019「18 遠征中12」
「18 遠征中12」
現在いる場所は、地下の街並み見降ろす柱の上の方
とっても、高い場所から家々の電燈に灯る明かりを・・・
夜の街並みを見下ろした「絶景の夜景スポット」
そんな場所に居ると言うのに・・・
『ちょっと、アンタ大丈夫?
夜が週1回、24時間続く事なんて子供でも知ってる事よ?
何にもできないし、何にも知らないし
ちょっとした味見役としてだって使えもしないし!
ホント役立たず!最強の御荷物ね!
アンタっていったい、何処産の箱入り息子なのよ!』
ソラは・・・
「この世界の常識なんて殆ど知らないっすよ!」と、思いながら
この世界の事を「知らな過ぎる」と、雛芥子に罵られていた。
『いやいやいや・・・俺は知らないし!箱入りて・・・
俺、そんな上等に育てられた事無いっすよ・・・』
ソラは此処に来てやっと7日目
知らなくても仕方無く、知らない方が当たり前だったのだが
自分が知ってる常識が
「全世界の常識」だと、疑わない雛芥子には関係なかった
『何処がよ?
レ~君に護って貰って、レ~君が作った御飯を食べさせて貰って
おんぶに抱っこじゃない?
アンタ・・・ペットとしてでも飼われてるつもり?
もしかして、癒し系なつもりでレ~君の傍に居るの?
そもそも、レ~君を癒せる程に上等な生き物なの?
無智な上に馬鹿なの?』
しかも、罵る理由は・・・嫉妬から来る物らしい
『ひどっ!俺、今日・・・雛芥子さんの為に頑張ったすよね?
それに、これでも俺・・・先輩、レイブンさんから
筋が良いって誉められてるんすよ!造花とか作る時とかに!』
余談ですが・・・
この世界でソラは、ライスペーパーやパスタを材料に
誰でも食べられる花束を作るバイトをしてらっしゃったりします
『造花て・・・誰がそんな物を欲しがるのよ?
正直、牧草貰った方がまだマシだわ!』
雛芥子は、牛の獣人ですので・・・
人とは違う感覚なのかもしれませんので、御了承下さい。
そんな感じで2人の会話は、止め処なく続いていた
天井の光る蜘蛛の巣が、少しづつ闇に溶けて行く
レイブン達は・・・まだ、帰らない
『レ~君、遅いね・・・
早く無事に帰って来て、元気な顔を見せて欲しいわ』
テラスの屋根を支える柱に掛かったアナログ時計を見て
雛芥子は、戻って来ない愛しのレイブンを待ち焦がれて
大きく溜息を吐いた
『きっと無事っすよ・・・
先輩は「天然の誑し気質」だから、きっと梟でも誑し込んで
夜空を飛んで帰って来ますって』
『レ~君の事を対して知りもしないで
レ~君を「女っ誑し」みたいに言うなんて失礼な男ね
レ~君が聞いたら怒るわよ?』
ソラの酷い言い草に
雛芥子が気分を害し、ソラを睨みつける
『いや、大丈夫だったっすよ
先輩に「天然の誑しな体質なんすね」とか言ったら・・・
「そうか・・・そうだったのか」って絶望してたっすけど』
雛芥子が・・・
『レ~君はそんな安い男じゃないもん』と言って、黙り込み
気不味い沈黙が流れた。
雛芥子が改めて、ソラを眺め
変なモノを見付けたかのように首を傾げる
『あれ?ソラは、少しだけレ~君に顔立ちが似てるね・・・』
雛芥子が、ソラの顔を覗き込む様に顔を近づけてきた
ふわりと微かに、雛芥子から石鹸の香りがした
『そ・・・そうっすかねぇ?』
雛芥子の突然の態度の変化に
一つ高鳴る鼓動、ソラは経験の無い雰囲気にたじろいだ
雛芥子から伸ばされた手が・・・ソラの頬や、髪に触れ
更に、雛芥子の顔がゆっくりとソラの顔に近付いてきた。
ソラの心臓が、早鐘の様に脈打ち出す
そこは、室内から零れる明かりだけが2人を照らす
綺麗な夜景が見える誰もいないテラス
室内の雑踏から切り離された、2人きりの場所
王道を行く少女漫画なら・・・
恋愛シミュレーションゲームの世界なら・・・
そこに至る経緯を少しばかり考えなければ・・・
「うわぁ~何このシチュエーション!
