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052「51 巨大な蜘蛛がいると言う事は…」

「51 巨大きょだい蜘蛛くもがいると言う事は…」


御怒り心頭しんとう桜花オウカ御蔭おかげで、倉庫そうこの中はしずかになった

外から小さくガチャガチャガチャガチャと

かたい物がぶつかり合うみたいな音が複数、する様な気がする

「きっと、てきは1匹じゃねぇ~よなぁ~…」

レイブンが舌打ちしてライにらみ、続いて桜花に視線を向ける


桜花は深呼吸をしてから、全裸ぜんらの雷のしり

『蜘蛛がいる事は聞いてたけど、蜘蛛がデカ過ぎるわ!

しかも居るのは外で、超巨大ってどういう事だよ!』

と、雷を怒鳴どなっている。


レイブンはセレスと目で会話してから、無言で思考をめぐらせる・・・

外にも誰かいたはずなのに、来た時からずっと

大きな物音は勿論もちろんの事、悲鳴すら聞こえてきたりもしていない


ただし今は、静かにしていると・・・

複数の蜘蛛の足音の他に、何やらうめき声の様なモノが

いくつか、聞こえてきている


「現在外が、どうなっているかは分からないが…

多分、想像そうぞうするに…それなりに大変な事になっているんだろうな」

有る程度の事を想定そうていしてレイブンは一歩、出入り口に近付いた。


目の前の出入り口の上の方で待機たいきしている数個の複眼ふくがん

レイブンを見据みすえるかの様に黒い影を移動させ、静かに動きを見せる


蜘蛛がこちらの様子を見ているので

外の様子を見に行く気にはなれない、見に行きたくは無いが・・・

『ずっと、ここに居るわけには…いかないんだよな』

レイブンは隠し持った短剣に手を掛け

隠し武器の数を頭の中で数え、溜息ためいききながらひたいを押さえた。


レイブンが「これからどうするか?」を思案しあんしていると…

『く…蜘蛛だ!蜘蛛がいるっすぅ~!』と

レイブンの背後で、遅ればせながらソラがさけんだ


その場に居た全員が一瞬いっしゅん・・・

ソラに「遅いよ!」と、突っ込みを入れそうになったのだが…

目にしたのは、予想に反する事態であった


そこには、てのひらサイズの色素の薄い蜘蛛が無数に存在していたのだ

床の上を縦横無尽じゅうおうむじんに蜘蛛が歩き回り、少しずつせまってきている


レイブンは取敢とりあえず、携帯を取り出し

車椅子に乗っている、いとしの銀髪スレンダー美女な機械人形

プリムラシネンシスにTV電話を掛けた。


電話は何時いつも通り1コールでつながり

画面には可愛らしい2頭身CG画像が映し出され

『どうしました?レイブン』と、綺麗きれいんだ声が聞えて来る


レイブンは本当にうれしそうな、少しゆるんだ表情で笑い

『ちょっと、大好きなプリムラの声が聞きたくなってさ

調子ちょうしはどう?悪い所とかは無い?』

『問題ありません現在、私にメンテナンスの必要はありません』

プリムラの素気そっけない返答にも、動じる事は無い。


『それと、此処ここからが本題なんだけど

検索けんさくして照合しょうごうしてくれ、この蜘蛛って毒あるヤツ?』

レイブンはカメラを蜘蛛に向ける

ちょっとはなれた場所に居たセレスが、会話の内容を気にして

レイブンのそば、携帯の会話が聞こえる場所まで飛んでくる


孵化うかしたばかりの子蜘蛛の様です、近くに親蜘蛛はいませんか?

