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Guns Rhapsody  作者: 真赭
First Bullet
29/33

Guns Rhapsody 『Mag Mell』 Ⅱ-ⅩⅥ

遅れましたが続きです

中央支部・第二学年棟


 平日最後の授業の最後。今日は合同授業が無い日なので、クラスの面々は久しぶりの休みに浮かれ立っていた。

「久々にゲーセン行こうぜゲーセン、新機体実装されたんだってよ」

「いいねえ、行くべ行くべ」

「ねえねえ、今日のライブもう行っちゃうー?」

「物販見たいし早めに行こうよ」

「あっ、ライブ用のサイリウム買い忘れてた……現場用のでも大丈夫かな……」

 賑やかな放課後の教室。

「――さてと、ごめんね幽。今日も渚ちゃんと『アレ』があるから放課後一緒にいられないや」

「ああ、監視か。あまり煮詰めすぎるなよ」

「へーきへーき、それじゃあね~」

 月島と共に教室から足早に出ていく美夜。

「ふむ……私も少し用事があるのでな、失礼する」

「ああ、それじゃあな奏」

 同じように教室から出ていく奏。

(久しぶりの一人か……早めに帰ってアルマと過ごすか?)

 恐らくだがこれからは『公社』関連で休む暇は少なくなってくるだろう。

 それなら、日常を過ごせる内に満喫しておかないと後々後悔するかもしれない。

 鞄を片手にクラスメイトに別れを告げながら教室から出る。

 放課後直後とあって廊下は混みあっており、部活動へ向かう面々や都市部へ遊びに行く一団、副業のバイトをしに向かう奴など様々な同級生達が。

 廊下を進み、昇降口へ向かうべく階段を下っていると――

「おう、ユウ」

 後ろから聞き慣れた声。

「斎藤じゃないか、どうしたんだ?」

「どうしたんじゃないぜ、この間の話し忘れたのか?」

「この間の?」

「マルカ先生が来た日の賭けの話しだよ」

「あー……そういえば言ってたなそんな事。なんだ、律儀に払ってくれるのか?」

「ちげえよ、その後の話しだ。言っただろ、新しい試作型の装備開発したから動作テスト手伝ってくれって」

「ああ! そういえば言ってたか、危険な奴じゃないだろうな」

「大丈夫だって。試作型エクソスケルトンのテストだからよ」

「試着? またヤバそうなやつじゃないだろうな……」

「大丈夫だ。今度は背中だけに装着するだし、駆動機構は搭載していないから」

 そうは言うが前回の試験では危うく左腕がねじ切られる所だったのである。

「武学園の保険降りるんだろうな」

「大丈夫だ、今回は白澤先生も立ち合いの元だからさ」

「あの人もいるのか……また、変な動作テストに付き合わされそうだな」

「で、手伝ってくれるのか?」

 こちらの話を全く聞いていないようである。

「うーん……やる事も無いしなあ……分かった、付き合うよ」

「助かるぜ。それじゃあ機巧科の実験棟まで行くか」

「ああ」

 斎藤と共に一階へと降り、昇降口から外へ。

「ん?」

 見れば校門の前に一台のオープンタイプの四駆が路駐され、運転席には見覚えのある女子。

「ありゃ、弥生の奴じゃないか」

 斎藤と共に車の方へ移動し、こちらに気付いた女子が声を掛けてくる。

「久しぶりだねユウ、相変わらず無茶してるんだって?」

 暗い茶色のポニーテールに日焼けた肌。上下一続きの作業着を袖まくりして身に着け、前を僅かに開けたワイルドな印象の女子。

「よう千代原、相変わらず制服よりそっち着てるんだな」

「機巧科の制服みたいなもんだからね。ほら二人共、さっさと行くよ」

 斎藤が助手席に乗り、自分は後部座席へ。

 車が発進。風に顔を撫でられながら島内の道路を走行する。

「弥生、なんでここに?」

「槐サンが『後は私が確認するからアンタとテスト要員を迎えに行け』ってね」

「それで来たのか、ったく連絡してくれりゃあいいものの……」

「構わないさ――それで、今回のテスト要員もユウがやってくれるのかい?」

 一瞬だけ後ろを向いてくる千代原。

「最悪な事にな。本当に前みたいに事故らないんだろうな」

「アンタは本当心配性だね。今回のはあくまで使用者の負担を軽減させるスーツだ、前回のマサが作ったヘンテコパワードスーツみたいな物じゃないよ」

 斎藤のあだ名で呼ぶ千代原。

「なんだよ、アレは揺動モーターの調整がほんの少しだけ甘かっただけでほぼ成功していたんだぜ」

「非を認めないとはいい度胸してるね。槐サンがキレてたのを忘れたのかい」

「イテテッ! 止めろ、鼻が千切れる……!」

 前の方でイチャイチャし始めるカップル。

(……ある意味お似合いだよなこの二人。見ているだけでこっちが胃もたれしそうだ)

