フロストガルド王国 女王レイヴェナ
フロストガルド城 ― 謁見の間
夜明け前の冷たい風が、フロストガルド城の高窓をかすめる。氷の彫刻が並ぶ荘厳な回廊を抜けると、そこに広がるのは王国の中心―― 謁見の間 である。
巨大な水晶の柱がそびえ立ち、氷細工の天井には無数の光が反射し、まるで星空のように煌めいていた。王族の紋章が刻まれた円形の床、その中央に立つ一人の女性が空気を支配している。
「エアリス、フレア、ライ、ウェンディ。近くへ。」
王座に座す レイヴェナ女王 の声が響いた。低く、力強く、そして厳かである。
黒騎士軍の最高統率者にして王国の女王、その金色の瞳は冷たい氷壁を通して四姉妹を映していた。彼女たちは一糸乱れぬ姿で進み、膝をつく。
「いよいよ、この日が来たか…」
姉妹の長女 エアリス は、静かに目を閉じた。彼女の背後で、次女 フレア の炎のような髪が揺れる。ライは無言で視線を上げ、ウェンディは少し緊張した表情で女王を見つめている。
「お前たちを正式に 黒騎士軍の戦士 として任命する。」
レイヴェナの言葉が、静寂の空間を切り裂いた。
四姉妹は息をのむ。戦士であることは当然のことだった。しかし、この場で女王から直接任命されるということは、ただの戦士ではない。王国の命運を背負う者として、戦場の最前線へ立つことを意味していた。
「フロストガルド王国は、今存亡の危機にある。」
女王の指が 氷の地図 をなぞる。
科学帝国の侵略は、亜族との同盟を揺るがし、王国の境界線をすでに越えてきていた。戦場はすでに冷たい血が流れている――そして、今夜を境に、黒騎士軍は新たな戦いへと突入する。
「四姉妹よ。お前たちの剣を見せよ。」
女王の命令とともに、姉妹はそれぞれの剣を抜いた。
ヴァルセリア・ルミナ(光剣) ― エアリス
インフェルノ・ヴァルカン(炎剣) ― フレア
テンペスト・フルミナ(雷剣) ― ライ
フロスト・エンブレイス(氷剣) ― ウェンディ
四本の魔力剣が、一斉に光を放ち、空間が揺れた。
「この剣こそ、王国の希望。お前たちこそ、黒騎士軍の未来だ。」
レイヴェナの言葉は、彼女たちの魂を震わせる。
「今日から、お前たちは フロストガルドの守護者 となる。帝国との戦争の最前線に立ち、我が王国を導け。」
その瞬間、運命が決まった。