大将軍ジークの降臨
フロストガルド城の謁見の間に、静寂が満ちていた。
女王レイヴェナの厳かなる声が響いた後、四姉妹は膝をつき、剣を胸に抱いた。誓いの言葉は、彼女たちの心に深く刻まれた。
だがその瞬間、氷細工の窓の向こうから、まばゆい光が差し込んだ。
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その名を口にする間もなく、純白の光が渦を巻き、謁見の間の中心へと集束する。
四姉妹が顔を上げたとき、そこに立っていたのは、長きにわたる神秘と誇りを抱えた男、ジークだった。
「よくここまで来たな、エアリス、フレア、ライ、ウェンディ。」
彼の声は優しくも力強く、まるで大地を揺るがすようだった。
女王は静かに微笑みながら、ジークへと目を向ける。
「この子たちの未来は、あなたの祝福を必要としているでしょう。」
ジークは頷いた。そして、その蒼き瞳が四姉妹へと向けられる。
「お前たちは、これから戦場へと赴く。だが忘れるな――力とは誇りではなく、支えるものだ。」
彼はゆっくりと歩み寄り、エアリスの前に立つ。
「エアリス、次期女王。お前の剣は導きの光だ。仲間たちの盾となり、道を照らせ。」
エアリスは静かに頷いた。その瞳には決意の炎が宿る。
次に、彼はフレアへと向かう。
「フレア、お前の炎は燃え盛る戦火だ。だが怒りに呑まれるな。その力を、仲間たちのために振るうのだ。」
フレアは拳を握りしめ、静かに誓った。
そして、ライの前に立つ。
「ライ、お前の雷は断罪の刃。だが、時には雷鳴を落ち着かせることも必要だ。信じる者たちに、その力を与えよ。」
ライは彼の言葉に微かに微笑み、その手を剣の柄へと添えた。
最後に、ジークはウェンディの前へと立つ。
「ウェンディ、お前の冷たき力は、ただの氷ではない。心の強さを忘れるな。仲間と共に、その氷を誇りへと変えよ。」
ウェンディは息をのみ、ゆっくりと瞳を閉じる。
ジークは彼女たちの前に立ち、両手を広げた。
「これより、お前たちに祝福を授ける。」
その瞬間、銀の光が四姉妹を包み込む。
神秘の力が、彼女たちの魂に刻まれた。
フロストガルド王国の 大将軍、そして四姉妹の兄である ジーク。
四姉妹は膝をつき、それぞれの剣を胸に抱えた。彼女たちは黒騎士軍の精鋭であり、フロストガルドの未来を担う者たち。しかし、その誇り高き戦士の中に、一人だけ王位を持たぬ者がいた。
それが ジーク だった。
レイヴェナ女王は、氷細工の壁に掛けられた王族の紋章へと目を向ける。
「フロストガルド王国には、古き掟がある。」
彼女の言葉に、四姉妹は息をのんだ。ジークはただ静かに聞いている。
「この王国では、王位は常に娘へと継承される。我々魔族の始祖、大魔女「ルミナ・ヴェルサ」 。王国の創始者であり、最初の女王、ルミナを神とした信仰により女王の継承 を選んだのだ。」
彼女は振り返り、ジークへと視線を向けた。
女王はゆっくりと答えた。
「王族の男は、王国の守護者となる。王座を持たぬ者は、剣を持つことで王国を守るのだ。」
ジークは口を開かなかった。しかし、彼の瞳には一切の迷いはなかった。
彼はゆっくりと剣を抜き、氷の床へと刃を突き立てる。
「王座を持たぬことは弱さではない。俺は、フロストガルド王国の大将軍。
この王国の剣として、生きる。」
沈黙が満ちた。
しかし、その空気は決して重苦しいものではなく、誇りと決意に満ちていた。
女王は微笑み、ジークの肩に手を置いた。
「お前は王国の盾であり、剣である。四姉妹と共に、この国を守りなさい。」
彼は頷き、四姉妹へと視線を向けた。
「俺は、お前たちを支える。」
その言葉に、四姉妹は強く頷いた。
そして、この瞬間から彼女たちはただの戦士ではなく、王国の未来を背負う者となった。
ジークは王ではない。
しかし彼は、この王国を守る 最強の盾 であり、誇り高き剣 なのだ。