048「47 食材の正体が見える料理は、ある意味で美味しくない」
「47 食材の正体が見える料理は、ある意味で美味しくない」
道の左右には、放牧用の草原が広がり
色々な人が、色々な物を食べながら歩く程に
牧場に入ってからの道程も…平坦ながらにひたすら長かった
『ソラ!牧場主の家まで後、小一時間掛かるから
オヤツでもを食うか?と言っても、師匠仕様で焼肉なんだが…』
『食うっす!』
牧場の入口にあった「屋台村で購入した」と、言う「紙袋」を
ソラは何も考えずに素直にレイブンから受け取り
紙袋の中身を見てソラは驚き、袋を荷台の床に落とし
悲鳴を上げる事となった。
『なんなんすかコレ?!』
『俺、焼肉って言わなかったか?
確か、羊の肉だから…ジンギスカンだったよな?』
レイブンは、セレスに確認を取る様にな仕草を見せ
紙袋を拾い、中身を確認してから
平然と「ジンギスカン」と言う名前の得体のしれない
ジンギスカンとは、明らかに違う「焼いた骨付き肉」を口にする
『ジンギスカンの屋台で買ったんだから
ジンギスカン以外の物ではない筈なんだが…何か問題あったか?
それと、レイ君!私、ジンギスカンも食べたいぞ』
セレスが白い翼をはためかせ、レイブンに催促して渡して貰う
『嘘だ!そんな物が羊な分けない!』と、ソラが叫んだ所で・・・
人間の手足が生えた羊と遭遇した。
『何っすかアレェ~!』
『羊!』ソラの疑問にセレスが即答する
『羊を見た事なかったのか?』
『いや、普通の羊なら見た事あるんっすけど…
アレは何か、別の生き物っすよね?足がおかしいっすよ』
レイブンの疑問をソラは否定して
レイブンの言う「人間の手足が生えた羊」も、ソラは否定した。
『アレは、明らかに羊の足じゃないっす!』ソラの指摘は・・・
『見た目で判断するのは良くないぞ?
アレは働いて税金を払う事を拒み、家畜になる事を選んだ羊だ
人間になりたい羊は、家畜やって無いから気を付けろ』
レイブンと、この世界のルールに説き伏せられる事になった
「それって…家畜と住人の境目が曖昧なんじゃないっすか?」
なぁ~んて疑問は、帰ってくる答えがちょっと怖くて
ソラ的に質問できないのだが
『自分の値段を払えない奴は、食糧になるしかないだろ?
家畜な羊は・・・
食料を与えられ、守り育てられ、食べられるのが仕事なんだよ
食べてあげなきゃ、可哀相だ』
セレスが口にする言葉が、想像以上に想像通りで…
ソラは、セレスとレイブンが食べている食べ物から目を反らす
『食べられる為に殺された物を食べずに捨てるのは良くないぞ?
って、偏食してる俺が言うのも何なんだがな…』
虫系を絶対に口にしないレイブンがまた
紙袋の中身の肉を口にする
レイブンが食べているそれは、どう見ても人の手に見えるのだが・・・
『人としての思考を持っていなくて、遺伝子的に人が10%以下なら
無条件で家畜に分類される事もあるんだぞ!ソラは、知っていたか?』
セレスの台詞にソラは自分を無理矢理、納得させた。
今まで食べてきた物の中に、そう言う生き物が混じっていた可能性は
高いだろうし…それ以前に・・・
「俺も食糧として、食べられる側になる可能性があったんっすよね」
ソラは改めて、この世界の住人の姿を確認する
今、一緒に旅をしている団体の中で
人間の姿をしているのは、ソラとレイブン…
細かい所を見なければ、桜花も入るかどうか?と、言う所だろう
黙り込んだソラを見てレイブンは・・・
『そう言う偏食がソラにある事は、憶えておこう
牧場主の家に着いてからそれを、そこの奴に教えておいてやるよ
俺のの序にだけど』と、言った。
その言葉通り、牧場主の屋敷に辿り着くと・・・
レイブンは、100%巨大な羊にしか見えない執事とやらに
『虫系を食卓に並べたら、君を殺して食べるからね』と、伝えた上で
ソラの偏食の事も伝える
『雄は偏食する生き物なんですかねぇ~』
