008「07 遠征中1」
今回、蛸?の足?を切り落とします。
苦手な方は、ごめんなさいw
「07 遠征中1」
「遊戯的な狩り」と・・・
相手を恨み、その感情から「殺す事」は許されない
でも、空腹に耐えかねて食べてしまう事は許される
但し、捕食の為の狩りに失敗して・・・
返り討ちにされて、殺されても仕方がない
そんな、秩序に関する考え方の違いを受け入れたソラは
3日程度で世界に馴染み
食用にされない為に、仕事をする様になっていた
だが、しかし今日も・・・何処かで、ソラの悲鳴が上がる
世界に馴染んでも、ソラが捕食される側であると言う事実
現実問題は、変わる事がなかったりするのだった。
今日は、この世界の空・・・
「倉庫A」と書かれた「天井の切れた照明を交換する」と、言う
フィンの仕事の為に、天井へと続く柱でもある森まで来ていた
その柱は、地底へと流れた、無駄な水分を引き上げる為と
天井に行く為に存在し・・・
水の逆流を避ける為と、登る者と荷物の落下事故を防ぐ為
縦横無尽に大きく蛇の様に曲がりくねり
何処からとも知れず漏れた水の為に
柱事態が、熱帯雨林の様になってしまっている
先程、ソラの悲鳴が聞こえたであろう場所も
今、フィン様一行・・・
長時間歩くのが苦手なフィンと、フィンと荷物を運んでくれる
山道が得意なトナカイ系獣人の運び屋なおねえさん
レイブンと、レイブンの背中の鞄に乗って休むセレス
そんなメンバーが進む道も
強いて簡単に説明するならば・・・
樹木の生い茂る、手入れされていない登山道
ぶっちゃけ、一般的な獣道である。
道無き山道を進む先頭・・・
胸毛がもふもふした、トナカイの首がある筈の場所から
大柄な美女の上半身が生えているカリブーさんの背中の上
荷物と一緒に乗っていたフィンが、後ろを振り返り・・・
『あ~大変・・・レ~君!
ソラが食べられそうになってるよぉ~』と、見たままを口にした
自分で助ける気の無いフィンは、クッキーを頬張りながら
吸盤の付いた触手に捕らえられて
必死にもがくソラを、にこやかに指で指示していた。
『少し糞尿臭いと思ったらラフレシアかぁ~・・・
ラフレシアは2年で一度、3日しか咲かない珍しい花だぞ!
それにしても、ソラは・・・
珍しい物が見れて、その珍しい物と戯れられてラッキーだな!
自ら動いて捕食するラフレシアが、植物のラフレシアと一緒で
花の時期が珍しいモノなのかとか知らんけど』
青白い色合いの鴉、セレスは・・・
レイブンの鞄から飛び立ち、安全そうな高い木の枝に止まり
楽しそうにソラを見詰め、レイブンを急かす様に翼を羽ばたかす
セレスも、ソラを自分で助ける気は無いらしい
レイブンは大きな溜息を吐き、一番最後に後へ振り返った。
『先輩助けてぇ~!』と、ソラが
レイブンに向けて、必死に叫んでいる・・・
レイブンが、この世界に来た時に着用していた園児服を見てから
レイブンの事をソラは「先輩」と呼ぶようになっていた
そして・・・今日も今回も、レイブンに助けを求めている
『あの生き物は・・・
自立歩行するラフレシアは、食えるのかな?』
レイブンは、苦笑いしながら
肩に襷掛けしていた、鞄を面倒臭そうに外し・・・
鞄の外側のポケットに入っている
キッチンでも愛用している「ぺティーナイフ」を取り出した。
『あんなの食べた事が無いから知らんよ、でも・・・
普通のラフレシアは、受粉して9カ月したら実ができて食える
もったいないから、枯らす様な刈り方をするなよ?』
『師匠・・・じゃあ、どうしろと?』
ソラの悲鳴が響く中・・・
セレスとレイブンは、無言で見詰めあう
『レ~君・・・ソラが食べられちゃうよ?
因みにアタイは、あのソラを捕まえている足は蛸の足と見た!
