038「37 悪化していく事態」
「37 悪化していく事態」
余りにも派手にソラが、慌てふためくので
『居場所も分からないのに慌てても一緒だろ?』と
レイブンとセレス、カリブーも一緒になって突っ込みを入れたのだが
ソラは、桜花の事を本気で心配して言っているらしく
ソラは性格的に、聞く耳を持っていない様子だった
カリブーは「騒ぐ事で起きる危険の可能性」の事を考えて
少し焦った様子で、ソラを制止しようとしたのだが
ソラの耳に入る事は無く、ソラは無駄に走り回り・・・
「おうかさぁ~ん」と、桜花の名前を叫ぶように呼んで
周囲にいた、蜂達や腹を空かせ、獲物を探す生き物達の
関心を一気に引いてくれる。
ソラの大声の御蔭で、森の空気がざわめき出した
大きな蜂達に獲物を奪われ、腹を空かせた猛獣達が
ソラの声、獲物の気配に導かれて集まり
集まった為に、猛獣達が上空から集まってきた蜂達の目に留まる
目も耳も良いレイブンは、蜂の羽音と獣の息遣いで
その事に真っ先に気付き、セレスとカリブーにその事を告げ
一先ず、ソラの首根っこを掴み・・・
ソラを乱雑に捕獲して、カリブーの背中に跳び乗った。
乱暴に扱われたソラの小さな悲鳴が
腹を空かせた弱い物から狙う習性のある動物達の関心を
更に強く引いてくれる
ソラの首の付近の服から手を放し
『落とされたくなきゃ、暴れるなよ』と、レイブンが
今度は、ソラの腰のベルト部分を掴んで
カリブーのトナカイ部分の背中にソラを落とさない為に押さえ付け
ソラを怒鳴り付ける
抵抗する間もなく、一瞬の内にカリブーに乗せられたソラは
呆気にとられ・・・そして、遅れて驚き
『ちょっとまって欲しいっす!
早く桜花さん探さなきゃ不味いっすよ!』と、怒鳴り返す。
そんな中、何処からともなく咆哮が轟いた
違う場所で、悲鳴の様な声も響いて聞こえてき始める
そしてそれより少しだけ早く、カリブーは走り出していた・・・
カリブーが居た場所には今、黒い獣が躍り出てきて
取り逃がした獲物をじっと見詰め、追掛ける態勢に入り走り出す
『追掛けて来る気、らしいぞ』
セレスがそれに気付いて、皆に警戒を強める様に促した。
この時・・・ソラはまだ、黒い獣の存在に気付かなかった
ソラには「何が追掛けて来るのか?」が、分からなかった
カリブーの背中にうつ伏せで乗せられたソラの視界の端に
虎の姿が写り込むまでは・・・
一瞬、目にした動物の存在がそこにある事に驚き
ソラが通り過ぎた光景をもう一度確認しようと、後ろを見ると
黄色い虎と黒い狼の姿が、ソラの瞳に映し出される事となる
続いて、他の種類の猛獣の姿と大きな蜂の死闘が映り
ソラは肝を冷やし、冷や汗をかきながら無言で体を硬直させた。
追われる事に気付きつつも・・・
足場の悪い、蜂が上空から特攻を仕掛けて来れない様な
木々が生い茂る場所を、剣を振るいながらカリブーが疾走する
ソラは恐ろしさから身を縮め、頭を両手両腕で庇い
両手の甲と腕、足に通り過ぎる木々で擦り傷を作り・・・
小さく呻きながら耐えた
レイブンはソラを落とさない様に掴んだ手の反対側の空いた手で
セレスを潰さない様に優しく抱き抱え
揺れるカリブーのトナカイな背中の上で、器用にバランスを保ちながら
鋭い眼差しで、カリブーが直走る周囲の様子を窺っていた。
暫く走り続け、後ろに気を配っていたセレスが安堵の溜息を洩らす
『カリブー、もう大丈夫そうだぞ』
『あぁ~疲れたわぁ~・・・』
セレスに言われ、カリブーが息を切らしながら走る速度を落とし始める
逃げた結果、辿り着いた森の入口付近で
レイブンはソラを押さえ付けていた手を放し、背筋を伸ばす
ソラが支えを無くして、足から落ちる
