないからって無視するんじゃないわよ!!そのアホ毛むしるぞこらぁぁ!!」
ギャァァァァァ!!!!アホ毛はやめてぇぇ!!
「はぐはぐ……幸せ…もぐもぐ…」
大事なアホ毛を守るながら逃げ惑う悪の帝王である私を、恐ろしい事に引きちぎろうと怒れる大天使ミカエルが追いかける様子を見ながら、笑うアンデッド族のキョンシー店主。
そんな人外の奇っ怪なやり取りなど気にもせず、幸せそうに食事を続ける人間の女の子、少女A。
愉快痛快で奇々怪々の彼らの宴は夜遅くまで続いたのであった…
長らくお待たせしていたわりには自分で見てもパッとしない出来映えで申し訳ない気持ちになります(´・ω・`;)
もっと上手く書けるようこの先努力し続け、書き直していきたいと思います(^^;