ビフォアー プロローグ
見能市神添村。
そこは人外が住まう土地として有名だった。
人の血を好む、まるで吸血鬼のような化物がいるらしい。だが、それは飛んだ誤解だったようだ。
「あ~~~うめええ、マジううめえよ。お前の肉ッ、うめえな!」
今現在、地球が誕生して何周したのかもわからないが、そんなことはどうでもいいほどにどうでもよかった。次々と奇想天外なことが起き過ぎて脳が処理できず、ついていけない。
で、現状を簡潔に説明しよう。
腹から胸部までを抉られ、喰われている最中である。
「?」
ぽかんとなるのは当然だろうと思う。
しかし、これが現状なのだ。俺こと石川隆盛は、エセ吸血鬼に腸を煮えくり返すことも出来ずに腸を煮えくり返されていた。正確にはこいつらで言うところの「喰事」だそうだ。
喰事とは、見ての通り人を喰らうこと。同時に人を殺すことに直結する。
よって、俺は今まさに殺されかけていた。
俺に跨り、血肉を食らっている”エセ吸血鬼”は目を真っ赤に燃やして「うまいうまい」と食欲に順守している。ある意味「うまい」という言葉が聞こえるほど、俺は死に一歩一歩近づいていると言っていい。エセ吸血鬼は自身のことを香坂大和と言っていたが、今はそれも怪しい。
俺を殺すのに自身の名を名乗られたときも、怪しい奴だなーとは思ったが、まさか俺がむしゃむしゃと食べられることになるとは予想打にもしていなかった。
先に言っておくが、俺は不死身じゃないし、不老不死でもないし、俺の友達や仲間達に超能力者やゲームで必要不可欠な役割を果たすソーサラーなんて人はいない。出てくる予定もない。出す予定もない。
結論。
悪いが、この物語は簡潔に完結する。
「うめー」という言葉を聞きながら、自分の人生の終止符を見届け・・・
俺は、死んだ