決意の四姉妹
城の廊下には静寂が満ちていた。
謁見を終えた四姉妹は、戦場の鎧を脱ぎ、普段の服へと着替えた。厚手の布を纏い、その上に黒騎士のローブを羽織る。
王国の戦士たちが、戦場から離れるときに纏うものだ。
寒さの中、彼女たちは歩き始める。
誰も口を開かない。だが、心の中では、決意と不安が交錯していた。
エアリスは、先頭を歩きながら、女王の言葉を反芻していた。
「お前たちは黒騎士軍の未来だが、それ以前に、私の娘だ。」
その言葉に、彼女の胸が微かに痛む。指揮官として戦場に立つ覚悟はある。しかし、家族としてのぬくもりを捨てることができるのか。
それを問うことは、許されないのかもしれなかった。
フレアは、剣の柄を握りしめた。
「怒りに呑まれるな。その力を、仲間たちのために振るうのだ。」
戦場では、怒りが彼女を突き動かす。だが、それだけでは不十分なのだと、女王は言った。
剣を振るう理由、それを見出さなければならない。
ライは、ローブの端を握りながら、足元の石畳を見つめた。
「時には仲間に頼ることも必要だ。」
彼女はあえて馴れ合いを拒んできた。それは、自分自身が選んだ生き方だ。雷の狙撃手として、誰にも頼らず戦場で生き抜く。しかし、それが本当に正しいのか。彼女は、その答えをまだ知らない。
ウェンディは、吐息を白く染めた。
「優しさこそが、お前を強くする。」
戦場では、優しさは弱さになる。だが、女王はそうではないと言った。彼女の心は、まだ決まらない。
優しさを持ったまま、戦えるのだろうか。
誰もが、言葉にできぬ想いを抱えながら、歩き続ける。
氷の城門が遠ざかり、四姉妹はそれぞれの決意と葛藤の中に沈んでいた。
戦士でありながら、魔族でもある。
その狭間で、彼女たちは答えを探し続けるのだ。