後、少し高い場所に円盤状えんばんじょう卵嚢らんのうがありませんか?』

プリムラに言われて見回すと、まどだったであろう場所から

円盤状の何か分からない物が無理矢理押し込まれている様子だった

子蜘蛛は、そこかられつをなして次々と出てきている


レイブンはそこへカメラを向け

倉庫の入り口から親蜘蛛がのぞき込んでいる事を

そちらにもカメラを向けた。


『正直、大き過ぎますが…アシダカグモに属する蜘蛛の様です。

本来のアシダカグモは、無毒で…

ハエやゴキブリやネズミを捕食ほしょくする益虫えきちゅうの類です。

性格的には…集中力が無く気の多いタイプで

獲物えものらえていても、新しい獲物を見付けるタブ

捕らえた獲物を放置して、次の獲物を捕獲ほかくに行くのが特徴とくちょうです。

成熟せいじゅくすると、比較的大型ひかくてきおおがたの動物も捕食するそうです。』

『比較的大型の動物ねぇ~』

プリムラの説明を聞きながら

レイブンは扉の向こう側に隠れた巨大な蜘蛛を見据みすえる


かべの向こう側とは言え、近くに巨大なはちが存在したのですから

それを捕食する大きな蜘蛛がいるのは想定範囲内そうていはんいないです。

最近出現した、大蜥蜴おおとかげの事もまえ

他にも巨大な何かが存在する可能性を考慮こうりょし、頑張がんばって下さい。』

『プリムラ…その言い方からさっするに

「正体不明の巨大な生き物の目撃例もくげきれいが報告されている」

って事だよな?』

『はい!勿論です。

私は情報の無い状態で、可能性を提示ていじする様には

プログラムされていません』


ちょっと不吉な情報を得たレイブンを余所よそ

プリムラから無毒と聞いて

セレスが掌サイズの蜘蛛の元へ降り立ち、捕食を始めた。


『ありがとうプリムラ、大好きだよ!

巨大な生き物の事、ガシラさん達にも話しといてくれ

多分、明日には御土産おみやげ持って帰れると思うから

それまで家の事をよろしく』と、レイブンは電話を切る


『なんかちょっとムカツクぅ~』

先程さきほど延長えんちょうか?機嫌の悪いままの桜花が眉間みけんしわを寄せている

『機械人形に対して大好きな…とか、大好きだよ…とか

ちょっと、変でしょ!甘過ぎでしょ!人形に対して』


「正体不明の巨大な生き物」の頭が行っていたレイブンは

戸惑とまどい、雛芥子ヒナゲシに救いを求める


『レイ君、桜花はレイ君はとっても不平等だって抗議こうぎするため

「人形に対して」を強調きょうちょうして、2回も言ったみたいよ』

雛芥子が微笑ほほえみながら、ソラにたかる蜘蛛を素手で捕獲し

雷に向かっていじめの様に投げ付けている


こまったな、巨大な生き物の話はどうでもいいのか?

そもそも何で…俺の対応の平等性とか、そんな事を今更…

こんな場所で抗議されなくちゃ駄目だめなんだ?」

レイブンは少し首をかし

「それにしても…

雷の無毒な蜘蛛におびえまくる姿ってみっともないな」

雷の今の状況を見て、笑うしかなかった。


笑って・・・

『俺は聖人って訳じゃないし、そんな者になりたいと思ってない

皆を平等に扱う事なんて、無理だよ

そもそもプリムラと師匠は、俺にとって特別な存在なんだ

特別扱いするのは、当たり前だろ?』と、言い

レイブンは、セレスの傍へ歩み寄る


『師匠!腹がまだ、治りきってないでしょ?

そんなのそんなに食べたら…

また、腹痛がひどくなるんじゃないか?』と

掌サイズの蜘蛛達を美味しそうにパクパク食べるセレスを

その白い翼を痛めない様にそっと背後から抱き止める


が、しかし・・・

『問題無い!この蜘蛛はやわらかいから大丈夫だ!

からすの腹を馬鹿にするなよ?生御飯なまごはんは、消化に良い健康食なんだ』と

セレスはレイブンのうでからのがれ、蜘蛛を追い掛けて行ってしまった。


レイブンは、自分の足をじ登って来る蜘蛛を見付け

無言で、無造作につかんで真下に投げ捨てて踏み付ける


近くに居たナナシが…

しるが掛かるから、俺様から離れた場所でそう言う事はしてくれ』

と、抗議の声をあげ


雷が『もう!そんなのどうでもいいでしょ?

蜘蛛を退治するの、大手を振って応援するわ!

つぅ~か、この蜘蛛全部どうにかしてよ!』って、叫んでいる


レイブンは手持ちの薬の残量を確認し

『師匠…後で、腹痛の薬と傷薬と俺が飲んどかなきゃイケナイ薬

これから先に仕えそうな薬の調合をヨロシク!

それと、倉庫の中から出ない方向で御願いします』と、たの

セレスは楽しげに捕食を続けながら『了解りょうかい』と、答えた。


レイブンは溜息混じりに、白い鴉が印刷された

親指程の大きさのタブレットケースから、黒い小さな錠剤じょうざいを出し

苦々しい顔をしてんで食べる


『雛芥子…ソラを頼んで良い?』

雛芥子が『いぃ~よぉ~頼まれたげる』と、答えるのを聞いて

『ナナシ、後を頼むよ』

レイブンはナナシのメタリックボディーを


雷は放置する方針で通り過ぎ

桜花の手を取って自分の携帯電話をにぎらせ、耳元で何かをささやいて

レイブンは一度、桜花の瞳をのぞき込むように視線を合わせ

円盤状の卵嚢を窓から蹴り出し

『じゃ、信じてるから』と、笑顔で手を振ってから倉庫を出て行った。

蜘蛛の子が、室内で孵ると豪い事になりますよねw

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