悪の帝王サターン、焼肉屋へ行く
書き貯めていた文章が消えてしまい投稿するのがかなり遅れてしまいました(;´・ω・)
ようやく、投稿再開です_(._.)_
やあ、諸君。久しぶりだな。
早速だが言わせてもらおう。
ミカエルが人間界で暴れてからはや、二ヶ月…
一時は三途の川を渡った少女Aは神も驚く奇跡により、一命を取りとめた。
なに?いきなり言われても忘れただと?
ーーーークソが…!!!
生死をさまよった人間一人の怪我なのだぞ!?
完治するのだって二ヶ月くらいは経つ!!
えっ、それでも残りの四ヶ月はなんだって?
……………そして、今日ようやく少女Aは無事に退院することになったのだった…
「おじちゃん、誰と喋ってるの?」
「むっ、決まっている。画面の前の皆様にだ」
病院前で待っていた私に気安く声をかけてきた少女A。
小柄な見た目とは裏腹に年齢は高校生ほどで、長く艶やかな黒髪。
顔立ちも整っており、名家のお嬢様と言った言葉が似合う…のだが、いかせん。
半開きの目と無感情な表情のせいで何を考えているか分からない上に…
「おじちゃん、お腹すいた…」
「退院前に病院食を平らげたではないか…夕食まで我慢しなさい」
小柄な体のどこに収まっているのか分からないほどの無尽蔵の食欲の持ち主なのだ。
なに?本名はなんだと?
「少女A。今晩は退院祝いも兼ねてご馳走してやろう!」
「え!良いの……!」
表情が読み取れないと言ったな?あれは言い過ぎだ。
食物を与えると僅かだが少女Aは頬を赤らめ、目を輝かせる。
あぁもう、うるさい!本名なら後でいくらでも聞いてやる!!
「本当に良いの……?」
「む?ハハ、遠慮するな!金額など気にせず好きなのをた…………」
「焼肉」
「は?」
「焼肉」
即答。しかも二回も言った。
おまけに声は低く表情は妙に凛々しくなり、その目には活力と獲物を狙う狩人そのものに変わっていた。
「えっ、ちょっ…少女A…?」
「血沸き肉躍る……戦です…」
おこなの?※真剣と書いてマジと読む雰囲気です
「しかし…焼肉か……」
久しく肉は食ってはいないが…金欠の今、余り高い肉は…
「おじちゃん…」
「むっ?」
考え込んでいた私を見上げる少女A。
…私は静かに頷き、サムズアップしてみせる。
「金銭など気にするな!たらふく食べるが良い!!」
「おじちゃん……!!」
少女Aの目がキラキラと光る。
うむ……純真な瞳が痛い…
「おじちゃん、本当にありがとう……!」
「げばぶぅぅぅ!!」
ーーーー改めて説明しよう!!
悪の帝王サターンは悪の根源(笑)なので純真な瞳や穢れなき感謝、慈しみの気持ちを向けると鍋のそこに張りついたそうめんを剥がそうとして爪の間に入ってしまった挙げ句、痛さのあまり飛び跳ね、開けっぱなしになっていた戸棚の角に頭をぶつけた痛みに匹敵し、ストレスで吐血をするのだ!!
「ガフッ……!!相変わらず、長い台詞を噛まずに……流石だな。ナレーション…!」
「…?」
「ふっ…気にするな。少女Aよ」
とにもかくにも、かくして…私たちは焼肉店に行くことになったのだった。
ーーーーーーーーーーーー
「ふ~~~~む……」
あれから……少女Aと別れた私は自宅に帰宅し、日課である一人内職に勤しんでいた。
ーーーそれじゃ、『焼肉店さらし首』に待ち合わせね…
「少女Aめ……縁起の悪い名前の店を指定しよって……」
中華だろうが焼肉だろうがなんだって良いが、とにもかくにも夕飯までにはこの箱いっぱいにある薔薇の造花を全て、仕上げてしまわねば……
「まあ、この悪の帝王の力をもってすれば半日すればあっという間だがな!」
「よくもまあ、そんなくだらないことで悪の帝王だなんて言えるわね」
「くだらないとはなんだ!くだらないとは!!貰えるお金は少なかれど、これも立派な仕事の内だ!!」
「これが仕事ねぇ~…天界の大天使であるあたしには不必要だわ」
不必要とは…全く、最近の大天使は仕事をなんだと……
む、大天使?