黒い色の羊な執事は、レイブンの言葉に恐れる事無くニコニコ笑う
『そう言えば、此処の牧場主も偏食家だったな…』
執事と反対色のセレスも、執事と一緒になって笑っていた。
4本足で歩いていた羊な執事は『よいしょ~』と、立ち上り
背筋を伸ばして、2本足で歩き出す
『取敢えず、お部屋に案内しますねぇ~
ディナーの支度ができましたらお呼びしますぅ~
ドレスコードは有りませんので、そのままでお越し下さい~』
御屋敷の玄関を抜け、階段を上がり・・・
羊な執事に通された部屋は、屋敷の外観に反して何故か和風
畳の敷き詰められた大きめな部屋だった。
『土足厳禁ですからねぇ~』と、立ち去る羊な執事と
此処へ来る事になった、遠征隊のメンバーを見送り
『えっと…コレって男女一緒の部屋なんすかね?』
ソラは、一緒に通された女性陣
桜花・雛芥子・カリブーを見て、戸惑いを見せる
『安心すると良い…私を含め皆、ソラの事を雄と思ってないから』
セレスがソラの足元で、ソラの脹脛をポンポンっと軽く叩き
『この女性陣に手を出せる兵は流石に居ないだろ?』
レイブンが「お前、大丈夫か?」と、言わんばかりの目でソラを見た。
のだが・・・レイブンはその後、ソラに「ごめん」と、謝る
相部屋のメンバーの自由奔放さの為に、ソラはディナーの時間まで
頬を染め続け、壁に向かって立ち尽くす事になっていたのだ
『そうか、それで気にしてたのか…ソラ?マジで大丈夫か?
裸女が苦手だったとは、盲点だったよ』
レイブンは、全裸で寛ぐ女性陣を横目にソラに付き添い
何となく横に並んで、壁際で隠し持っていた武器の手入れをしていた。
幾らかの時間が経過し、遠くから鐘の音が聞こえて来る頃
羊な執事が迎えに来る
レイブンは、セレスを肩に掛けた鞄の上に乗せ
無駄に疲れ果てたソラを引き摺り執事を追い越して
食堂に行き、ソラを自分の横の席に座らせる事にした。
長テーブルの上座に牧場主である
雛芥子を大人っぽくして牛の要素を半減させた美人が既に座っていた
『雷さん、コイツ「ソラ」ね!』
レイブンは、ソラを席に付かせながら牧場主に紹介し
牧場主に向かって、ソラに頭を下げさせる
『あらやだ珍しい!而も、見た事の無いメンズちゃんね
私の御膝に座らせてあげましょうか?』
牧場主は魅惑的な巨乳を揺らし、括れた腰をくねらせ
片乳を片腕と一緒にテーブルの上に乗せて、乗り出す様にソラを見る
ソラは、さっきの裸女達からのダメージから抜け出せず
更に顔を赤らめていた。
皆が集合し、ディナーが始まると・・・
ソラの初心な態度に殆どの女性陣が浮足立ち、皆がソラを構うので
その分だけレイブンは、ゆっくりと食事を楽しむ事が出来た
牧場主の雷は、セレスとレイブンを挟んだ先のソラに
『特別な料理を振る舞ってあげなさい』と、言って
子牛の丸焼を用意させる
勿論、案の定・・・ソラの顔が強張るのだった。
「切り身とか肉の塊になって、原形留めて無かったら平気で食う癖に
原形分かると食えないのか…不便な生き物だな」
レイブンは一旦料理を下げさせて
切り分けた状態で、ソラには配膳してやる様に指示を出す
レイブンは・・・
「それにしても…料理の見た目って、大事かもしれないな」と
今まで自分で料理をしていて、気に留めていなかった事に気付いた
外側、羽を毟っただけの「鳥の丸焼」を見ながら…
それを食べるセレスを見て、レイブンは自ずとそこから視線をそらす
「セレスが平気でも、これはちょっと…見ていて美味しくないな」
ソラの様に食べるのに躊躇する訳ではないが・・・
食欲が減退している自分に気付き、ソラ程ではないが
「自分も意外と繊細な部分があるのではないか?」と、思うのだった。
学生時代・・・
客が来た時に、丸焼を振舞う文化圏の人の家に遊びに行った事がありまして
丸焼に対する耐性が無い家庭に育った私は正直、ホント!マジで!!
食事が喉を通らなかったんですよね。




