世界には神様がいて、五匹のドラゴンがいて、人がいる
神様が精霊の家で休憩をしていると、木の扉を人間がノックした。男の子が一人、女の子が二人訪ねてきた。
どうしてここへ来た、どうやってここへ来た、と神様は美しい顔を子供に向ける。男の子は答えた。
――小さなドラゴンがこの世界に連れて来てくれました。僕たちは火を貰いに来ました。早くしないとお父さんが凍ってしまいます――
神様は大きな胸を張り、ハーブティを飲みながら考える。救うのは構わないが、干渉するのは神様としてよろしくない。そこまで考えて、神様は三人の中から、一番に賢くて大人しい女の子を選び、火焔という言葉を授けた。神様が作り出した人間のための魔法。
――人差し指を立てて、火焔と言いなさい。暖かい気持ちで、大好きな食べ物を食べる時よりも集中して言いなさい。そうすれば温もりの火を灯す――
女の子は頭を下げる。三人は元の世界へ帰り、魔法を使った。しかし、神様がハーブティを飲み終わるより前に再びやって来た。
切れ長の目をした女の子が淡々と言った。
――もっと魔法を教えて――
図々しい人間の中でもお前達は特に図々しいな。神様は怖い顔をしたが、三人は純粋な瞳を向けたままだ。これ以上は面倒になった神様は、絶対に人間には出来ない試練を与える。
「私が生み出した五匹のドラゴンを全て打ち負かしてみなさい。勝負を挑むのです。もしも勝てば魔法を教えよう」
三人は頷いて家を出た。これでようやく一息つける。神様は小さな耳を動かしながらハーブティを飲み干した。
そろそろ出掛けようと、虹色のローブを着ている時だった。再び扉が開いた。
やはり三人の子どもだ。大人しい方の女の子が言った。
――勝ちました――
神様はとうとう笑った。