表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

第一話  窓ドタンズズゴンガツ

 初めに言っておくが、俺は窓ガラスだ。

 しかも、縦は二・八メートル、横が七メートル、厚さ六十ミリの組織特製で、衝撃に強い超高性能。



 え、なんでかって? 

 ……知るか。俺だって知りたい。



 しかもここは、世界有数の悪の組織の本社ビル。

 やれ怪人、やれ侵略、やれ世界征服と言い合うダークスーツのおっさん達が、ドタバタと歩き回っている。



 最近の日課は、目の前のベンチで昼食を食べる女子社員の観察、となってしまった俺の窓ガラスライフが、今日も終わりを迎えた。


















 と、思いきや。

 ただいま、三日月と星達がキラキラと輝く夜中。

 実はこの会社、行動はダークでも、仕事方針は残業禁止のホワイト。

 ビルには、警備員さん位しかいないはずである。



 あーあ、ガラスだから全然眠くならねーや。つまんねーの。



 カツン。



 ん?



 カツン、コツン、カツン。



 誰か来た。



「うぅ、真っ暗だぁ……怖いなぁ……」



 縮こまりながら懐中電灯を照らしてやって来たのは、若干二十代ながら、社長の息子というコネを使い、次期社長に就任する予定の副社長、

 渋谷しぶやごうだった。



 コイツ、何しに来たんだ?



 何故、ここを通っていたのか。

 それは、このビルにA館とB館があるのだが、警備室がA館にあるので、夜はA館しか出入り口が開いていないから。


 ちなみに、誰がやったのか、A館が三階建て、隣のB館は三十六階建てという、よく分からん設計がされてある。



 それはともかく。



「もう、ここは暗い、何で書類を忘れたんだ、馬鹿、僕は忘れた書類を取りに行くんだ、怖いな、間抜け、書類取って、眠いなぁ……ふああぁっ」



 ……なんか言葉の羅列がおかしいが、書類を忘れて取りに来たんだなーって事は分かった。行ってらー。




















 しばらくして戻って来た。



「……書類ドジ馬鹿あんな所に何で怖いな帰る布団怖い機密眠いハゲ阿呆暗い書類滓首領殴りたい面倒臭いキモイ置いてきて書類デブ死ね糞親父いぃっ!!」




 うわぁ……悪口になってる……




「はっ!! こんな事言ってるの誰かに聞かれたら、いくら息子でも僕の人生終わるぞ!?」



 悪い、もう聞いちまった。害にはならないだろうが。

 取り敢えず、よく踏み止まれ─────────




「月……」




 …………月? ……あ、俺の後ろ(?)にあるな。




「つき、みかづき、みかん……づき、みかん、みかん……はおれんじ、おらんじ、おらあじ、おやぁじ、おやじ……殴りたい」




 何やってるんだよ、怖いなら早く帰れよ。




「この際月でもいいや」




 ヒュッ。


 ガコガシャンバキンッ。





 痛え!! って、なんで俺のところに懐中電灯投げつけるんだよ!! 一応、防弾ガラスに近い強度だから傷ひとつ付いてないけど!

 しかも、この暗い中闇雲にこっちに走って来んなって!







「くらえっ!!」










 ドタンズズゴンガツッ!!










 ……ほら、言わんこっちゃない。






 渋谷業は、ベンチに足を引っ掛けて、コケた。








※この後、あまりの暗さに怖くてうずくまっていた所へ、偶然通りがかった警備員さんに救助された。


渋谷しぶや ごう


悪の組織〔ラムネリアン〕の副社長。

社長の渋谷しぶや 闇市やみいち氏の息子。


「ラムネと練りアンって、(ね)がくっつくじゃん!」

という闇市氏考案の企業名に反感を抱いており、


「〔ダークインフェルノ〕の方が格好良いのに」

と、企業名変更を目論んでいる。


現在、一児の娘の父親。

強化改造人間 ゴシウヤブ という一面も持っている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