表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/69

022「21 喫茶トワイライト」

「21 喫茶きっさトワイライト」


レイブンは、自宅「フィンレイソンの機械の修理屋さん」の

道をはさんだかいにある「トワイライト」と言う名の喫茶店


屋台やたい立ちならぶフードコートと、その後ろに雑木林ぞうきばやしと神社を隣接りんせつした

黒い瓦屋根かわらやねと大きな硝子がらすのショーウインドーが不思議ふしぎ調和ちょうわを生み出す

不可思議ふかしぎ雰囲気ふんいきの店へと行くために、来た道をもどる。


道を戻りながら、レイブンは・・・ふと、気付きつぶや

『俺、もしかしたら・・・単独行動するのって初めてかも』


今回、何時いつそばに居る・・・

レイブンの背中でかばんに乗り、荷物になっているからすのセレスタイトが

「暗いの嫌い」と留守番していて、レイブンの背中の荷物は軽かった

レイブンは背中に、心許こころもとなさを初めて感じた気がした。


ちなみに、セレスが言うほど「世界が暗くなった」と言うわけではない

「地底の空が何時もより暗い」なんて事も無い

今日は、周囲が停電ていでんしている為に

商店からの光源が無く、道の上にかげが生まれているだけだ


そんな感じの普段ふだん、歩きれた・・・

でも、何時もより薄暗い道を一人で歩き

レイブンは色々な意味で、少しさみしく感じる事になった

『無駄に発光してる店の看板かんばんにも、沢山たくさんの意味と役割があったんだな』

物心ついた時には、何時も一緒にいたセレスがめずらしく不在な為か

思いの外、感慨深かんがいぶかい思いがレイブンの心をぎる。


道を進み、明るい場所に出た

それぞれ発電機を使っている為、自宅と向かいの喫茶店だけは

看板の電気も、店からこぼれる電燈でんとうの光も健在だった


レイブンは、向かい合うショーウインドウからの光の中

明るいセピア色をした喫茶店の店内の方をのぞく・・・

喫茶店は、何時もより混雑こんざつしている様だった。


この混雑の原因げんいんは、自家発電機を持っていない店舗てんぽや屋台が多く

商店街の中は勿論もちろんの事、フードコートにある屋台も

ほとんどが休業している為であろう・・・


レイブンは書庫にこっそり忍び込み

旅客機りょかっき」と書かれたたなから数冊すうさつのファイルを持ちだし・・・


「今、相談を持ち込んで良い物か?」とまよいながらも

中からコーヒーの香りただよう、喫茶店の扉に手を伸ばした。


レイブンが木製のステンドグラスをはめ込んだ扉を押し開けると

扉に仕掛けられたドアベル・・・

猫モチーフの飾りについている猫の首の鈴がリリィ~ンと鳴響なりひび

店に客が入ってきた事を店員に知らせる


店内の奥、調理場付近から

不思議の国のアリスが来ている様な水色のエプロンドレスを身にまと

色素の薄い髪と目をした幼女が走り出て来た。


レイブンを見付けると、レイブンの半分の身長も無い幼女は

『レイおにぃ~ちゃん!御帰りなさい!いらっしゃいませ!』

本当にうれしそうな顔をして、レイブンの太ももあたりに抱き付いた


レイブンは・・・

「しまった!帰ったら一番に挨拶あいさつに来るって約束したのを忘れてた」

と、思いながら・・・ちょっと、バツの悪そうな表情で

トワイライトの唯一ゆいいつの生き物な店員「イロハ」の

猫耳カチューシャが付いた頭を優しくでた。


スーツや燕尾服えんびふくを着たうさぎや鳥、犬や猫の獣人達で混雑する店内

通路の存在する場所の部分だけの天井をすぅ~っと移動する

蜘蛛くもみたいな配膳はいぜんロボをながめながら・・・


足先に1個づつタイヤの付いた

シャーっと動き回る、アメンボみたいな御用聞ごようききのロボの

邪魔じゃまにならないかを気にしながら・・・


レイブンは「約束を忘れていた」と言う、ちょっとした罪悪感から

イロハに対して、しばらくされるがままになっていた。


顔見知りの常連じょうれん客達が、そんな光景を見て・・・

何か言いたげな雰囲気を出して、イロハを見ている

女達のいじめは、陰湿いんしつで始末が悪い・・・

レイブンは、この後のイロハが客から受ける嫌がらせを危惧きぐして

深く溜息を


続けるのは得策とくさくとは言えない状態じょうたいに、終止符を打つ為

『今日、夢路ゆめじさんは?』と、レイブンがイロハに店主の事を聞くと

レイブンが思った通り、イロハは・・・

ほほふくらませね、失望感をあらわにした表情を見せた


『レイおにぃ~ちゃん・・・

私に会いに来てくれたのでは、ないのですね・・・』

イロハの残念そうな態度たいどに、客達が何故なぜだか嬉しそうな表情を見せた


「何でこんな事が嬉しいんだろう、可哀相かわいそうだとは思えないのか?

