055「54 幼稚園児の着る園児服」
「54 幼稚園児の着る園児服」
蜘蛛が倉庫に卵嚢を押し込んだ為、破壊された窓は・・・
桜花が一人で頑張って、荷物で塞ぎ
出入りできるのは、巨大な蜘蛛が扉の外側で立ちはだかる
正面の出入り口だけとなった
気持ちが悪いくらい床を這っていた子蜘蛛達も
倉庫の中から殲滅でき、一番働いた桜花は荷物に腰かけ一息吐く
子蜘蛛を食べていたセレスは、満腹で休む場所を探し
雛芥子の膝の上で落着き、羽を休める
退屈したソラは、暇を持て余して・・・
自分が依頼され、夢路の所まで持って帰らなければならない荷物
只今、まだ推定の段階なのだが
その荷物らしき「いろはちゃんの!」と、書かれた段ボール箱を
ソラは、そっと手に取る
膝の上に収まる程度の大きさの段ボールの箱は、とっても軽く
殆ど中身が入っていない事が分かった
そして、その箱は・・・
それなりに大切にしまわれていたのであろう
箱には布が掛けられていた為に、埃は被っていない。
但しソラは、これが本当に夢路が言っていた箱なのか…
夢路に「持って来て欲しい」と言われた荷物なのかの確信を持てず
中身を見て、夢路に確認して貰う事を考え付く
幸い手元には、レイブンの携帯電話がある
『セレスさん、夢路さんと連絡取って貰えないっすか?』
ソラはレイブンの携帯を鴉のセレスに差し出し
『このまま確認もせずに持って行って違ったら不味いっすよね?
違ったりとかして、二度手間になったら大変っすよね?』と、懇願する。
『そう思うなら、自分で電話を掛ければ良いんじゃないのか?
レイ君は携帯を使っても怒らんと思うぞ』
セレスは欠伸をしながら、面倒臭そうにしていた
『電話したいのは山々なんすけど…
アドレス見ても、どれが夢路さんなのか分からないっす!』
ソラは、ソラの知らない文字が混在している
携帯電話のアドレスのページを開き、セレスに見せて
『どれが夢路さんの番号っすか?』と、セレスに詰め寄った。
『雛ちゃんよろぉ~…』
本当に眠かったらしいセレスは、自分の白い羽毛に顔を埋め
そのまま寝てしまい
セレスに指名された雛芥子は、ソラから携帯を受け取って・・・
『仕方が無いなぁ~』と
機械人形のプリムラに電話を掛け、夢路を呼び出してくれた。
「その手があったんすね…って、言っても
プリムラさんの電話番号も知らないし
携帯のアドレスのどれがそうなのかも、見分けつかないっすけど」
ソラは一人、成り行きに感心して
雛芥子は『はい、どうぞ!』と、TV電話で繋がった携帯を渡す
受け取ったソラは、あたふたしながら事情を話し
携帯のカメラの部分を箱に向けて、夢路に箱を見せる事が出来た
『あぁ~それですよ、その箱で合ってます
ソラ、雛芥子に携帯を渡して箱を開ける所を私に見せて下さい』
ソラは『了解っす!』と、夢路に言われるまま携帯を雛芥子に渡し
話しが聞こえていた雛芥子も、素直に受け取って
夢路の言う事に従っていた。
夢路の了解を受けて箱を開ける事になったソラは
開けた箱の中から出てきた
「幼稚園児が持ってるような黄色いリュック」と
「幼稚園児が被っている様な黄色い帽子」「ピンク色の園児服」に
首を傾げる・・・
「この世界にも、幼稚園あるんすかね?
で、この幼稚園セットの貰い手ができたりとかしたんすかねぇ?」
ソラは適当な解釈をしてから
『箱の中身に間違いないっすか?無いなら…
今の現状から無事に脱出で来てから、持って帰るっすね』
夢路に箱の中身を広げて見せた。
『ソラ、箱の中身に書かれた持ち主の名前を確認して貰えますか?』
画面の中の夢路が意味ありげな笑いを浮かべ
ソラはその意図が分からないまま…
偶々、手にしていたピンク色の服に名前が書いていないか確認する
幼稚園児が着る様なピンク色の上着の内側には
幼少の頃から目にしてきた、見覚えのある住所と電話番号
「すずき いろは」と、言う名前が書かれていた。
ソラは無言のまま、黄色い帽子に書かれた3個の名字と
4個の名前を確認した後
黄色いリュックに手を伸ばす・・・
黄色いリュックの中にも、同じ住所と電話番号
名前を3回書き直された形跡のある御名前欄を確認した。
「幼稚園の制服とかを譲渡する事って無い事は無いっすよね?
