017「16 遠征中10」
「16 遠征中10」
複数の者達を丸飲みにした、蜥蜴の膨らんだ腹の
皮下脂肪を包んだ皮にはまだ、膨れる余裕があり
その巨体が動き回る度に・・・
腹の肉が、たぷんたぷんと左右に揺れている
感嘆の言葉と溜息・・・
蜥蜴に対する「美味そうだな」と、言う言葉が
大きな鳥達の嘴から、溢れる様に囁かれる
先程まで、下の方を旋回して飛んでいた
大きな猛禽類の存在が、他の肉食を好む鳥を呼び
その鳥達が、突風と共にワイヤーの上に降り立った
バランスを崩してワイヤーから落ちていった者達を
捕食したであろう猛禽類達も一緒になって
何時の間にか、少し離れたワイヤーの上に大集合している。
新鮮な血の臭いと、猛禽類達の体臭・・・
肉食を好む鳥達の期待に満ちた、キラキラ光る眼
食欲に塗れた、貪欲で獰猛な視線が・・・
恐怖感をそそる、ホラー的な雰囲気をその場に醸し出していた。
面白半分で蜥蜴を挑発し、楽しんでいるフィンを除外した
それ以外のメンバーに緊張が走る
セレスとジャンゴが・・・
自分の身を護る為、天井近くの狭い場所を選んで飛ぶ
ハイガシラは・・・
大きな鳥達に「ちょっとした事故だ」と、言って
フィンが襲われたりしない様に鳥達を警戒した
レイブンは・・・
罠を起動させる為に仕掛けられたワイヤーの管理を桜花に任せ
蜥蜴の行動だけでなく、鳥達の動向にも気を配った
ワイヤーの端をレイブンから受け取った桜花も・・・
レイブンに護られているのを意識しながら意識を罠に集中した。
じわり・・・じわりと蝕まれていく精神力
「何時、狩りに参戦すると言う名目で
自分達も蜥蜴と一緒に狩られてしまうか分からない」
そんな不安が、それぞれの中に募る
巨体に似合わぬ蜥蜴の素早い動き、蜥蜴の体重で
しなる足場の太いワイヤー・・・
そこから、バランスを崩して落ちれば転落死は免れない
もしくは、空中で猛禽類達の餌食になってしまう可能性もある
それ以前に、蜥蜴に食べられてしまうリスクも否めない
そんな、極限に近い緊張感の中
蜥蜴はようやく、罠のある方向へと進み始める。
大きな烏が『もうすぐだ』と、一声鳴いた
鷹や鳶、そして鷲達が・・・
牽制し合うかの様に、大きな声で鳴き始める
体に音の振動を感じる程、耳を押さえたくなる程の
大きな鳥達の鳴き声で、周りの音が全て掻き消される
足場が大きく揺れ出す
フィンが、風の様に罠の中を駆け抜けた
フィンを追って、蜥蜴が罠の中に入り込む・・・
合図が聞こえず揺れにも負け、罠の起動が遅れる
タイミングを外し、上手く罠を操れなかった桜花の変わりに
レイブンと、走ってきたハイガシラが協力して
蜥蜴の後ろ脚と尻尾を無理矢理、罠に引っ掛ける
想定外の事態に、作戦は変更を余儀なくされる事となった。
鳥達の鳴き声は続き、途絶える事無く・・・
移動を制限された蜥蜴を見て、更に大きくなった
御互いの声を言葉を聞き取る事ができない現状
今回の失態を取り戻そうと焦る桜花が・・・
中途半端な形で罠に掛かり、大暴れする蜥蜴の元に行こうとする
それに気付いたレイブンが、悪態を吐きながら
桜花を羽交い絞めにして押し留め、蜥蜴の近くから引き剥がす
桜花は、やろうとしていた事を邪魔された事に怒り・・・
レイブンは、桜花から更なる抵抗を受けた。
レイブンの額に血管が浮き上がる
煩過ぎる鳥達の声と
今の状況がどんな状態なのか理解できていない桜花に
マジギレしていたりする
レイブンは、罠に使ったワイヤーの一部を切り取り
伸縮する輪っかを作り使って
無理矢理、強引に桜花の手足を1つに縛り
桜花を荷物の様に担いで振り返る事無く、その場所を後にする
フィンも・・・
ハイガシラに拉致られて、柱の方へ連れ戻される所であった。
戻った先・・・一番近くにあった観客用のモニターの前
レイブンを山都が一番に出迎え、抗議する桜花を無視して
『面倒掛けて悪かったな』と、桜花を引き取る
蒙と、蒙の娘の雛芥子と・・・
雛芥子に引き摺るように運ばれてきたソラ
今回、仕事場に辿り着くまで同行してくれたカリブーや
レイブンと桜花の指示に従って逃げてくれた狩人達も
一緒に出迎えてくれていた。
画面の中では・・・
タロットカードにもある「逆さ吊りの・・・」の後に
あったかもしれない風景が
リアルに、蜥蜴バージョンで繰り広げられている
想像に御任せな表現で説明すると・・・
「鳥葬」的なアレ、生きたままバージョンとしておこう
鳥が群がり良く見えない感じの物だが
ぶっちゃけ、スプラッターな映像である事は間違いない。
レイブンは画面を見なかった事にして
『これだけの人数だけでも無事でよかった・・・
怪我してる娘はいないか?怪我しているなら治療はしたか?
