知恵あるスライム頑張ります
スライムには知能がある。
そんなことを信じる者は果たしているのだろうか。
昔からの経験則、研究による結果、テイムした際の反応……。
様々なことからスライムには知能がないものだと断言される。
しかし、ここに一匹の知能をもつスライムがいる。
この話は、そんなスライムが生き抜くために知恵を振り絞っていく話である!
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「なんて考えてみたけど、どう考えても無理だよなぁ」
朝起きたらスライムになっていた。
文章にするならたったそれだけのことなのだが、本人からすれば大問題である。
状況を確認してすぐに街から逃げ出したわけだが……。
「話せることだけが救いといえばそうなるのかな」
街近くの草原はほとんど魔物は出ないからスライムでも安全だと思う。
そもそもどれくらい戦えるのかも分からないけど。
「戻り方も分からないし、本当にどうしたものか」
そんなことを考えていると、街の方から誰かがこちらに走ってきた。
ここで迎えに来たなんて馬鹿な捉え方はしない。
すぐにこの場を離れるため、動き出す。
「……明らかにあっちの方が速いよな」
追いつくまで1分ほどだろう。
何としてでも生き延びる方法を考え付かなくては。
「穴を掘ってみる」
染み込むことすら無理っぽい。
手って便利だったんだな。
「身代わりをおく」
これなら何とかなりそうだが、問題点が2つほど。
①そもそも身代わりとなるものがない
②隠れる場所がない
うん、どうしようもないね。
「戦って勝つ」
これは最終手段だな。
「説得する」
捕まって研究機関に売られるのがオチだろう。
「よし、戦おう」
意外と早くに決まった。
穴を掘ろうとして分かったが、戦闘能力はスライム並みだ。
とすると、頭を使うしかない。頭ないけど。
「スライムの利点は?」
不定形なこと、核を潰されない限り死なないこと。
核を隠して戦えれば最も良いが、隠す場所がない。
ならば、自分自身を罠にするのが次点で良い方法のはずだ。
「人の弱点は?」
多すぎる。それに殺しまでするつもりはない。
意識を失わせる方法を考えよう。
「……窒息か」
顔にまとわりつく。これだ。
そのための足止めをどうするか。
「自分を餌にすれば良いか」
核さえ残れば生き残れる。
初撃を全力で回避。
その間に足元に薄く伸ばしておく。
避けたと同時に、核を相手の後頭部に配置しつつ窒息させる。
「これだ、これしかない!」
さあかかってこい!!
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無理でした。
「遠距離から魔法とか……」
前方にゲル部分を集中させて何とか核は守りきったが、追撃されたら終わっていた。
「隠れられる場所が必要だ」
多少危険でも、森の中の方が良さそうだ。
近くの森はウルフにさえ注意すれば大丈夫……のはず。
人に見つからないうちに移動しよう。
まだ死にたくはないからな!
……続かない。