「ミカエル!?」
「うわっ!?ビックリした…な、なによ、いきなり…?」
「ビックリしたのはこっちだ!!何故、貴様がここあっ、こら造花を壊すな!!」
せっかく完成させていた造花を興味本意でばらすミカエルに私は驚きと怒りが混じる表情で叫んだ。
ちなみに、ミカエルとは前々回の時に登場した大天使であり、一度少女Aを生死の境に追いやった奴だ。(詳しくは読み直してくれると分かる!)
「貴様はあの時、私に天界にまで殴り飛ばされたのでは無いのか!?」
そう、少女Aが死んだと思った私はミカエルと対決し、ミカエルを空彼方にある天界にまで吹き飛ばしたと思っていたのだが…
ミカエルはへぇ~?っと気だるげに返事をし、人を小バカにするかのように笑った。
「今どき、負のオーラを纏ったパンチ一発で元いた場所に吹っ飛んではい、おしまい~なんて奴いないでしょー」
「バカ!それ以上は言ってはならん!」
少ないファンはおろか誰もこの話を読まなくなってしまう!!!
私のツッコミも空しく。ミカエルはケケケと笑い造花の材料をちゃぶ台から落とすなり、妙に腹立たしくにやけた表情で頬杖を付くと私の顔を覗き込むようにじっと見つめてきた。
って、あぁ!せっかくの材料がーーッ!!!
「…んねぇ~~、サタ~ン~~」
「な、なんだ!!(泣)」
猫撫で声とはこの事だろう。
悔し涙を流しながら造花の材料を拾う私にミカエルはにぃ、と歯を見せるように笑い言うのだった。
「しばらくこの家に置いてよ♪」
「……なに?」
今、なんと言っ……「実を言うとさぁ~、あなたに天界までぶっ飛ばされちゃって数日後くらいに、神が天界中にいる天使たちに行うありがた迷惑な講演があってね」
こらこら!
途中で割り込むな!!と言うか割り込めるものなのかこれ?!
「私の娘が魔界の魔王にコテンパンにやられたー、とか天界中に言いふらすから頭にきてさぁー。あっ、覚えてる?パパがかつらってこと」
「私とお前が同じ小学校に通っていた頃ではなかったか?いやぁ、懐かしいなぁ。散々イタズラし倒した小学生…」
「と言うのは次回に置いといて…神様のくせにハゲなのをロン毛のかつらで隠してるのよ」
「次回にとか言うな。まあ、あの年の年代だと誰しも気になるのだろう…それがどうかしたのか?」
「もう本当に頭に来たから演説中に釣竿でかつらを取って、天界中の笑い者にしてやったの」
悪魔かお前はーーーッ!!!※大天使です
「いやぁ~~、余りにも見事に取れて笑ったよ!天使たちの呆気にとられた表情とか本当、可笑しくて!!爆笑だったわー!」
腹を抱えてゲラゲラ笑う姿はもはや、大天使の威厳など微塵も無い。
ひぃひぃ苦しそうに息を整え、ミカエルはそれでね、と話を続ける。
「パパ、大激怒しちゃったわけ。三日前に説教させられたばっかりだったし、うんざりしたから言ってやったのよ。『こんな場所から家出してやる!』ってね(笑)」
「…で、私の家に来たわけか…」
「あったり~~!!だから、お願い!しばらくこの家に住ませて~!」
時代遅れの若者のような家出だな…
しかし、よく気楽に来れたものだ。
生きていたとは言え、一度、少女Aの命を奪うまでか。多大なる被害を人間界に与えたと言うのに…どうしたものか…
「いや、そもそもこの部屋は五畳半しか……」
「えっ?なに?」
何をせんべい片手にくつろいでいるのだ、貴様ぁ!!!
「細かい事は気にしないよ~。てかなにこれ固いし、湿ってる…マッズイ」
「それでも私が楽しみに取っておいた堅焼きせんべいだ!!返せ!!」
「そろそろ暗くなってきたねぇ」
むぉ!?もうこんな時間か!?
展開が早すぎるぞ作者!!
「えぇい!!ミカエル!私は少女Aとの約束があるのでな!!昨日の夕飯の残りが冷蔵庫に保存されているから適当に食べて過ごしているがいい!!留守番はたのんだぞ!!」
「あっ、ちょっ!?サターン!!」
ミカエルの静止も聞かず、私は慌てて身仕度を済ませ部屋を飛び出していき。
少女Aとの約束場所『焼肉屋さらし首』へと向かっていくのだった…