表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/24

第19話:封じられた真実

資料庫の奥。

 積み上がる古い文書の匂いが鼻をつく。

 ほとんど誰も立ち入らないこの場所で、私はひとつの記録を見つけた。


「……桜井柾真――?」


 それは、私の父の名が記された“極秘調書”だった。


 封印と書かれた紐が固く結ばれている。

 表紙には『開示権限:上級幕臣限り』と記されていた。


(やっぱり……父の死は、偶然じゃない)


 心臓が激しく脈打ち、指先が汗ばむ。


「誰かに……隠されてる」


 私は資料の写しを取り、すぐさま土方副長の元へ向かった。



 副長は私の報告に、無言で文書を受け取った。


 長い沈黙のあと、低く呟く。


「……お前の父親は、幕府のある計画に関わっていた。

 表沙汰にはできない……極秘の内紛だったらしい」


「それは、誰が……」


「名は伏せられていたが、事件に関わった旧幕臣が今も京に潜伏している。

 だが、あまりに深く掘れば――お前も巻き込まれるぞ」


 私は静かに首を振った。


「私には、それでも知る覚悟があります」


 その瞳を見て、土方はわずかに頷いた。



 その晩。

 私はこっそりと旧幕臣の名が記された古い名簿を手に入れた。


(――山科 為景。元・政務奉行付き筆頭書記官)


 父と同じ時期に働いていた人物。

 事件の真相を知っている可能性が高い。


 翌日、私は私服で山科の潜伏先とされる裏長屋を訪ねた。



 薄暗い路地の奥、静まり返った木戸を叩く。


「……山科為景さん、いらっしゃいますか」


 返事はなかった。

 だが、気配は感じる。


「私は桜井柾真の娘です。どうか、話を――」


 そのとき、背後で足音がした。


「お下がりください。こちらで処理します」


 制するように現れたのは――榊原主膳の部下だった。


 柔らかい口調とは裏腹に、目が笑っていない。


「これは極秘調査案件です。お引き取りを」


「なぜ榊原様の部下がここに……」


「申し訳ありません、指示により。以上です」


 私は、静かに一歩退いた。


(……榊原様。あなたは、なぜここに“先回り”していたんですか)



 その夜、屯所に戻ると、まるで待っていたかのように榊原主膳が現れた。


「隼人君、今日はどこかへ?」


「散歩です。少し、気持ちを整理したくて」


「そうですか。――焦らないことです。真実は、時に刃になりますから」


 その言葉に、私は思わず返した。


「でも、何も知らずに振るう刃のほうが、もっと危険です」


 榊原はわずかに目を細めた。


「……君は、強くなったね」



 夜風が吹いた。

 私は刀の鞘に手を添える。


(この風の先に、父の真実があるなら――)


 私は、切り拓くしかない。


桜井隼人こはるより


「やっと……父さんの影に近づけた。けど、その分だけ怖さも増してる。

でも、私はもう戻らない。刃が真実を裂くまで、前に進む。……見守っててね、父さん。

それと読者の皆さんも、感想とか……ちょっと欲しいです」



■榊原主膳より


「ふふ、少しばかり手間を取らせてしまったかな。

でも私は、あくまで“皆さんの味方”ですよ?

隼人君には、どうか慎重に歩んでほしい……あまり深入りしないようにね」



■沖田総司より


「隼人くん、最近やけに難しい顔してるよねー。

でもほら、笑ってる方が似合うって! そのうち俺もバッサリ助けてあげるから。

……たぶん、ね?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