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異世界・・・もう一つの世界というものは本当にあるのだろうか。
もしあるとすれば、いったいどんな世界が広がっているのか。
私は正直想像できない。
というか、異世界というものじたいをこの時はまだ信じていなかった。
そう。
あの時までは。
理想の世界を教えてください。
「理想の世界?やっぱ俺は、女たくさん抱くことかな☆」
「うわー隆二サイテー。まあ、俺もだけどさ☆」
「あんたたち馬路ありえないんだけどー。うちはー、お金がたくさんある世界かな?」
「あたしは美男美女の世界!」
「僕は、屑がいない世界」
くちぐちに言葉がクラス中を飛び交う。
・・・なんだよ。このアンケート。
私は、田口凛。
高校2年生だ。
担任に配られたアンケートを、見て眉を顰め続けている。
理想の世界?
そんなものあるわけない。
どうせ理想に過ぎない。
現実と理想は反対の意味を持つ。
正直このクラスもあまり好きではない。
いや、私が解けこめていないだけかもしれないが。
ガヤガヤうるさい連中ばかりだ。
「凛ー、また難しい顔して・・・。」
ふと後ろの席から声がした。
「真美・・・。」
彼女は、沢田真美。私の小学校からの友人であり、
よき理解者でもある。
「理想の世界かー、あたしらもう高校生なんだから、
いい加減現実見なきゃダメだよねー。
何で先生たちこんなアンケートするんだろ」




