表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/69

061「60 ソラの本音」

「60 ソラの本音ほんね


『あ゛~いやぁ~!だれか助けてぇ~!』

喧騒けんそうの少ない静かな時間帯

今日も、何時いつもの様にソラのさけび声が街中にひびいていた


観光かんこうに来ていた、このまちくわしくない人々はおどろきをかくさず

観光客以外の街の人々は、それにれてしまっていて

微笑ほほえましいモノでも見守る様な顔で、その光景を見守っている


むしろ、街の住民たちは面白おもしろがって

頑張がんばとう、どちらに対してかも分からない声援せいえんをソラ達に送る。


街中を2つの影が疾走しっそうしていた、ソラを追い掛けるのは・・・

SMの女王様が着用していそうな

ガーターベルト付きのボンテージファッションに身をつつ

黒髪のスレンダー美人


ソラの家庭教師かていきょうしはずの機械人形な彼女は

ピンヒールの靴音くつおとを響かせ、むちしならせ風を切り

逃るソラをすごいスピードで追掛けていた。


『に、逃げるの止めるっすから!鞭をしまって欲しいっすぅ~!』

ソラは何時もの様に街中を逃惑にげまど

機械人形は、たくみに巧妙こうみょうにソラを追い詰めて行く

そんな茶番をふくめて、ソラの日々の生活のメインは勉強に移行し


年中無休、毎日ある割り当てられた家事のほか


仕事は週2回

クリーニング屋と喫茶店きっさてんの機械人形のメンテナンスの時間だけ

店員業を受け持つ状態となっていた。


『勉強の楽しさは、御蔭おかげで実感できるようになったんすけど…

俺の家庭教師の先生がヤバイっす!