「とにかく、今回のテストはユウに簡単な運動をしてもらうだけだから安心してくれって」

 ハンドルを操作しながら千代原が念を押すように言ってくる。

「……分かったよ。衛生科に運び込まれないことを祈ってる」

 話している内に到着する機巧科の『実験棟』。

 ドーム状の大きな屋根に、灰色一色の無味な印象を与える大きな建物。

 駐車スペースに車が停められ、降車する。

「こっちだ」

 言われるまま付いていく。

『実験棟』とは名前の通り、機巧科が作った試作機や様々な実験などを行う為の設備が揃った施設。

 利用者のほぼ全員が機巧科の生徒か教職員で、たまに民間の研究者や法務機関が機械類のテストをしに来るくらいしか利用しない、一般生徒には縁の遠い存在である。

 スライド式のローカルなドアを開け、中へ入ると無機質な色合いの通路が。

「スーツのテスト場所は奥だ。こっちだよ」

 まるでどこかの工場見学に来たかのような錯覚してしまいそうな実験棟の中。

「相変わらず凄いなここは……」

 左右を見ればガラスの向こう側では色々な物が。

「まあ、国内で政府所有の施設の次に一番でけえからな。それに『何でも』出来るから、色々な企業の機械部門の人が頻繁に利用してるぜ」

「そうなのか……右アレはなんだ?」

 奇妙な機械を片腕に身に着けた男子生徒と、その横で駆動音を鳴らしながら動くロボットの腕。

「あれはEOD用無人機のマニュピレーター部分の稼働テストだな」

「日本語で頼む」

「爆処理の無人機の腕部分だよ。細かい作業の際に致命的なラグと差異をほぼ無くすためにああいうテストをしているんだ」

「ほー……それじゃあ左のアレは?」

 今度は反対側。大きなモニターを前に数人の生徒と、作業着姿の男性達(恐らく外部の人間)が機械を囲んで、討議している。

「あれは二足歩行型ロボットの研究グループだったかな。SF映画とか近未来を舞台にした漫画であるだろ? 人間とまるっきり同じロボット、アレ系統だよ」

「若干武学園の範疇を超えていないか?」

「まあ、科長が白澤サンだからな。結構人の出入りは緩いぜ」

 話していると突き当りにドアが。

「この先だ」

 ドアをくぐり抜けると一気に開放的な空間。

「はー……! 相変わらずのデカさだな」

「他にも何個かハンガーはあるけど、ここのは校舎と同じ高さの特大級だからな」

「ほら男子共、こっちだよ」

 見覚えのある車両や航空機が置かれ、その周りには作業着姿の生徒が道具片手に整備をしている。

 前衛科の自分は滅多に訪れないところなので物珍しそうに見回してしまう。

 そして、ハンガーの最奥部分に到着すると奇妙なオブジェクトが建っていた。

 高さは五メートル程か、建設現場の足場のような鉄パイプで組まれた複雑に入り組んだ鉄の何か。

 その横では作業着を身に着けた女性――白澤先生が、タイヤの付いた移動式の作業台の上で細長い奇妙な物を弄っていた。

「白澤先生、連れてきましたよー」

 千代原が呼びかけると、表を上げる白澤先生。

「なんだい、今回のテスターも影海か」

 明るい茶色のボブカットヘアーに程よく日焼けた肌。作業着の上を脱いで両袖を前で結んでおり、上半身全開がなのだが――どういう訳か下着以外何も身に着けていないという奇妙な恰好。