これだから、女って生き物は気持ちが悪いんだ」

レイブンは、店内の客達の表情を盗み見て

此処ここに居る事自体を苦痛に感じた。


そして今、イロハが可哀相だからと

こんな状況でレイブンが、イロハを特別扱いで可愛かわいがれば・・・


自分で身をまもれないイロハは

加減かげんの分からないおろか者の手で、精神的&肉体的に甚振いたぶられ

精神疾患せいしんしっかんわずらわされるか・・・

暴行ぼうこうを受け、大怪我おおけがさせられたり

運が悪ければ、殺されてしまう可能性もあるだろう


しかも、前例が何例もあるので笑えないし・・・

この予想にうたが余地よちはないだろう事をレイブンは知っている

何せ、イロハの前に存在していた

この店で働くむすめさん達は全て、ひどい状況で命を落としたのだから・・・


レイブンは、打開策だかいさく思案しあんしながら

『イロハに会いに来たと言えない事も無いよ

フィンとセレスに、イロハの様子を見に来るようにたのまれてるからね』

「仕方なく来た感」を、客に対して強調しておいた。


「ホント・・・混雑している時に来るもんじゃねぇ~な」

レイブンは、混雑するトワイライトに来た事を後悔こうかいしながら

このままではイロハに危険がおよぶので・・・

『店の奥にある秘密の雑貨屋から、「夢路」を連れて来て』と

イロハに言って、イロハを奥に行かせてから


虐めを助長じょちょうさせそうな、意地の悪い種類の常連客を中心に

数人をえらんで、したしげに声を掛け

板に付いた営業スマイルで挨拶あいさつをし・・・女達の悪意を拡散かくさんさせた。


この店の店主は、喫茶店の方によっぽどの事が無い限り顔を出さない

その上、来たくないのか呼んでも中々来ない・・・


レイブンが手持無沙汰てもちぶさたにしていると・・・

客が冗談じょうだんじりに、レイブンをオーダーし始めた

最初に客に話し掛けたのは、レイブンだったのだが

いつの間にか、客の方が積極的せっきょくてきにレイブンと話したがり始め

レイブンは仕方無しに、店の御客様達の接客をする事になった


余談だが、御用聞きロボは・・・

向かいの店で今も店番しているであろうプリムラシネンシスにあやつられ

この店に無い商品を・・・

商店街の売り上げをアップさせる為に

他店舗より商品を引取って売り込んでいる様だった。


レイブンは、プリムラの便乗商売びんじょうしょうばいに気付き

心の中で悪態あくたいを吐きながら、最高の笑顔と甘い台詞せりふ駆使くし

かみれ、背中やかたに触れ、時には横に座りこしに手を回し・・・

『売り上げに貢献こうけんしてくれてありがとう、助かるよ』

なぁ~んて事を言いながら


御用聞きロボの後ろで糸を引くプリムラの為に

自分を高額商品の購入と引き換えにオーダーした客の為に・・・

オーダーを受けたテーブルに10分程度参上して

他愛無たあいない会話をし、質の良い高級品を御馳走ごちそうになり

御機嫌取ごきげんとりをして回る事になってしまっていた。


トワイライトの店主「夢路・ツァイトロース」が

店に顔を出したころには・・・

各テーブル、プレゼント包装ほうそうされた商品の山と

無駄むだにオーダーされた高額メニューの数々が並び


店の外には、インターネットを通じてうわさを聞き付けた

近所、近隣きんりんの街の住人達までもが混ざり並ぶ・・・


この世界では、どの種の「おす」も絶滅危惧ぜつめつきぐ状態で

「男」が貴重きちょうな存在になっているのだが、しかし・・・

『夢路、ごめん・・・俺もこんな事になるとは思わなかったんだ』

レイブンは夢路の姿を見て、疲れの見え隠れする笑顔を見せる。


夢路はイロハ同様、調理場付近からレイブンの目線の先にあらわれた


夢路に気付いた客から、次々と歓声が上がっている

店の外に並ぶ客も、夢路を一目ひとめ見ようと

ショーウインドウと入り口に殺到さっとうし始めている。


それにしても夢路は・・・

店内の照明の色を無視するかの様に、相変あいかわらず白かった


時計草がえがかれた白っぽい生地きじ浴衣ゆかたが・・・

着崩された浴衣から見え隠れする胸元の白い肌が・・・

夢路の白くて長い髪が・・・その場を支配していく


夢路は大きく溜息を吐いた

こまりましたね・・・

この店は、ホストクラブとかではないんですよ

そんな許可きょか取って無いので

風俗営業法ふうぞくえいぎょうほうに引っ掛かってしまうではありませんか』

冷静れいせいな言葉一つで、その場に居る者達の空気も白くしてくれた。

時々、居酒屋とかガールズバーとかで・・・

酔った客が店員を捕まえて

「その場でお酌させようとしている」なんて事があるが

許可を取ってなくてできない事を理解してあげて欲しい


配膳するだけに許可は不要だが、それ以上のサービスをする場合

キャバクラやホストクラブ、俗に言う風俗店に必要な

許可が必要になってくるのです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