勉強する時の問答無用なSM設定せってい、聞いてないっすよ!』

あめと鞭を使って勉強を教える方針の鞭がリアルの鞭過ぎて

日々、ソラが愚痴ぐちこぼ


イロハは、それを見て聞いて

『私の先生は、とってもやさしいのよ!良ぃ~でしょぉ~』と

恋人を見せびらかす様に、自分用の家庭教師な機械人形を自慢じまんしていた。


気付けば時が流れに流れ・・・

ソラは、前いた世界での半年分くらいの時間をこの世界で生きている


身長は少し伸び、無駄むだに全力疾走したりしている内に

身体付きや、顔付きが変化して・・・

『ソラってば、ちょっとだけイケメンになったね』と

桜花オウカや、雛芥子ヒナゲシめられる様になっていた。


そんなソラが、紆余曲折うよきょくせつ有れども

この世界に慣れて、すっかり馴染なじんでしまったある日の事


夢路ユメジが・・・

『ソラは今でも…

対価たいかはらってまで、元いた世界に帰りたいですか?』と

唐突とうとつに質問してきた。


『何でそんな事を今、くんすか?』

ソラが、その質問の理由をたずねると・・・

夢路は真剣な表情で、着流きながしのえりただ

今まで内緒ないしょにしてきた事をソラに伝え、悲しげに教える


「レイブン」の存在は・・・

世界に強く根付き、過去を変えても動かないらしい事

変化するとしたら・・・

世界に対する存在が希薄きはくな「いろは」だけで


ソラが元いた場所に戻って、過去を変えてしまったら・・・

現在のイロハは確実かくじつに消え、その状態で「死ぬ」か

「存在していた事、それ自体が消えてしまう」可能性が高い

と、言う事だった。


それは最初のころならまだ「あさい傷」でんだ事実

イロハと仲良くなり、同じ時間を楽しく過ごしてきた今では

身を引きかれる様な、真実

夢路はつらそう微笑みながら『すみません』と、ソラに謝罪しゃざいする


『時がてば、イロハもこの世界に根付いて

レイ君の様に、「過去を変えても動かない存在になってくれるか」と

思っていたのですが…どうも、そうではない様なのです』と

溜息混ためいきまじりに、夢路がかたった。


「夢路さんが何かかくしてるとは、前々から思っていたんっすけど…」

『もしかして、俺が元の世界に帰る方法って…

夢路さん最初から知ってて、隠してたりしたんじゃないっすか?』

それは最近になって気付き、今の夢路の言葉で確信かくしんした事


「夢路が確信犯」であろう事は、何んとなくソラにでも分かっていた

「それが、イロハちゃんに関係ある事だとは

まったくと言って言いほどに、思いもしなかったっすけど…」


ただ、夢路の言い分も理解でき

その事をとがめられる程、夢路がだまっていた事を否定できる程…

ソラとイロハの関係性は、軽くなんてなかった。


『大人はズルイっすね…そんな事を聞いてしまったら

帰りたくても気軽に帰れないっすし、俺は…自分の我儘わがままの為、何かに

イロハちゃんの事を見殺しになんてできないじゃないっすか』


ソラから出た言葉は、夢路の望むモノだった様で

『我儘な大人でもうわけない』と夢路は安堵あんど吐息といきを零していた


「俺ってば、母さんの事がちょっと心配なだけで

別に特に凄く帰りたい訳じゃなかったんっすけどねぇ~…」

なぁ~んて、ソラの本音を知る事も無く。


最近では、ソラが母親の事を思い出すのは基本的に

家の中をらかす唯一ゆいいつの存在

ソラにとって、この世界での養母ようぼになるフィンと

その夫のハイガシラの夫婦の部屋を掃除そうじする時にだけになっていた


「フィンさんの散らかし方がちょっと、母さんに似てるんすよね」

ソラは脱ぎ捨てられた服を拾い、選別して洗濯できない物を

御供のロボット犬のナナシの背中に乗せ

下着類をナナシが口にくわえるかごの中に入れる


「もしかしたら、フィンさんの御蔭で

母さんの所に帰りたいと思わないんだったりして」

なぁ~んて思っている事も、ソラだけの秘密だったりする。


『さてと、ナナシ!俺は洗濯機に用事かあるんで

その残りの洗濯物、地下のクリーニング屋までたのむっす』

ソラは乾燥機に掛けられる洗濯物、タオル類等を拾い集め

ナナシに指示を出した


『了解!』と、ナナシは返事をし

『今日も、これから勉強なのか?』と質問した。


『そうなんすよ…カグヤさんが鞭持って追掛けて来る前に

勉強部屋にスタンバイしとかなきゃヤバいんすよ』

『ははは…お前も大変だな』

絶望感漂ぜつぼうかんただようソラの表情を見てナナシが笑う


『ホントっすよ…

ちょっとでも遅刻ちこくしようもんなら、鞭振り回して追掛けてくるし

勉強サボって、抜き打ちテストの点数が悪かったら

上半身をはだかにされて、ひもしばられてベットに押し倒されて

熱々のろうを背中にらされるんっすから!』

ソラは、家庭教師な機械人形に最近された

御無体ごむたい御仕置おしおきを思い出して、絶望含みの暗い表情になる


『ん~…俺様、ロボットだから理解してやれんのだが

何か、色々あるんだな…

そう言うのを好きな種族もいるそうだが、ソラは違うんだな…』

ナナシがちょっと不思議な事を口走った。


『ナナシ?その好きな種族ってそれ…何、情報っすか?』

御隣おとなりさんな書庫の管理人のブームが

週刊SMの世界って言う、面白グッズ付き情報誌を愛読してるだろ?

最近、それに付いてる冊子をブームがデータ化したから

予備知識として、ダウンロードしてみたんだ』と、言う


ソラは緑褐色りょくかっしょくへびの胴体を持つ

女性の上半身が蛇の鎌首部分かまくびぶぶんえた、ブームスランの事を思い出し

泡立つ様に全身に鳥肌を立て、顔を青褪あおざめさせた。


『おい…大丈夫か?』

ナナシが、その状態に気付いて心配する

『まぁ~それなりに…』

ソラは青い顔を引きらせ、笑顔を無理矢理作って見せる


ソラはひそかに、彼女に対してトラウマを持っていたりする

初対面の時におそわれてからと言うモノ

どうにもこうにも、当時の恐怖を思い出してしまって

身を強張こわばらせてしまうのだった。


『そうっすかぁ~…ブームさん情報っすか…』

ソラはその情報が、

自分の家庭教師な機械人形の目にれない事を本気でいの


のだが、しかし・・・


『そうそう最近

カグヤも興味持ってダウンロードして、気に入ったって言ってたぞ』

ナナシから、悲しい現実が突き付けられた。


『マジっすか…』

『俺様…ロボットだから基本、うそけないぞ

冗談じょうだんは言えるけど、こんな所で俺様が冗談言うと思うか?』

『思わないっす…そっかぁ~マジなんすか』

ソラは現実逃避げんじつとうひするかのように、虚空こくうを見詰め途方とほうれる


世の中、るいは友を呼び…

近い趣味の者達は自然とあつまり、情報を共有きょうゆうし合うモノである

「あぁ~…帰りたい理由がえたっす」


ソラはこの後・・・

家庭教師な機械人形「カグヤ」の御仕置きを受けぬよう

必死で勉強にはげんだのは言うまでもない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