「先生? 流石に上は着た方がいいと思いますよ」

 千代原のごもっともな言葉。

 装飾も何も無い無骨な黒いブラジャーと、中央支部の女性教諭の中では比較的『ある』方な一部分。

「作業をしているとクソ暑くなるんだから仕方がないだろう」

 武学園の女性陣はどうしてこう『おおらか』というか『無頓着』な人物が多いのだろうか……

「それは分かりますけど、大人の女性がそんな格好していたら男子生徒から変な目で見られますよ」

「ここに入り浸る男は全員が機械に首ったけな変人ばかりさ。生身の人間より機械の回路とシャーシに興奮する変人だからな」

 教師とは思えないほどの暴言である。

「あのー……それで今回は一体なんのテストをするんでしょか?」

「話しが早くて助かるね影海。今回はこの装着型外骨格を着けて運動と射撃訓練をしてもらう」

 そう言い、白澤先生が作業台の上に置いていた細長い奇妙な物体を軽く叩く。

「それをですか? 前みたいな全身に付けるタイプではなく?」

「ああ、今回は単純に背中に取り付けるタイプだ。装着する用に少しばかり装具を身に着けるがね」

「分かりました」

「素直な生徒は評価しがいがあるね――ほれ、さっさとこれに着替えてきな。武装もキチンとするんだよ」

 作業台の下に置かれていた鞄を放られ、危うくキャッチする。

「私は最終調整をしている。千代原は『ジャングルジム』の強度チェック、斎藤は地下のキルハウスの準備だ」

 テキパキと指示を出す白澤先生。

「おら、さっさと着て着な影海。トロトロしてたらこの場で引ん剝くぞ」

「ちょっ、洒落に聞こえないですって!」

 白澤先生はやりかねないから恐ろしい。

 急いで鞄を抱えて着替えやすそうな所――男子便所へ。

 個室で鞄の中に入っていたウェットスーツのような衣類に着替えるが、途中で手が止まってしまう。

「めっちゃピッチリしてるなこれ……」

 ナニとは言わないが色々と浮き出てしまうではないだろうか。

 恐々しながら身に着け、最後に背中のチャックを閉める。

「よかった……ここはキチンと配慮されてた……」

 腰のベルト部分に銃の入ったカイデックスホルスターを通し、ナイフは邪魔にならないように腰に地面と並行になるように装着する。

 鞄に制服を入れて便所からハンガーへ。

「ははっ、中々似合っているじゃないか」

 こちらを見た先生がげらげらと笑う。

「なんですかこのスーツ? ウェットスーツでも無いし……所々に変なの付いてるし」

 関節部分や随所にひょこりと生えた小さな突起。

「それは超小型の追跡デバイスが埋め込まれた、最新型のトラッカースーツさ」

「トラッカー?」

「ほれ、映画とかCG映画とかであるだろう? アクターが身に着けて動くとCG上のキャラクターが同じ動きをする奴」

「あー」

「あれの軍隊版でな、某開発機関が現場の兵士の物理的ストレスや身体への負荷具合をモニタリングするために作られた奴さ。一着でMH-6が一台買えるから、ぶっ壊したら弁償どころの騒ぎじゃないからな」