していないなら、俺に治療をさせてくれないか?』
無事だった狩人達に向かい、場違いにも優しく微笑み
怪我を放置していた怪我人の治療を始めた
最初に参加していた4分の1以下の人数の女性陣中
大半が頬を染め、大人しくレイブンの治療を受ける
セレスがその光景を見て『天然の「誑し」めが』と、零した。
怪我人の治療が終わり・・・
山都に宥められ大人しくなった桜花の元へレイブンが行く
『悪かったな、怪我させて・・・
傷が残るといけないから、俺に治療させろよ』
三角座りで座り込む、桜花の横にしゃがみ込み
目線の高さを合わせ・・・
レイブンが自分で縛ったワイヤーで傷付いた、桜花の手足に触れる
桜花は俯き、されるがままに治療されていた
ジャンゴがこっそりと呟く
『我が家のツンデレ娘も、デレましたな・・・』
桜花から無言の抗議が、小石という形で飛んで来る
ジャンゴは一つ目をカッコ良くひらりとかわし・・・
時間差で投げられた2個目の小石で大打撃を受けて
石が命中した場所を片方の翼で押えながら
地面に膝と、もう片方の翼をついた。
その頃、ソラはと言うと・・・
体調を崩し、苦手なスプラッター系の怖い映像を見て吐くので
心配した雛芥子が、レイブンに診せる為に
ソラを言葉の通り、引き摺って連れて来ていたのだが・・・
冷たくて甘い物の食べ過ぎには、特に治療法が無く
『暖かいポタージュスープでも飲ませて、寝かせとけ』
と、セレスに言われたので
ソラは蒙に、此処に来る前に寝ていたベットに連れて行かれ
雛芥子特製「初挑戦の味のポタージュスープ」を飲まされ
渋い顔で苦悩していた・・・なぁ~んて言うのは
オマケの出来事だったりするかもしれないです。
そんなこんなで、皆が落ち着きを取り戻した頃
12時の鐘が鳴り、食事の時間を迎えた・・・
少し御機嫌斜めだったフィンが機嫌を直し
『パスタが食べたい!』と、訴える
出来合いの材料で、そんな物が作れるのが
レイブンしかいなかった為に、レイブン一人が皆の食事を作り
皆でパスタ料理を食べを終え・・・
後片付けと、オネムになったフィンと
何かしらとっても重症なソラを蒙達に預け
レイブンとセレス、ハイガシラとジャンゴは・・・
フィンがやる予定だった仕事を再開する為に
天井全部の照明器具に繋がる太いワイヤーのある場所へ
足早に向かった。
現場には・・・
大烏とも呼ばれる渡り鴉のセレスより
10倍以上大きな、セレスと同種の鴉が・・・
毛繕いをしながら、待っていた
『セレスタイトから
私達の種の名前を名付けられたのは・・・お前よね?』
大きな鴉は白い鴉のセレスとレイブンを交互に見て微笑む
危機感を感じたハイガシラが、レイブンを護る様に
大きな鴉とレイブンの間に割って入った
『家のレイ君に何か用かな?
俺はコイツの養父でね、保護者なんだわ・・・
用件によっては御引き取り願いたいんだけど、何の用事かな?』
ハイガシラのにこやか且つ、威圧的な態度に大きな鴉が1歩引く
『嫌ねぇ~私、危害を加えようなんて思ってないのよ?』
大きな鴉は、翼で嘴を隠し上品そうに笑っていた。
個人個人の想像に御任せした箇所・・・
「残酷描写有り」のタグ付けたんだから「書いても良かったか?」と
カットした部分の表現文章を思い出し
後悔していない事もありません。




