029「28 ソラの願い」
「28 ソラの願い」
ソラが寝落ちする前・・・
精悍さを強調した犬のロボットに誤って「ナナシ」と名付け
御客様に虐められて、酷い服装になった事をレイブンに心配され
何らかの理由で、レイブンが席を外した後
ハイガシラに取り分け与えられた料理を律儀に食べ続けながら
ソラは色々、今後の事を考えていた。
「週1回、1日続く夜が来る」と、言うのが本当なら・・・
ソラが前に生きていた場所の時間の流れと、この世界が
同じ時の流れ方をしているとすれば・・・
この世界で経った時間が、前いた場所でも経過しているのならば・・・
ソラが此処へ来て、1週間以上は過ぎているから
ソラが自宅に帰らない状態が、1週間は続いている事にもなる。
ソラの産みの親「母親」は放任主義で・・・
小学生の頃、夏休みの初日からソラが一人で自転車旅行に出掛けて
夏休みが終り、新学期に入って数日経つまで
ソラの事を心配しなかった程
典型的なネグレクトで・・・
強いて言えば「育児放棄」の権化
「育児の意味」を知っているのかも心配になる種類の女性なので
連休中でもない普通の日に「義務教育の期間中」のソラが
1週間以上の間、不在状態で学校に行っていなくても
例え・・・その為に学校から電話が来ても
恋人のいる状態で、恋人と喧嘩していない限り
自分が幸せならば・・・
そんな事を気にも留めないであろう事をソラは知っていた。
「確か・・・まだ、あの時は母さん失業してなかったすよね?
貯金も確かしていた筈っすし
今までの傾向から考えて、1~2カ月は帰っても邪魔にされるっすね」
ソラは自分の母親に恋人がいる間・・・
仕事が手に就かなくなって、必ずと言っていい程に失業する事や
ソラの母親の貯金が無くなると・・・
金目当てな恋人との仲が、当然の如くマンネリ化し
ソラの母親は、疑心暗鬼に見舞われ・・・と、言っても
大概に疑心暗鬼では無くて、恋人が次の獲物の物色を始めて
乗り換える為に浮気を繰り返しているだけなのだが・・・
最終的に、ソラの母親が自分で信頼関係を壊す様な事して
「金の切れ目が縁の切れ目」と言うかのように絶対に
間違い無く「ソラの母親は男に捨てられる」
その前から、拒食症ぎみになるが
ソラの言う事だけではなく、周囲の言う事も聴かない
そんなこんなで、別れたりした後は
『どうしてお前は、私の幸せをいっつも邪魔するの?
なんで、あんたなんかを産んだんだろう・・・
疫病神!もう、2度と帰って来ないで!』
と、言う口癖を言ったその日の夕方にでも・・・
誇張無しで、舌の根も乾かぬうちに
『ソラが帰って来ない!』って、言って怒り
愚痴を聞かせる為にソラを捜し回る事をソラは知っていた。
此処へ迷い込んだ初日から頭の片隅に
「何処かの時点で、帰る方法見付けて帰ってあげなきゃ駄目っすよね」
と、心の中で考えてはいるのだが・・・
ソラは、此処へ来てからのこの世界での激動なる日常を思い出し
何処に連れ回されようとも
この世界の皆さん曰くの「ちょっとした身の危険」・・・
ソラにとっての未曾有の恐怖に遭遇しようとも
「安定した精神的な居場所があるって良いんすよねぇ~
序に、この家の方には一人部屋まで支給されてるんすよなぁ~
更に、御飯も食べさせて貰えるなんてちょっぴり捨て難いんすよねぇ~」
と、微かに感じている個人的な幸せを思い出していた
「母さんに男がいる間だけ、此処で過ごせて
失恋する度に帰れるようになれば、最高っすよねぇ・・・
そういう方向で、帰れる方法を探して見るっすかね」
なんて、事も考える様になっていっていた。
そこへ、キッチンへ向かうレイブンがリビングを通りすがり
そこまで一緒に来た、白い浴衣を着る白い男がリビングへ残り
フィンが大喜びで『夢ちゃんいらっしゃぁ~い』と、抱き付き
ハイガシラとセレスと蒙に『夢路、よく来たな』と大歓迎される
ソラは、蒙の娘「雛芥子」から
『レ~君の親代わりのハイガシラさんと
レ~君家の近所に住んでる夢路さんなら、何でも知ってるわよ』と
訊いていた事を思い出して、意を決して相談を持ち掛けた
『俺、元いた世界に帰りたいんっすけど・・・
こっちと行き来する方法って、無いんすかね?』
ハイガシラと蒙と夢路は・・・
ソラの元いた世界の話を親身に聴き
特にハイガシラは、真剣にソラにソラが居た世界の事を訊いてきて
時々、ハイガシラと夢路は訳知り顔で顔を見合わせてもいた
