007「06 ソラの事情」
食文化の違いによる観点から来る、怖い表現が微妙に使われています。
「06 ソラの事情」
色々、疲れていたのだろう
気付くとソラは、ベットの上に寝かされていた
いつの間にか、寝落ちでもしてしまったのかもしれない
ソラは自分が今、何処に居るのかも検討が付かなかった
そこは・・・ソラが住み慣た
自分の居場所の無い、自分の家で無い事は確かで
ハンガーラックに掛けられた、自分の学校の制服以外は
見覚えの無い物ばかりだった。
柔らかい毛布に包まれ、寝返りを打つソラ
見回した先に見えるのは、無機質で生活感の薄い
でも、清潔感のある御洒落な寝室
『展示用の部屋みたいっすなぁ・・・』
ソラは昔、小さい頃・・・
ソラの勉強机を買いに母親と一緒に行った、大きな家具屋で見た
見本の部屋の展示スペースを思い出した。
当時は、何も知らずソラは幸せだった・・・
ソラは、自分の幼い頃の思い出に懐かしさを覚える
『それにしても・・・どこなんすかね?ここ』
独り言をいって、ソラは上半身を起こした
我に返ったソラの腹が空腹に耐えかね、食事を要求する
外の明るさから気付かなかったが
部屋を見回し、見付けたデジタル時計は21:00を指している
ソラは、時計が間違った時間を指しているのかと思い
太陽の位置を確認する為に、ベットから這い出し
窓の外を覗き見る・・・
そこには、ソラの知る空は存在しなかった。
何故か寒気と鳥肌が立ち、胸の中に不快な感覚が広がる
ソラは急いで窓を開け
窓枠から乗り出して、窓の外の世界を確認する
空がある筈の場所には、何の冗談か
「倉庫A」と書かれた濃い灰色の天井と、無数の光源・・・
視線を下に向け、見えたのは
民家の屋根と、そこを当たり前の様に歩く人影
そして、少し遠くに見える道を歩く通行人達・・・
それ等は全て、明らかに人間ではなかった。
フラッシュバックするかの様に思い出される
寝落ちしてしまう少し前の記憶・・・
ソラはやっと、思い出す事ができた
此処はソラ的に異世界で、ソラにとって未知な世界
そう、ソラが寝落ちする前に見た世界は
夢ではなく現実で・・・
現状、元いた場所にどうやって帰ればいいか分からないのだ
ソラは、窓の傍でへたり込み・・・
深呼吸して、冷静になろうと努力する
そして、今朝の出来事を順に思い出していく事にする。
そう、朝からソラは災難続きだったのだ
今日は早朝から・・・
ソラと、その母親しか住んでいない筈の場所に
聞き覚えの無い事は無い、若い男の声がした
ソラは寝起き早々・・・
へらへら笑う不誠実そうな男と
その男に甘える様な仕草を見せる実母の姿を見る事となった
ソラにとって、とても不快な事だった。
母子家庭とは言え・・・
朝帰りした母親に、オマケで付いて来た男って言う組み合わせは
寝覚めに美味しくない・・・寧ろ、気分の悪くなる光景だ
ソラは、関り合いになりたくなくて
早々に、挨拶もそこそこに
急いで学生服に着替えて家を出る事にした、のだが・・・
男は、ソラの母親との関係にイニシアティブを取りたがっており
ソラに絡んできた。
ソラは、「主導権を握る為の道具」にされたくなくて
逃げ出したかったのだが
既に懐柔され、騙されているであろう実母に邪魔されて
案の定、明らかに言える立場で無い男に・・・
ソラは、一般的にありがちな素行を注意された
因みにソラは・・・
中学校の校則を違反する様な事を一切していない
実父が、色素の薄い種類の外国人だったが為に
髪色が他人様より薄く、脱色でもしている様に見えるだけである
母親曰く「再婚予定の相手」だと言う男がニヤニヤ笑う
多分、この家に居座る算段をつけでもしたのだろう・・・
男から痛くも無い腹を探られウンザリした
ソラはその男から、胡散臭さしか感じなかった。
男のソラの将来を心配している定で語られる言葉の端々(ばし)に
ソラの母親が喜びそうな
未来を連想させる単語が入り混じる・・・が、しかし
ソラは、男から「ソラの母親を幸せにする」と、言う意思を
全くと言って、感じ取る事ができない
どう考えても、歴代のソラの母親の恋人達同様
この男も、「ソラの母親の財布の紐を握る」為だけの為に
今、現在進行形でソラを利用しようとしているのは明らかで
また、騙されて傷付くであろうソラの母親は
それに気付く事も無く、懲りずに見せ掛けの好意に釣られて
男を称賛している。
ソラから、溜息が知らず知らずのうちに零れた
語る事に、称賛される事に陶酔していた男が
溜息に気分を害し、怒り出した
ソラは、一方的な言葉の攻撃に黙って耐えた、耐えていたのに
ソラの母親は・・・
『私の再婚予定の相手と喧嘩するなんて』と、怒りだし
『どうしてお前は、私の幸せをいっつも邪魔するの?