「ええと……MH-6って言うとOH-6の軍隊モデルですよね……」

「今のレートだとざっと四億くらいだ。マジで気をつけろよ」

 あまりの衝撃に漏れそうになってくる。

「このテスト、パスしていいですかね……今すぐ脱ぎたいんですけど」

「駄目だ」

「勘弁してくださいよ……」

「なに、ぶっ壊したら私の部下として雇ってやるさ。業務は過酷だが給金はいいぞ?」

「洒落にならないですって……」

 最近、金銭感覚が狂いそうな額を軽く見ているような気がする。

「――先生、強度テストオッケーですよ」

 やって来る千代原。

「お、無駄に似合ってるじゃないかユウ。四億の着心地はどうだい?」

「緊張で膝が震えてくるよ……」

「情けない奴だねえ、そんなんじゃあ暁さんや美夜ちゃんからそっぽ向かれるよ?」

「あいつらはそんなのじゃないっての……先生、早く終わらせましょうよこのテスト」

「ったく、鬼島さんお墨付きがこうも情けないとは……ほれ、これを背負いな」

 作業台の上に置かれていた、細長い奇妙な形状のハーネスのような物を差し出される。

 一言で例えるなら人体の『背骨』とハーネスが合体したものといえばしっくりくるか。

「背中の正中線に沿うように身に着けて――そうそう、そしたら最後に腕と脚の留め具を固定しな」

 言われるがまま身に着け、最後に固定する。

「お、おお……?」

 奇妙な物は適度な強度と弾力性を持っており、腰の下辺りが少しだけ浮くような何とも言えぬ不思議な感覚。

「どうだい」

「なんとなく軽いような、動きやすいような……」

 脚や腕に装着した部分にゆるみが無いか確認していると、斎藤が戻って来る。

「先生、下の準備は終わりましたぜ――おお、かっけえじゃねえかユウ。ロボットアニメの主人公みたいだぜ」

「ご苦労だ斎藤。さて、これからテストを始めようとするか、最初は10分間ランニングマシーンで走ってもらおう」

「はい」

 こうして放課後の奇妙な手伝いが始まったのだった。


――様々な運動テストを行わされ、過ぎること一時間。


「……よし、基礎運動のテストは終わりだ。素直な感想を聞かせてくれ、ソレを着けてどうだった?」

「そうですね……普段の身体にかかる重さが気持ち少ないというか、身体にかかる負荷が心なしか少ないような」

 白澤先生の横ではタブレット端末片手に操作する千代原。

「ふむ……オリジナルと同じ効果は得られるという事か……」

「あとは軸がブレにくいっていう感じですかね。しっかりと運動を行えるというか」

「なるほど……よしよし、その答えが出たのはいい事だ。さて、次は少し激しい運動をしてもらうぞ」

 どこか満足そうな表情の白澤先生。

「格闘戦とかですか?」

 億スーツ装着して殴り合うのは正直嫌である。

「いや、そこのジャングルジムでチェイスタグをしてもらう」

「チェイスタグ……たしかパルクールと鬼ごっこを足した奴でしたっけ」

「そうだ、相手は私だ」

「へ」

 意外な相手に思わず変な声が出てしまう。

「なんだ私じゃ不足か?」

「いや、そうではなくてですね……」

「技術者だがこう見えてもトレーサーだぞ」

 無駄に大きな胸を張る白澤。

「ユウ、白澤さんこう見えてプロのトレーサーだぜ。何年か前の世界大会に出場したことあるらしいし、前衛科の三年生ですら捕まえられねえんだ」

 疑う自分に斎藤が補足してくる。

「本当みたいなんですね……分かりました」

「よし、それじゃあ公式ルール通りの制限時間20秒で、セット数は半分にしておくか。鬼は私からやるからな」

 ストレッチし始める白澤先生。格好が格好なために色々な部分が際どい事になっている。

(大丈夫だ……この人はマルカだ、あの変態と同じ類の人間だ……)

 こちらは十分に運動しているので、スーツをぶっ壊さないよう気を着けるだけ。

「斎藤、審判頼むぞ」

「ウス」

 千代原が担当した鉄骨の茂み――ジャングルジム。

 自分とは反対側の方に白澤先生が移動し、挟むように立つ。

「それでは――始め!」

 入り組んだ中へと入り、先生に捕まらないように意識を向ける――が、考える暇などすぐさま無くなった。

 飛ぶように鉄棒の上を走る白澤先生が、躊躇い無く飛び込んでくる。

 慌てて横に飛び、スピードヴォルトで乗り越えながら移動する。

(なんちゅう早さだよ!?)

 一瞬だけ後ろを振り向けばコングヴォルトで一気に距離を詰めてくる。

 スライディングでバーの下をくぐり抜け、起き上がると同時に直立した鉄棒を蹴って側宙返して伸ばされていた手を避ける。

(やべっ、無意識の内に入ってた……!)