でも、その場合って…名前だけでなく
普通は、住所や電話番号も書き直す筈っすよね?」
ソラの中で、色々な謎が蠢き
ソラは、如何して良いか分からなくなってしまった
一般的に考えて・・・
電話番号をその住所に残して、引っ越すなんて事は考えられない
住所と電話番号が一致しているのならば
その場所に住んでいる者の誰かは、同じなのであろう
ソラは、自分が住んでいた住所とアパートの名前と部屋番号
家で使っていた電話番号を見詰めて、母親の事を考える。
「俺と同じ名前の上に、無理矢理書かれた名前の名字って
母さんの恋人の名字っすよね?結婚して子供が2回生まれた?
でもそこには全部、線が引いて消してあって…次に下に書かれた方
『鈴木 色葉』って、どう言う事っすか?」
『わっけ、わかんねぇ~っす!』
ソラは一人、その場で悶絶して叫び
『俺より先に、この世界に来ていた女の子が…
俺の妹なんて非現実的な事が、あったりするんっすかね?』と・・・
携帯画面の中の夢路に問い掛けた。
夢路は、楽しそうに満面の笑みを湛え
『その御話は、こっちに帰ってきてから…ですよ!
知りたいのなら、その荷物を持って無事に帰ってきて下さいね
では…また、後ほど』と言って、電話を切ってしまった。
その場に訳の分からないまま取り残されてしまった形のソラは
雛芥子に・・・
『もっかい、御願するっす!電話掛けて欲しいっす!』と言ったが
『我慢しなよ…夢路さんってね
自分が思った様にしか、絶対に行動しない人だから
電話掛けても、直ぐ切られるだけだよって言うか…
そう言う理由では、プリムラはが話を繋いでくれないと思うよ』
と、断られ…途方に暮れた。
丁度その頃、不意に遠くで雄叫びが聞こえてきた・・・
桜花が過剰反応して、唯一の出入り口に駆け寄ろうとする
セレスが上手にコロンと、雛芥子の膝から床に着地し
雛芥子が慌てて桜花の腰に抱き付き、そのまま足払いを掛け
桜花を床に押し倒してしまう
一瞬で起こった出来事に驚いて、ソラは硬直し
押し倒された桜花も、正気を取り戻す
『雛ごめん…ありがとう、もう大丈夫…』
桜花は頬を赤らめ体を起こした。
『どうしたんすか?何があったんすか?』
桜花と雛芥子の様子を見て、動揺しまくるソラ
『多分、気合入れる為に叫んだんだろうけど…
不味いな、レイ君に何かあったぽい…』
セレスは眉間に皺を寄せ、鋭い目で扉の外を見詰めている
状況を知るすべの無い状態
言い知れぬ緊張感が、その場を支配していた。
大きな扉の外に居た巨大な蜘蛛が動きを見せる
鈍い、硬い物が擦れるような音を響かせ蜘蛛が移動していく
『なぁ~んか、おもしろそぉ~…』
蜘蛛の恐怖から、何時の間にか復活した雷がソラの背後に忍び寄り
『ソラ?相談があったら私が聞いて、あ・げ・る』と
ソラを背後からぎゅっと抱締め、ソラの悲鳴が轟いた。
『やめんか!この色情狂!状況を見て動きやがれ!』
激怒した桜花が雷を蹴飛ばし、倉庫の壁にめり込ませる
『桜花、駄目じゃない…それ、やり過ぎだよぉ~』
にこやかな雛芥子の冷静な対応がちょっと、物凄く
雷の脅威と同じくらいに、ソラ的に怖かった様な気がするのは
ソラの気の所為であろうか?
巨大な蜘蛛は叫び声を耳にして一瞬、足を止め
何事もなかったかの様に、屋根の上の登って何処かへ行ってしまった。
ストーリーとは関係ありませんが
モデルの蜘蛛「アシダカグモ」ってちょっと不思議ですよねw
私が見てた限りでは、子供を見守るけど助けないのよぉ~☠
(;一_一)子蜘蛛が食われてるのを見て、助けると思いきや
子蜘蛛を食べてるヤツを捕らえて
食われてる子蜘蛛も一緒に食べてしまうのさ☆