俺、どうすりゃ~良いんっすか?目でも閉じるべき?」
ソラが、焦り動揺する中
雛芥子のもう一方の片手が、ソラの肩に掛かる
最初に触れてきた雛芥子の手は、輪郭をなぞる様に頬を撫でている
雛芥子と目が合う、2人は見詰め合う状態になった
ソラは、照れて少し目線を逸らす
すると、雛芥子の柔かそうな唇が視界に入り
目が離せなくなってしまった
「このタイミングで、キスしたら怒られるっすかねぇ?」
自問自答して、思いきって行動に移す
ソラは、雛芥子の背に合わす様に少し屈む
途中で・・・ソラは誰かに、後ろから押された
押してきた相手を見ようと
ソラが慌てて振り返ろうとした、次の瞬間・・・
ソラは押す力の強さに負けて、雛芥子を押し倒してしまっていた。
ソラに平らな胸に、小さな雛芥子の大きな胸が・・・
重なる体と、密着する足にソラは・・・雛芥子の体温を感じた
一瞬、頭が真っ白になってソラは硬直する
『外しやったかぁ~』
溜息混じりの残念そうな呟きが聞こえてきた
思考がゆっくりと、ソラに戻って来る
雛芥子の髪から香る・・・
シャンプーに使われている甘い香料の香りを吸い込んで
ソラは、我に返った
『う・・・うわぁ~っ!ごごごごごめん!大丈夫っすか?』
ソラは、テンパリながらも上半身を起こし
後に後ずさる、そこには・・・
ソラの後ろには、
楽しそうにニヤニヤと笑う、蒙と山都がいた
雛芥子から逃げ下がるのにも下がりきれず
ソラは蒙の足にぶつかり、蒙を見上げた。
『あほやなぁ~・・・今のは強く押し過ぎやでぇ~』
山都が、無精髭を触りながら笑う
『イケルと思ったんだがな・・・2人の距離感に焦らされ過ぎて
歯痒過ぎて、加減を間違ってしまったようだ』
ソラの背中を押したのは、どうやら蒙らしい・・・
驚き過ぎて硬直していた雛芥子も、我に返って起き上がる
『ちょっと、父さん!いったい何のつもり?』
雛芥子が、蒙に詰め寄った。
『何のつもりって・・・
2人の中を進展させてやろうと言う、父親の心遣いだ!』
『何それ、そんなのしていらないし!
それ以前に、どう言う心遣いよそれ!
冗談でも笑えないんですけど、マジで!
それに私にも「相手を選ぶ権利」ってモノがあるでしょ?』
雛芥子は本気で怒っていた
『いや・・・この際、相手に妥協も必要だろう?
この世の中に、女は星の数程いても
男は、数えられる程度しか存在していないんだぞ!
お前に対してどう見ても脈無しの・・・
性的に草食系男子!もしかしたら、無食系男子かもしれない
レイブンを追っ駆け続けて・・・
お前が出産適齢期を逃して、子供を産めなくなるくらいなら
1回は、ソラ程度で妥協しておくべきだ!
俺にとっては、相手が多少ヘタレでも構わない!
取敢えず、子を1回は産んどけ!
俺は孫の顔が見たいんだ!』
蒙がソラと雛芥子に対し、酷い事を口走っている
『あっちはほっといて・・・
唐突やけどソラ、家の桜花なんてどうや?
ちょっと乱暴者ねんけど、桜花て音は良い子やぞ?』
どうやら、山都も・・・
同じ理由でソラにアプローチを掛けに来たらしい
事態が理解できなかったソラは?と、言うと・・・
どう返事して良いか分からず
取敢えず、この場は笑って誤魔化す事にした。
そんなソラ達がいるテラスに、突風が吹き込んできた
テラスと室内を繋ぐ扉と、柱に掛けられた時計が
ガタガタと音を立てる
風と共に・・・断崖からの入口に、大きな影が出現していた
そして、少し大きな地響き・・・
『たっだいま~!』と、その地響きを起こした正体が
側面の庭側から、段差の少ない階段を上りテラスに入って来る
室内から、フィンと桜花が走り出てきた。
余談ですが・・・女性はいつまでも子供が産めることは無く
35歳で妊娠すると・・・カルテに高齢出産の印の判子が押されるそうです
(因みにそれは、私が子供を産んだ時代のお話)
そして、私の母の世代では・・・
30過ぎると、高齢出産の判子が押されていたらしいです。
卵子を冷凍保存してたとしても
妊娠に「流産&死亡」のリスクが高まる高齢出産
子育てできる母性が保てるのも、それくらいの時期までw
それを過ぎると、子育てが苦痛になって辛いぞww
将来、子供が欲しい人は・・・相手探しと妊娠出産は計画的に!