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【休載中】ダークインザウィッチ 黒騎士四姉妹  作者: 泉水遊馬
第4章 帝国首都: アイゼンブルグ
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死者の証明

血に染まった静寂の戦場。


帝国兵たちの足音もなく、冷たい夜風だけが吹き抜けていく。


倒れたまま動かないアストリア・ヴェイルの亡骸。まだ温もりを失いきっていないその体を見下ろしながら、エミリア・フリューゲルは剣を横に置き、静かに息を吐いた。


彼女の冷たい瞳が、ウェンディを射抜く。


「……愚かね。」


ウェンディは歯を食いしばる。


「黙れ……!」


しかし、エミリアは微笑みさえ浮かべながら言葉を続ける。


「彼女は王国への忠誠を貫こうとした。でも、そんなものは戦場では意味を持たない。」


剣の柄を軽く握り、エミリアはアストリアの亡骸へと視線を戻した。


「この女は、ただの駒だったのよ。」


ウェンディが激昂する。

「アストリアは……仲間だった!」


しかし、エミリアはその言葉すら冷静に受け止める。


「駒が盤上でどれだけ美しい動きをしようとも、勝利に貢献しないなら切り捨てるべき存在。」


ウェンディの剣が震える。

「そんな……そんなの、人の命を何だと思ってるの!?」


エミリアは微笑んだまま、剣を持ち上げる。


「命?それはただの"結果"よ。」


エミリアが続ける。

「あの時の氷の魔女。お前は、王国の兵士たちから何と呼ばれているのかしら?」


ウェンディは黙ったまま、剣を構える。


エミリアは冷笑する。

「私はお前の名前すら興味がない。だが、お前は王国にとって特別な剣士……そうなのよね?」


沈黙。


「だからこそ、私はお前を殺さなかった。」


ウェンディの目が僅かに揺れる。


「ただの戦士なら、あの戦場で死んでいたはず。だが、お前は王国を動かす象徴になる。だから、生かした。」


ウェンディが声を絞り出す。

「……利用するために?」


「そうよ。」


エミリアの瞳が冷たく光る。


「戦場は、ただ敵を殺せば勝てる場所ではない。"動かす者"を操れば、戦いは終わる。」


ウェンディが剣を握りしめる。

「……お前は、王国の誇りをただの道具として扱う気なのか。」


エミリアは静かに歩を進める。

「誇り?戦場では、勝利が誇りになるのよ。」


そして――氷の刃がウェンディに向かれた。


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