つぶき~ぼやき&つぶやき~その3
私は壁紙、貼られて間もない、美しい壁紙。
純白の気高い壁紙。
この家は子供が居るのだけど、その子供が私を汚していく…
昨日も外から帰った次男の汚っい手で私を触ったの。
私の美しく真っ白な肌に次男の手形が付いたの。
あり得なくないかしら…
そもそもこの家族は私を大事にしなすぎなのよ。
この家族が引っ越してきた当日。
そう、私とこの家族との運命の出会い。
私は素敵な主人との出会いを楽しみにしていたわ。
なのにこの家族ときたら…
母さんはテーブルの角で私のやわ肌を削り…
父さんは私に穴を開けまくる…
長男は私を椅子の足で擦り…
次男のクシャミで私はびしょ濡れ…
長女は私を鉛筆で狙ってる…
どうして皆私を汚すの??
汚くなったら替えればいいって思ってる??
私はそんなに安い壁紙じゃないの。
でも私だって不満ばかりじゃない。
母さんは私を見て、真っ白で綺麗って言ってくれたわ。
父さんは私の為に子供たちを叱ってくれたわ。
私は何時までもこの家に居たいって思うの。
でも、そのうち私は年をとって湿気を吸って…
この家から居なくなるのでしょうね。
だから今は私を大事にして。
今の美しい私を覚えていて。
真っ白で染み一つない私を忘れないで…
父さん、母さん、一つお願いがあるの。
たった一つだけ…
お願いします。
どうか外に出て煙草を吸って下さい…
換気扇さんは全ての煙は吸ってくれません…
私…どんどん汚れていくから…