第9話:私の剣は、父のもの
夜の静寂。
私はひとり、京の外れにある小さな墓地を訪れていた。
そこに佇む、ひとつの墓標。
――「桜井 柾真 之墓」
父の名が刻まれたその石を前に、私はそっと手を合わせる。
「……ただいま、父さん」
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父・桜井柾真は、腕の立つ剣士だった。
剣術道場を営み、多くの門下生に慕われていた。
優しくて、強くて、そして何より――
“正しい人”だった。
「こはる。剣は、人を斬るためにあるんじゃない」
「自分の信じるものを守るために握るんだよ」
幼い私に、父はそう教えてくれた。
遊び感覚で握った木刀を、優しくも厳しく指導してくれた日々。
それが、私の“原点”だった。
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けれど、運命はあっけなく崩れた。
ある日突然、父は“反逆罪”の汚名を着せられた。
覚えのない罪で捕らえられ、ろくな裁判もなく処刑された。
私は、何もできなかった。
泣き叫ぶことしかできず、ただ父の最期を遠くから見つめていた。
「強くなれ、こはる」
「剣は、お前を裏切らない」
それが、父の遺言だった。
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(私は、あの日から止まったままだ)
女であることを理由に、真実を追うことすら許されなかった。
だから私は、“桜井こはる”を捨てた。
男として生き、剣を握り、父の無念を晴らす――
それだけを支えに、ここまで来た。
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風が吹き抜ける墓地で、私は静かに呟いた。
「父さん……私、ちゃんと前に進めてるかな」
壬生浪士組に入って、仲間ができた。
副長とも“契約”を交わした。
だけど、心の奥底では、まだ迷っている自分がいる。
私は、復讐のためだけに剣を握っているのか。
それとも――
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ふと、背後に気配を感じて振り返ると、沖田が立っていた。
「こんなところにいるなんて珍しいね」
「……尾けてたんですか?」
「はは、心配だったんだよ。最近、少し無理してるみたいだったから」
沖田は、私の隣に立ち、墓標を見つめた。
「ここ、君のお父さんの墓?」
「……はい」
「そうか。剣士だったんだよね」
「ええ。私の剣は、全部父から教わったものです」
少しだけ、声が震えた。
沖田は何も言わず、ただ頷いてくれた。
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「隼人」
「剣ってさ、きっと“誰かの想い”も一緒に受け継いでいくものなんだと思うんだ」
「……想い?」
「うん。君が振るう剣には、お父さんの想いが乗ってる」
「だから、君は君のままでいいんだよ」
その言葉に、私は不意に涙がこぼれそうになった。
慌てて顔を背ける。
「……ありがとうございます」
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帰り道、夜空を見上げながら私は思った。
(私は、父の剣を握っている)
(でも、それだけじゃない――これからは、自分の剣を見つけなきゃいけない)
父の無念を晴らすだけじゃなく、“桜井隼人”として生きる意味を。
■桜井隼人より
「ここまで読んでくれてありがとうございます。
……え? 女だってバレてる? そ、そんなことないですよ……たぶん。
これからも剣士として頑張りますので、応援よろしくお願いします!」
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■沖田総司より
「いやー、隼人くんってば、頑張ってるよね!
僕としても、いい後輩ができたって感じかな?
これからドタバタもあるだろうけど、みんなも隼人の成長を見守ってあげてよ!」
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■土方歳三より
「……読むのは勝手だが、途中で投げ出すな。
最後まで読んでこそ、剣と覚悟の意味がわかる。
桜井、お前も読者に甘えるなよ。精進しろ。」
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■永倉新八より
「おいおい、読んでるだけじゃなくて感想も書いてけよ!
作者が泣いて喜ぶからよ! な? 頼むぜ、兄弟!」
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【コメント(作者)】
「ここまで読んでいただきありがとうございます!
桜井隼人の成長と、新撰組の仲間たちとの絆を、これからも描いていきます!
ぜひ感想・評価で応援してもらえると、キャラたちももっと活躍できますのでよろしくお願いします!」