021「20 夜明けの日の御帰宅後」
「20 夜明けの日の御帰宅後」
地底の空に灯りが灯り、地底の世界に日常に必要な光りを当てる
遠征の仕事を終え、帰宅して・・・
レイブンにとっての日常が戻ってきていた。
そうそう、先週から家の中に
ちょっとばかり、手助けしてヤラナケレバならない
レイブンが引取って来て・・・
レイブンが自分の責任で、護ってやらなければイケナイ
13~15歳くらいの「ソラ」と言う少年が増えている
が、しかし・・・
それなりにソラが役に立つ為
レイブンのやる仕事はあまり変わらない処か、少し減っていて
レイブンの自由な時間は、少し増えていた。
だから、家主「フィン」の夫「ハイガシラ」が
ソラを微妙な表情で見るが
レイブンは、ソラが家族として増えた事に関して
個人的に喜ばしく思っている
例え「ソラがフィンに手を出さないか」を心配して
ハイガシラが、自分の仕事を放棄して家に居座っていようとも・・・
因みに、レイブンの自由にできる時間が増えた理由については
レイブンが、自分的に飽きてた仕事・・・
遠征中、フル稼働できなかったクリーニングサービス事業
今まで、片手間にやっていた仕事を
ソラの仕事として、全面的に押し付ける事に成功したからである。
押し付けられたソラはと、言うと・・・
仕事を貰って喜んでいる様子で
先程も、緊急の依頼以外の仕事が溜まっているクリーニング店で
ソラは、新しい玩具を与えられた子供の様に
瞳を輝かせて洗濯をする大小様々な機械達を見詰めていた。
ソラの目の前では、溜った洗濯物を全自動洗濯機が洗い軽く乾かし
洗ったばかりの上に着る服は、上半身だけの人形の体に着せられ
挟む様にアイロンを掛けられ
細かい場所は、暖かい空気で膨らまし乾かされ皺を伸ばされている
下に穿く服も似たような感じで乾かし、皺を伸ばされていた
そして最終、乾き皺を伸ばされた服達は人形から引き抜かれ
金属のハンガーに掛けるか・・・
物によっては、機械でガシャンガシャンと折り畳まれ
書道に使う半紙の様な紙の袋に詰められ、ソラが機械達を見守る場所
受付カウンターまでリズミカルに送られて来ていた。
その間に掛かる手間は全て、小さなロボ達が忙しなく動き回り
全部やってくれるので、本当に見ているだけの仕事である
但し、時々何かの拍子に転倒するロボに関しては・・・
ブザーが鳴ったら、画面に何処にいるどの子が転倒したか表示され
見に行って、壊れていないかとかの面倒をみてやらなければイケナイ
そんな、レイブンにとって暇で退屈な仕事だったのだが・・・
『面白いっすねこれ!ずっと見ていても飽きないっすよ』
と、本気で喜ぶソラ
レイブンは『それは良かった、後は頼んだよ』と、言いつつ
内心「それは今の内だけだと思うがな・・・」
なぁ~んて事を思っていた・・・
勿論、こんな事思っていたと言う事は誰にも言う訳ではないが
ソラには内緒だったりする。
レイブンは、肩の荷が下りたので早速
地下の洗濯工場にソラを残し、立ち去る事にした
レイブンがやるべき仕事、やりたい仕事は別にあるのだ・・・
それは夜明けと共に現れる、不法投棄のゴミの山の処理
実の所、これがこの街の一番厄介な仕事で
この街にある家の1軒に付き1人、2週に1回強制で参加させられる
「ボランティア活動」だったりするのだが・・・
レイブンは、これが好きで・・・寧ろ、趣味で・・・楽しくて・・・
「掘り出し物を得る」と言う、下心有り気で
毎週、必ず参加していたりする。
今回は、遠征の仕事に出ていた為に出遅れていて
更に、前回よりゴミの数は少なく
掘り出し物は、そんなに無さそうな感じなのだが・・・
街が心配なのと、自由な時間ができた事もあり参加する事にした
心配なのは・・・
24時間以上経っても、近隣の道やらライフラインの復旧が
密かに進んでいないと言う事
場所によっては、全く戻ってきていない所も少なくない
電気工を生業とするフィンレイソンの家の様に
自家発電機能・浄水機能を備えている家は良いのだが・・・
そうでない家や商店・工場等は、機能を停止している。
取敢えず・・・
街が「どんな状態になっているのか?」を説明するならば
一瞬だけ、今から12時間程前に遡ろう
取り替えたLED球と、電気系統の発する熱量
それを冷やす冷却水のチェック終え
天井を支える柱から戻って、街に帰って来た時の事
柱の上からは、都会化したレイブン達が住む街並みは遠く
工場の煙や何かで霞んで見えなかったのだが・・・
『何故、こんな所にコンコルドが立てて置いてあるんっすかぁ~!』
と、叫んだソラの気持ちが、分からなくともない状況が
そこには存在していた・・・
正直、レイブンも初めて実物を見て驚いていた。
所で、貴方は知っているだろうか?
