005「04 言葉足らずと勘違い」
BLみたいなネタは入れましたが・・・
BLではありませんので安心してください(?)
「04 言葉足らずと勘違い」
風呂場に続く脱衣所とは言えども、此処は民家の脱衣所で・・・
男同士の1:1、数分前に「男色」疑惑を掛けられてた人に
困惑顔の少年が「さあ、今すぐ此処で服を脱げ」と、命令されたら
世の中、高確率で普通に脱いだりなんかしないだろう
そんな風に承知しないソラに対し、レイブンは少しだけ考え・・・
とある結論を出し、実行に移す事にする。
自分がちょっと外へ出て行きそこら辺に脱いで置いといて貰ったら
置いた場所、脱衣所が汚れる
そこを掃除するのは、自分だ・・・面倒臭い
レイブンは溜息を吐き、ニヤリと不敵な笑いを浮かべ
そんな笑顔にビクッと反応したソラを
風呂の洗い場へ行き成り押し込み、服の前を一気にはだけさせた
ソラが突然の事に、悲鳴を上げるが・・・無視する
レイブンは、無理矢理ソラを押さえ付け・・・
ソラの服を全裸になるまで引ん剥いていく
途中・・・叫び、大暴れし
ソラの顔が青ざめ、目は涙目になっている事から
ブームが口走っていた誤解と同じ物を、ソラも思い浮かべ
「恐怖していたのだろう」とは、思ったのだがしかし
レイブンは、気にしない事にした。
服を剥ぎ取った後・・・
真っ裸になったソラを、風呂の洗い場に残し
『そこにある物は何でも使っていいから、綺麗になって出て来い
着替えは俺の貸してやるよ、出てきたら飯も食わせてやるから
安心して、風呂を満喫してくれ』と、言って脱衣所へ
レイブンはソラの服に付着した、砂を刷毛で払い落として
全自動洗濯機に入れてから
脱衣所に落ちている砂を掃除機で吸い
その後を、スチームクリーナーで拭き掃除する。
掃除を終え一段落、レイブンは冷静になって考えてみて
流石に・・・
『あんまり暴れていると・・・女性陣の前でやっちゃうよ?』と
最初に耳元で、誤解を招く様な事をそっと囁いたのは
不味かったのかもしれないと、思った
深い意味は無かったのだが・・・
「皆の前で脱がすよ」と、言う意味だったのだが・・・
完全に、「男色的な意味」での誤解をしてしまったらしい
レイブンの記憶違いでなければ・・・
脱がす最後の方、ソラは本気で泣いていた様な気がする
レイブンは、ソラが・・・
「そっち系の子じゃなくて良かった」と、思う事で
誤解の方は無視する事に決めた。
『どうせ掃除するならば、脱いでお風呂に入るまでの間
脱衣所から外に出てあげればよかったのでは?』
脱衣所の開け放たれた扉の前で
プリムラが無表情に、レイブンを見ていた・・・
『何時から見てた?』
『「面白い事になりそうだから」と、
御主人様に録画する様に言われましたので、最初から見てました』
風呂場からの水音がする中の小さな沈黙
『それは削除してくれって、俺が言っても無理だよな・・・』
『勿論です、プリムラは御主人様だけの物ですから』
レイブンは右手で額を抑え深く息を吐く
『まぁ~・・・いっか』
レイブンは楽観的に考え、またもや気にしない事にする
そもそも・・・この世界の男の数は非常に少ない
何かの拍子に動画が出回ってしまっても、実害は少ない
腐女子の秘蔵コレクションに加えられるだけだろうと、諦めた。
レイブンはタオル片手にプリムラの前にひざまづく
『車椅子のタイヤで砂を踏んだだろ?綺麗にしておこう
店舗までの通路も掃除するから暫く此処で待っててくれ』
プリムラの車椅子を綺麗にした後
プリムラが通りそうな場所を全て綺麗に掃除して回る
レイブンの近くを丸くて薄い円盤状のロボット掃除機が通る
レイブンはロボット掃除機を捕まえると、そのままひっくり返し
掃除機の裏に付着していた大きなゴミを取り除き、床に帰した
『レイブンには、あの子達の不調が分かったのですか?』
いつの間にか後まで近付いてきていたプリムラに驚き
レイブンは、全自動で動く掃除機に目を向ける
『分かる訳じゃねぇよ・・・ただ、フィンの近くを通ったヤツは
確実に、ヤシの実の皮の屑を詰まらせてんだよ
放置すると壊れるだろ?取ってやんないと・・・』
プリムラは同じ機械として、その言葉に喜んで微笑んだ
『今の子を気遣ってくれたお礼に
「あんまり暴れていると・・・女性陣の前でやっちゃうよ?」と
レイブンが言った部分は、音声を誤魔化しておきますね』
囁いたつもりの言葉を言われ・・・レイブンは固まる
『えっと・・・俺、そんなでかい声で言ってたっけ?』
『プリムラの集音マイクは高性能です、囁き声も集音可能です』
素敵な笑顔を向け合い2人は見詰めあった。
『レイブン・・・そろそろ、着替えを準備するべきでは?
