その電話は毎日鳴る
深夜二時二十三分、毎日同じ時間に電話がかかってくるようになった。
二週間が過ぎた頃録音してやろうと、決めた。
二時二十三分。
今日もかかってくる電話。
私は録音をスタートした。
眠たくてそのまま眠ってしまったが、翌朝聴いてみると。
「ぶつっ……きゅるきゅるきゅる、そうなんよ、明日ぶつっ……ぱりざまあみろと思う?ぶつっ……はは、私のお陰なのにね」
全て私の声だった。
相手の声は聞こえない、私の声だけが不穏に響く。
次の日寝不足で遅刻して、駅にほとんど誰もいない時に、それは起こった。
セクハラ、パワハラなんでもありの時田課長が、目の前をゆっくり歩いている。
駅の防犯カメラの死角だった。
目の前には長い階段とエスカレーター、私はそっと課長に近づき、触れたか触れてないかの力加減で、その背中を押した。
そのまま防犯カメラの死角を通って、何食わぬ顔で電車を待った。
その日遅刻して会社に着くと、社内は騒然としていた。
課長が亡くなったそうだ、駅の階段から転落して当たり所が悪かったらしい。
しかも後ろを歩いていた女性によると、勝手に転げ落ちて亡くなったそうだ。
数日後の深夜二時二十三分、いつもの電話がかかってきたのでまた録音をした。
ここ数日は何も録れなかったが、今回もぶつ切れだけれど、ちゃんと取れていた
「じいいっ、わかってるでしょ?きゃははは、そう、私が殺したんだよだってあいつもセクハラ凄かったぶつっ……じゃん、死んで当然」
「でも、殺すまでぶつっ……くても良かったんじゃない?流石にぶつっ……すぎだよ、これで捕まったら死刑になることもあるんだから」
「大丈夫大丈夫、私は絶対ぶつっ……らないようになってるから」
今度は会話相手も、それに応える声も私の声だった。
次の日会社の屋上に佐々木を呼び出した。
その日は突風が吹いていた。
私は事前に睡眠薬を入れた珈琲を佐々木に飲ませていたので、佐々木が眠った隙に、屋上のフェンスの向こう側に佐々木を少し持ち上げて押し出した。
佐々木は七階から落ちて即死。
今回もいい仕事をしたなと思っていた。
それから数日後また録音していたら音が入っていた。
「あんたさ、自分がぶつっ……んでることに気づいてるの?」
「もうぶつっ……ってるんだよ、あんなことした代償だよ」
「だからじーっ……夫だって」
「大丈夫じゃないよ?自分がさ?ぶつっ……んでることにも気づいてないじゃん、立派な悪霊だよ」
全て私の声だ。
私はふらふらと鏡の前に立つ。
鏡の前には恐ろしい表情をした、青白いひょろひょろした女が立っていた。
微かにしか映っていない。
ゆらゆらと揺れている。
電話が鳴った。
二時二十三分。
「あんたさ、もう死んでるんだよ」
妙にクリアな声が聞こえた。