ソラの話を初日の頃から理解しないプリムラは、今回も・・・
何処からともなく溜息を零し
『また、訳の分からない事言ってる・・・
ハイガシラ様、蒙様、夢路様も・・・ソラの言う事は間違いだらけです
そんな世界の情報は存在しません』と、話の腰を折り
蒙は『俺には専門外だな』と、言って話題から離脱し
今回も、いつの間にか話の途中で白い鴉のセレスは姿を消していた。
機械であるプリムラより、物知りなハイガシラと夢路は・・・
『やっぱり、レイ君と一緒の世界から来たみたいだな』と、同時に零し
「帰らなければイケナイ理由」のあるソラの
『母親が心配だから』と、言う「ソラの願い」を・・・
ハイガシラが、その場で夢路に交渉して
『依頼は有料、これからの働き次第で・・・』と、話を付けてくれた
どうやら、帰る方法を夢路が知っているらしく
帰る方法が、無い事は無いらしい
『そうそう、プリムラが作った住民票に記載されいたので
ソラ君に住民としての仕事を持って来たんですよ
それと、ハイガシラの仕事をレイ君に引き継いで貰う事が決定しました
レイ君では、大きな物を持ち上げながらの修理はできないので
ハイガシラに、街の復興を御願いしようと思っているんです』
夢路はそう言ってから、ハイガシラに何やら耳打ちして
ニヤリと笑い・・・
蒙は『交渉が成立したみたいだな、俺の出番は無かったようだ』と
フィンは『パパちゃんの遠征が終了するの嬉しいな』と
先に知っていた様子で、蒙とフィンは満足気であった。
『で、ソラ君の仕事の事なんだけど・・・
今までやって貰ってた臨時の仕事と、遠征中の様子
今日のクリーニング屋でのモニタリングの結果から
ハイガシラの仕事を引き継いだ、レイ君の付き添いに決定しました』
夢路の言葉にソラは・・・
モニターで見られていた事にちょっと驚きつつ
「見てたなら、助けてくれたってよくないっすか?」と、思い
クリーニング屋での仕事を思い出して・・・
「何を見て、何処を見て付き添いに決定したんすか?」と
ちょっと不安になる。
その事に対して、ソラが何か言う前に夢路は・・・
『レイ君の仕事を手伝えば
帰る為のヒントも見付かるかもしれませんよ?
遠征の仕事で、地域の偉い人に会う事になりますし
この世界の偉い人は、金持ちな口先だけの御山の大将ではなくて
実働的な統治者か、知識人なんです
ソラ君が、偉い人に積極的に話し掛けて情報を集めれば
良い情報が集められる筈ですよ。
それに、私が知る方法は思った場所に確実に帰れる保障は有りません
安全性と確実性を求めてソラが頑張った方が良いと思いますよ?
それに、自力で帰る方法を見付けて帰ってきたら・・・
情報の質によっては、私の知る手段と情報を足して
簡単に「行き来できる方法」も発見できるかもしれません
どうします?この仕事、欲しくありませんか?
此処での仕事をこなして料金を集めても
安全性と確実性は買えませんし、帰りたい場所に帰れる保障
残念ながら、ありませんよ?』
ソラは少し考えて、自分がする仕事の内容をはっきり訊かないまま
仕事を受ける事に承諾した。
『さてと、セレスは承諾済みで・・・
ナナシには、ハイガシラに命令して貰うとして
後は土壇場で「やっぱ、嫌だ!」って、言いそうな
レイ君に、ちゃんと行く気になって貰うだけですね』
『あれぇ~?パパちゃんの仕事を羨ましがってたのに
レ~君、乗り気じゃないの?』
『そうなんですよ、ソラを連れてくのに難色示してるんです・・・
ソラが弱くて足手纏いになりそうだからでしょうね』
『なぁ~んだ、それくらいの事なら大丈夫だよ!
パパちゃんとセレスちゃんが強くしてくれるから・・・ね?
ソラは、頑張だよ』
夢路の不安をフィンがある意味解決して
この後、御供の話へと移行していくのであった。
「ネグレクト=育児放棄」は「犯罪」です。
子供が「育児放棄されたい年齢」に達していても
二十歳になるまで未成年で・・・
更に、18歳未満は「大人の遊び」に参加する事も禁止される程に
「子供」として、大人が「管理・監視」する義務があります。
勿論、子供が勝手に大人の遊びに参加しても・・・
大人が、子供だと知らないで参加させても「犯罪」です。
良く考えたら・・・
ストーリー上に未遂だけど、そう言う文面がちらほら
これからも続きますが・・・
書いてても大丈夫な「安全ライン上」に留めた文章を心掛けて
物語を綴っていきます。