なんで、あんたなんかを産んだんだろう・・・
疫病神!もう、2度と帰って来ないで!』
と、怒鳴りつけソラを家から追い出した。
その後、学校では・・・
落ちてるゴミ「ジュースの紙パック」を蹴飛ばしたら
偶々、パックジュースの中身が残ってて・・・
偶然、怖い先輩方の制服のズボンの裾に
その中身が掛かってしまい・・・
それに怒った、先輩方に追いかけられる事になった
学校中を逃惑い・・・
その先輩達から逃げる為に、掃除道具用のロッカーに隠れたら
最初、見付からなかったのに
息切れと、緊張感に耐えられなくなって身動ぎし
中にあった箒を倒して、物音を自分で立ててしまい
隠れているのがバレ・・・
ソラが隠れていた掃除道具入れは
先輩達の手により、扉を下にした状態で勢い良く倒され
ソラは閉じ込められた。
閉じ込められてからは、ガンガン蹴る音と振動が響き
ソラは苦痛に耐える事となる
音と振動が止んだ後・・・
耳鳴りが残り、聴力が麻痺した耳では何にも聞こえなくなっていた
ソラは取敢えず・・・
掃除道具入れの中で、ぶつけて痛みのある場所を撫でながら
聴力が回復するのを待った
聴力が回復した頃・・・
話声が聞こえてきた、先輩達の声が聞こえないのを確認して
出して欲しくて、助けて欲しくて・・・
自分が掃除道具入れに閉じ込められている事を伝える為に
音を出し、声が枯れる程にソラは叫んだ
そして耳慣れない言葉で、外から話し掛けられ・・・
助け出された先は、この世界だった
確か目の前には、自分より数倍大きな蜥蜴がいた気がする。
そして勿論、大きな蜥蜴にパニック起こして走って逃げて・・・
そこからは、店を見付けて人間に助けを求めようと思ったら
人間がいなくて・・・って、言うのを経て
レイブンとセレスに出会い、色々あって今に至る。
ソラは、実母の事を思い出し大きく溜息を吐いた
ソラの母親は・・・
直ぐに疑心暗鬼になって恋人を疑い、束縛し
携帯電話やら手紙やらを勝手に見て、信頼関係を壊しては
恋人と破局する度に拒食症になる
とっても、困った種類の女なのである
『破局するまでに帰ってやらんな駄目なすよねぇ・・・
でも・・・どうやったら帰れるんすかね?俺』
床に座り込みながら、ソラは頭を掻き窓の外を眺めた。
そこへ人影が通過する・・・
此処は、窓から乗り出して見た時に建物の2階にあると
ソラは確認していた、窓の真下に足場は無い
ソラは窓辺に近付き、通り過ぎた影を確認した
見た影は、この建物の前の道ではなく
一つ向こうの・・・ここから少し離れた道を歩いている
影は、昔話に出てきそうな角を生やした大きな鬼だ・・・
肩に担いだ、食用と書かれた網の(あみ)中に人影が見える
そして鬼は・・・多分、人間らしき者の足を銜えている
食べている様子だった・・・
『母さん、俺・・・もう、帰れないかもしれないっす』
目にした光景から・・・ソラは、帰るよりも先に
此処で、無事に生き延びる自信が持てなかった。
堅い入れ物に入れたからって
人が入った掃除道具入れを蹴っちゃ駄目ですよ!
蹴られた振動の為に、中の金具で怪我したり・・・
音から来る振動で、鼓膜に障害をきたす場合がありますからw
因みにやった人は・・・
そんなつもりなくても、拉致監禁&障害罪を犯した事になります。