今日の御飯は、「たこ焼き」が良いです!』
『なんだい?その「たこ焼き」って言うのは?美味しいのかい?』
フィンの「たこ焼き発言」に、カリブーが食いついて
この後、休憩所で食べる御飯は・・・
フィン御要望の「たこ焼き」に確定した様だった。
セレスが枝から飛び立ち、空中を旋回し
『たこ焼きソースを調達して来るから
たこ焼き用に、足を確実に仕留めるんだよ!』と、言い残して
登ってきた柱から下にある街へと、鼻歌を歌い
セレスが舞い降りていく
レイブンは、半笑いでセレスを見送り
「蛸」と勝手に認定した生き物に向き直る
取敢えず、たこ焼きを作る為と・・・
その蛸の触手に捕らえられているソラが
心なしか何となく、ぐったりしてきた様なので・・・
レイブンは気合を入れて、一仕事する事にした。
本気で動き回るには、邪魔になりそうな鞄をフィンに預け
刀と同じ製法で作られた、ぺティーナイフ片手に
ソラを捕らえているラフレシアとの間合いをはかって
レイブンが、少しづつ近付いて行く
それからレイブンは、自分の行動に気付いたソラに向けて
唇の前に人差し指を立て、黙る様に支持し
自分から一番遠い蛸の触手に向かって小石を投げる
伸び縮みする触手がレイブンがいる方向とは
逆の方向に意識を集中させたのを目視で確認し
レイブンは、素早く静かに近付いて
触手の吸盤の無い場所を掴み・・・
蛸が驚き、引っ込めようとする触手の先1m位の所向を
何度か切りつけて、引き千切った。
捕らえられたままのソラは一瞬、触手に締め付けられたのか呻き
その後、高い位置で触手から解放され・・・
蛸にある、ラフレシアの花みたいな器官の近くでバウンドして
地面に落され、蛸に放置された
レイブンは、腕に巻きつこうとする・・・
千切られても、元気にうねる触手を即座に地面に叩き付け
一応、ソラの無事を目で簡単に確認しつつ
逃げようとする蛸の触手を同じ要領で、もう1本切り落とす。
こうして手に入れたのは・・・活きの良い触手2本
たこ焼きの具として手に入れた
その触手の臭みと、滑り取りをする為に探したのは・・・
崖の中腹に自生していた野生化した小さな「大根」
その為に、運よくゲットできたのは・・・
同じく自生してた「ネギ」
崖登りをした時に見付けた「鳥の卵」
後は、パンケーキを焼く用の小麦粉を持参しているので
たこ焼きができる材料は、ほぼ揃っていた。
『カリブー、この周辺に生姜の自生してる場所ないかな?』
そう言ったレイブンの表情は
やりきった感のある、爽やかな笑顔で・・・
狩りモードに入って、真剣な顔をしていたレイブンとは
本当に、別物の雰囲気を醸し出していた
『いぃ~男に育ったねぇ・・・
さっきの攻撃的な表情には、本気で惚れ直したわ』
道端に落ちていたソラを拾い上げて
肩に担ぐ様に運ぶカリブーが・・・
『アタシの燕にならないかい?』と、レイブンにウインクを飛ばす。
『俺は、セレスタイトの僕なんで
そんな美味しい誘いも今は、受ける訳にはいかないんだ
ごめんね、でも・・・もし、良かったら・・・
遠い未来、俺がセレスタイトを喪う事があったら・・・
その後から、先着順で受け付けるよ』
意味深な誘いを何かありそうな台詞で返し
レイブンは、愛想を振りまく
『休憩所に着いたら、今回の誘いを断った御詫びに
腕を振るって、カリブーの為に「たこ焼き」作るから
期待してて』
『上手い事言うわぁ・・・これ以上、惚れさせてどうする気?』
カリブーは、悪い気がしなかったのだろう
少し頬を染め微笑んだ
『あ~、カリちゃんズルイ!レ~君!アタイの分も作ってよ!』
フィンは、2人の会話に参加する為に
カリブーの肩に乗せられたソラの上に体重を掛け・・・
ソラに悲鳴を上げさせ、ソラの意識を回復させてくれた。