それを気にする様子も無く、ゆっくり立ち止まったカリブーから
レイブンが降りて、抱締めていたセレスを自由に動ける様にしたが
『レイ君、強く抱き過ぎ・・・翼が痺れたではないか!』と
セレスはレイブンの腕を爪で傷付けない様に体を預け
そのまま大人しく抱かれていた。
落ち、落とされ・・・少し離れた場所に落ちていたソラが
あの場所を逃げ出す前に目にした光景と、そうなった理由を思い出し
『すんません・・・俺、考えなしで・・・』と
消え入りそうな声で話し掛けてくる
カリブーは、ソラが反省している様子なので
引き返し『皆、無事だったんだから大丈夫よ』と
ソラに手を差し伸べ立たせたが・・・レイブンは、動く気配すら見せない
ソラに対し「怒っているのだろうか?」と
セレスが顔を上げ、レイブンの様子を見たが
レイブンは、難しい顔をして何やら考え込んでいる様子だった。
ソラが何か言おうと、伝えようと・・・
不安そうな表情で戸惑いを見せながら、レイブンに近付いて来た
『気にすんな!レイ君は他の事で忙しい・・・今、話し掛けて
思考の邪魔をしたら、冗談抜きで怒られるぞ』
セレスは白い翼で、「あっちに行け」とソラを追い払い
レイブンの様子を黙って見守る。
暫くすると『師匠、ありがとう』と、レイブンはセレスだけに微笑み
ソラとカリブーいる方向へ顔を向け
『カリブー、地図を見せてくれ!桜花を迎えに行く』と宣言する
『マジッすか!桜花さん、何処にいたんすか?』
ソラは、先程の失敗を忘れて大声を出し
『今、通った場所にいたの?気付かなかったわ』と
地図を渡しながらカリブーも驚いていた。
セレスは、レイブンが桜花の居場所を見付けた事を
自分の功績であるかのように喜んだのだが・・・
『流石、私のレイ君だ!あの状況で桜花の居場所を見付けるなんて!
凄いだろ?レイ君にしかできない・・・』
カリブーの出した地図上、レイブンが指で指示した地図の場所を見て
黙り込んで、白い翼で自分の嘴や顎に触れ考え込む
『本当に・・・そこなの?』
カリブーが、セレスと同じ様な険しい表情でレイブンを見る
『どうかしたんっすか?』
変化した、その場の空気にソラが地図を覗き込んだ。
『無いわぁ~・・・そこには、行きたくないわぁ~』
地図を見て、場所が分かっているらしいカリブーが
眉間に皺を寄せて嫌そうな顔をしている
『そこ、何かあるんっすか?』
不思議そうにソラが質問すると・・・
『そこな・・・さっき居た場所の近くなんだよ』と
セレスがレイブンの腕の中から
伸ばした翼の先で、ソラの肩をポンっと叩く
『え?でも、俺が呼んでも出て来てくれなかったじゃないっすか!
そこじゃ無くないっすか?』
ソラの意見にレイブンが・・・
『捕食者が居る場所で、何処から聞こえてきてるか分からない様な
声に対して、返事するヤツは居ねぇ~よ
そんな状態で呼び声に答えて声を出したら襲われるぞ』と、言う
『人間の気配がしたら、動物って逃げるもんじゃないんっすか?』
『自分より相手が強いって思ってる奴なら、逃げるかもだけど
普通、逃げないだろ・・・この辺の動物に、そんな風習は無いと思うぞ』
「動物に風習ってあるんすか?」と、レイブンの回答に疑問を持ちながら
ソラは、ソラの声で寄ってきたらしき現実を思い出して納得する
『それにしても・・・
今、行ったら・・・確実に、蜂と猛獣両方に襲われる場所だな
ソラ、お前・・・どの程度、頑張れる?』
レイブンに言われ、ソラは考え無しに
『俺の所為で事態が悪化したんっすから出来る限り頑張るっす!』と
どうなるかも、何をさせられるかも分からないまま返答したのであった。
「熊避け鈴」を持っていても
熊の種類によっては、逆効果になるって知ってました?