ソラが御風呂から出てきてしまいますよ?』
プリムラの言葉にレイブンは我に返る
『おっといけねぇ・・・未使用の下着とかあったかなぁ・・・』
掃除道具をプリムラの移動の邪魔にならない壁際に残し
レイブンは、階段の上へと駆け上がって行く
暫くして・・・
レイブンがソラ用に持って降りてきた服は
近所の人から貰った、自分では絶対に着たいと思えない服だった
レイブンは脱衣所に、バスタオルとそれと・・・
ソラ用の案内係として、玩具の犬のロボットを残して立ち去る。
風呂に入っていたソラの方は、と言うと
レイブンの性癖を疑っていた
『風呂上がりに襲われたらどうしよう!』とか・・・
『今夜にでも、夜這いを掛けられたらどうしよう』とか・・・
色々考えて、想像して・・・無駄に一人で恐怖を味わっていた
ソラは最初・・・
レイブンの事を「天の助け」だと思い
殴られた前後の経緯から「無類の女好き」と判断し
軽くて、少し口は悪いが・・・良い人そうだと思ったのに
割合、酷い扱いを受け・・・思い直し
蛇女との遭遇から・・・
「無類の女好き」の仮面を被った「そっち系の人」かも、と
密かに、そう言う意味で買われたのかもしれない
とも、疑っていたのだ
実際の所、レイブンは・・・
男よりも女性の多い、この世界で生きて行く為に
「無類の女好き」の仮面を被ってない事はないが
それなりに女性が好きで、「そっち系」ではない
物事への諦めが早い性格なので、軽い性格に思えるが
本当に「軽い性格」と、言う訳でもない
責任感とか、普通に強い方なのだが・・・ソラには、そんな事
まだ全然、分からなかった。
風呂からあがり、警戒しながら脱衣所に行くと
ソラは、バスタオルの上に鎮座する
メタリックな犬の玩具と目があった様な気がした・・・
と、思ったら
『「ソ・ラ」だな?さっさと服着ろ!案内してやる!』
本当にそうだったらしい・・・
玩具が、ナチュラルに命令口調で喋り出す
全体を見ても、30cmくらいしかない大きさの犬の玩具の顔は
目の部分が小さな液晶画面になっていて
ドットで、怒った様な表情が映し出されていた。
想定外なナチュラルな言葉の発音に裸のまま硬直するソラ
ソラの足元をロボット掃除機が横切った
『おい、お前!「ソ・ラ」だろ?
早く体を拭いて服を着ろ!俺様はフル充電されてないんだ
電池が切れたらどうしてくれる!』
バスタオルから降り、タオルを前足で叩きながら
犬の玩具が、ソラを急かす。
ソラは興味を引かれて
濡れたままの手で、犬の玩具に手を伸ばした・・・が
思いっきり手を跳ねのけられた
『濡れた手で触るでないわ!俺様は精密機械だぞ!
壊れたらどうしてくれる!』
伸ばし弾かれた痛む手を、逆の手で押さえながらソラは呟く
『何時の時代設定っすか?わけわかんねぇ・・・』
『訳が分からんとは、こっちの台詞だ!
あぁ~もう!電池が後5分と持たないぞ!どうしてくれよう・・・
保存できなかったら、記憶から今のタイムラインが
消えてしまうではないか!
もういいからさっさと、服を着て俺様について来い』
2足歩行で、犬の玩具が歩き出し脱衣所を出て行った。
『ちょ・・・マジで置いて行くんすか!』
ソラは、慌てて殆ど濡れたまま服を着て
犬の玩具を必死で追いかける事となった。