 だが、いつものより動き易いお陰で負荷が少ないような気がする――が、着地の隙を狙われて白澤先生に捕まえられてしまう。

「そこまで!」

 斎藤の合図。

「なるほどねえ、確かに鬼島先生が手塩をかける訳が分かったよ」

「運よく決められただけですからね」

「よく言うさ。さあ、次はアンタが鬼だよ」

 そう言い先程と同じように反対側に立つ。

「それじゃあ……始め!」

 斎藤の合図と共に久しぶりの鬼ごっこが始まった――

 そして、交互に五回ずつ鬼役をやり合計して10回追いかけ回った。

「……ふむ、これくらい動き回れば十分な数値も取れるかね。本当はもう少しデータが欲しい所だが」

「いや……これは……無理ですって、息が……」

 床に仰向けで倒れ込む。

 ぶっ続けの立体的なパルクールで呼吸がままならない。

「情けないねえ、私より若いんだからシャキッとしな」

「いやいや……無理っすよこれは……」

 普段より動きやすいような気がしたが、相手が相手である。

 ひたすら動き続けても速度を落とすことなく追いつめてくるし、フェイントを掛けても呆気なく見抜かれる。

「千代原、収集データはどんな感じだい?」

 汗一つかいていない白澤先生。

「うーん……データは取れているんですけど、ユウの動きがしっちゃかめっちゃかというか参考にならないというか……」

「はあ?」

「ですから、ユウの動きが普通じゃないんで他のデータと比較しきれないんです」

「じゃあなんだい、こいつの動きは人間以外だって事かい」

「まあ、結論そうなりますね」

 人が死にかけているというのに酷い物言いである。

「おいおい、比較データは現役陸自と対テロ部隊の隊員の物だろう」

「はい、サンプル取りに行ったのは白澤先生なので一番分かるかと」

「機械が壊れたか、コイツが普通じゃないのか……」

 白澤先生が興味深そうに見下ろしてくる。

「先生、少し休んでいいですか……」

「そうだね……悪いコンディションのデータも欲しいが、軟弱なアンタには酷そうだな。少し飲み物でも飲んできな」

「よしユウ、自販機こっちだから行くぞー」

 ズルズルと引きずられるように斎藤に連れていかれる。

「あー……なんで放課後だってのにこんな疲れなくちゃいけないんだ……」

 ハンガーから出た通路のすぐ横の自販機でスポドリを買い、床に直接座ってあおる。

「まあまあ、いい結果が出たら先生から白澤重工から報酬が来るんだぜ? バイトだと思えばいいべ」

「え、これってお前の奴じゃなかったのか」

「俺は『カリーナエ』の基本骨子担当、コンセプトは白澤重工の研究部署でデザインは千代原、製造は白澤サンだよ」

「ややこしいな、結局誰が主体なんだ」

「いねえな、関わった全員が大本だよ」

「おいおい、これって合法な奴だよな……?」

「まあ、エクソスケルトンの研究っていう名目だから大丈夫だべ。それをどこに転用するかは神のみぞ知るだけどよ」

 だから陸自や警察の特殊部隊とか先程言っていたのか。

「――あー……今しかねえからちょっとお前に助言求めていいか?」

 斎藤がハンガーの方を挙動不審に見る。

「なんだ?」

「いやよう、女子ウケの良い物って言ったら……ユウならなにを選ぶよ?」

 突然の質問に思わず隣の斎藤を見てしまう。

「なんだよその顔」

「……分かった、千代原だな?」

「んだよ、誰も弥生の事は言ってねえぞ」

 工学とヘンテコガジェットを愛するキワモノ技師の斎藤だが、実はタメの女子と付き合っており――その人物は同じ科の女子、千代原弥生である。

「女子ウケのいい物なあ……相手は誰だ? 身内か外かどっちだ」

「あー……身内だ」

 本当、こいつは単純だが真面目な奴である。だからこそ千代原にオーケーされたのだろうが。

「身内か、そうなると普通の感性からかけ離れた物じゃないか? ナイフとか銃とかカスタムパーツとか」

「うーん、そういうのはあんまり興味無さそうなんだよな。かと言って外の女子みたいな趣味も無いって言ってたし……」

 機巧科の女子は化粧っ気が無いのは男子内では共通の認識なので納得してしまう。

「それなら、その人が欲しがっている物とかはどうだ。普段から一緒にいるなら聞いたことあるんじゃないのか? 服とか靴とか鞄とか」

「いやあー……宇宙産業用の3Dプリンターは流石に無理だわ。個人で買える額じゃねえ」

「趣味全開……だなそれじゃあアクセサリーとかの小物でいいんじゃないか? 腕時計とかペンダントとか、俺の主観的な意見だけど」

「アクセサリかー……ああ、それならなんとなく大丈夫なような気が……」

 だが、武学園の女子共は好んでアクセサリー類を付ける奴は滅多にいない。そんな物のに金をかけるなら武装や装具類に金を回すからである。

「まあ、好きな奴から貰ったものなら何だって嬉しいだろうさ――多分な」

「流石は中央支部切ってのプレイボーイ。言葉の重みが違うぜ」

「そんなんじゃないっての。単純につるんでいる奴に女子が多いだけだ」

 現に付き合っている女子はいないし、少しくらいは自分も青春時代を過ごしてみたい。

「そうかあ?」

 駄弁っていると――ハンガーの方から千代原がやって来る。

「二人共、そろそろ次のテストだから戻ってきなよ」

「へいへい」

「ほら、マサも立った立った」

 ガシガシと斎藤を蹴り付ける千代原。

「いてて、乱暴にするなよな」

「アンタはそうでもしないと動かないでしょうが」

「ったく、おっかない奴だな本当」

「強気な方が気が楽だからね」

 後ろで仲睦まじく会話する二人。

 

最近、アクセス数が前より増えてうれしいです


次話は出せたら20日か21日辺りに出したいと思います。


余談ではありますが、この作品を書いていると

始まりはLISAの「Psychedelic Drive」

終わりはSilverの「 Wham Bam Shang-A-Lang」

が頭の中に流れてきます。

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