昔、「コンコルド」と言う名前の尖った形をした
「速い旅客機」が存在していた・・・と、言う事を
密かに飛行機が好きなソラは、実物を見た事は無かったが
小さい頃から飛行機の本が好きだったので知っていた
レイブンも・・・
小さい頃、乗り物の本が好きで
飛行機の本や図鑑を愛読していた為に知っていた。
因みに、この世界に本屋は無い・・・
不法投棄されたゴミの中から発掘された珍しい本が
収集家の手によって集められていると言った状態だ
レイブンは偶々、フィンの隣の家「ハイガシラの家の書庫」で
電子的な形から紙的な形に至るまで色々な書籍が集められていた為
歴代アルバイトの司書達を賄賂で操り、誑し込んで
ハイガシラの本棚から勝手に本を持ち出して
自分の好きな本を自由に見ていた。
と、言う事で・・・
大きな機体を初めて見た者が多い中、更に珍しい
地面から「縦に伸びる大きな飛行機」とやらを見たのは
皆が皆、この街の住人全てが生まれて初めての事だったのだ
現在に戻り・・・
『あっ・・・こっちにあるのはジャンボジェットかな?』
レイブンは現場の前に立ち止まり、飛行機を見上げた
ジャンボジェットは翼も地面にめり込ませ
斜めに地面から生えている
翼の無いロケットなら、縦置きになっている模型を見た事があったが
飛行機と言う乗り物が、縦置きで・・・
こんな風に存在してなかった印象を受けたのは、気のせいか?
いや・・・絶対に、操縦席を天井に向け地面から生えている
そんなモノではない気がする
きっと、間違いではない筈と・・・レイブンは心の中で思うのだが
この世界で、それが正解か否か判断し
レイブンに対してその答えを答えてくれる者はいなかった。
レイブンと同じく
飛行機の機体名まで知っていたソラは・・・と、言うと
『俺に・・・この世界での常識、尋ねないで欲しいっす』って
何があったのか分からないが・・・
何かの原因でトラウマを抱えてしまった様子で
この事から目を背け、この事に関してだけ現実逃避をしてくれる
遠征から帰って直ぐ、あちこち連れ回して感想を求めたのだが
この事に関しては、どうもソラは役に立ちそうになかった。
レイブンは、この事に関してのソラに見切りをつけて
飛行機が生えている場所を確認する
「飛行機が埋まっている部分」その場所にあるのは道路だ・・・
この街の道路の下は、空洞で・・・
電線・ガス管・水道管・下水道・・・色々な物が埋まっている
多分、飛行機の重みで道路が崩れて
空洞部分に、飛行機が落ち込んでしまったのだろう・・・
今後、飛行機を撤去するか否か・・・
切れた配線、各種管や下水の水路の復旧をどうするかが問題だろう
と、レイブンは思うのだが・・・
思っているだけではどうにもならない
取敢えず・・・
飛行機に関する資料をハイガシラの書庫から持ち出して
レイブンは、街の会長の家へ行く事にした。
「コンコルド」って・・・名前からして良い感じだと思いませんか?
私が生まれる前に生産中止になった昔の旅客機ですが・・・
「コンコルドクリップ」ってヘアクリップの名前として残っちゃうくらい
インパクトのある飛行機です。
って・・・最近の若い子は、コンコルドクリップを目の当たりにしていても
名前すら知らない状態かもしれませんねw




