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第1話 召喚されたようです

新作始めました!

はじめましての方も、そうじゃない方も、

ご覧いただきありがとうございます

まったりペースで更新予定です


楽しんでいただけますように


では、どうぞー!

突然、世界は光に包まれた。


その一瞬前まで、普通に部屋で、ぬいぐるみのうさちゃん片手に缶チューハイを飲んでた記憶はある。

それが、なぜこんなことに。






今日は金曜の夜。

仕事が終わったとはいえ、金曜の夜に一緒に酒を飲んでくれるような相手もおらず。

大学時代の友達も、同期も、みんな彼氏とのデートやら、セミナーやらで忙しいらしい。


私は特に向上心があるわけでもなくて、生まれてこのかた、彼氏なんてできた事もない。

別に、ものすごく不細工だとかではなく、標準的な見た目だ(と信じたい)し、理想が高いわけでもない。

じゃあなんで彼氏がいないのかと聞かれれば(実際に聞かれることもある)、言い訳としては、中学から大学まで一貫して女子校だったからとしか言えない。


漫画みたいに、近所に気になる男の子がいたわけでもなく、人見知りな性格が災いしてか、合コンにも数えるほどしか参加してこなかった。


職場にいる男性は、既婚者か彼女持ちの人ばかり。

かっこいい人もいるにはるけど、奪ってまで付き合いたいかというとそんなわけでもない。


むしろ、男性に対してはほとんど免疫がない。


年の離れたかわいい弟はいるけれど、まだ小学生の弟を男性という括りには入れられない。

それに、弟は弟だ。

仮に歳が近かったとしても、たぶん私に免疫をつけることにはならなかったと思う。


とにかく、そんなわけで、私は男性に免疫もなく、出会いらしい出会いもなく、お付き合いをした経験も皆無のまま、二十四歳になった。

社会人二年目。

まだまだ新人みたいなものだ。


会社は、ごくごく中堅の製薬会社。

私はそこの経理部所属。

趣味は読書と映画鑑賞、それと料理。

ありふれた私は、ありふれた毎日を送っていて、これからもそれが続いて、もしかしたらそのうち素敵な男性と巡り合って、付き合って、結婚するのかなって思ってきた。


そう。

巷で話題の乙女ゲーに手を出すこともなく、読む本はラノベや恋愛小説より推理小説。

料理が好きだって言っても、特別なものを作ることはできても、自分のために作るほどでもない。

製薬会社に勤めているからって、調薬が出来るわけでもない。

本当に普通の、どこにでもいる平凡な会社員。

それが私、織部瑠璃。




だから、ひとり暮らしの部屋が突然、眩い光に包まれたときは、何が起こったのかまるでわからなくて、雷なのかな、とか、目眩?とかいろいろ考えた。

もしかして、脳の病気かとも、真剣に考えた。


でも、眩しさに閉じていた目を開けた瞬間、それまで考えていたことがふっとんだ。

正直に言えば、何が起こったのか、まったく理解できなかった。


周囲にいたのは、なんだか怪しげな宗教のような、黒いフード付きローブをまとった人たち。

某有名な魔法使いの映画に出てくるような服装。

それに、なんだか手にはタクトみたいな棒を持っている。

しかも、私の足元には光る魔法陣らしきもの。


一瞬、怪しげな宗教組織にでも攫われたのかと、真剣に思った。

でも、そんなはずもない。

だって、さっきまでお酒を飲んでいた記憶がはっきりあるのだから。



「えーっと……?」



声は、普通に出た。

周囲にいた怪しげな人たちは、一斉に何か話し始めたけど、何を言ってるのかさっぱりわからない。

英語やドイツ語、中国語や韓国語でないことは確かだ。

英語とドイツ語は大学で学んだし、中国語や韓国語は、独特だからすぐにわかる。

たぶん、ロシア語でもない。

もっと、聞いたことのない言語。

少なくとも、ラテン語から派生した言語や、スラブ語の派生言語ではなさそうだ。

スラブ語はそんなに詳しくないからわからないけど。


でも、魔法陣に書かれている文字らしきものは、どことなく、中東っぽい。

いや、ラテン語っぽい文字もある。

うん。ますますわからん。

あれだ。ルーン文字とかいうのに近いかもしれない。


そんな、現実逃避的なことを考えていたら、黒ローブの一人が近づいてきた。

背の高さから見て、たぶん、男性。


その人が、タクトを一振りすると、なんだか光の粉みたいなのが私に降り注いだ。


(げっ、なにこれ。怖い!)


振り払おうとしたけど、それより先に私の身体に吸い込まれてしまった。


次の瞬間、突然、周囲の人の言葉がわかるようになった。



「俺の言葉、わかるか?」


「あ、はい」



尋ねられて、なかば反射的に返事をする。

その人は、周囲を見回して、成功だ、と言った。


えーと、何が成功なのか、まったくわからん。

疑問符だらけの私に答えるように、その人は言った。



「ここは、アルメニア王国。俺……私たちは、魔法であなたをこの世界に召喚させた。この国を守るために」


「召喚……?」



それってあれだろうか。

たまにみるラノベに出てくる、異世界転移。

え、でもあれって、転移してくる時に神様とかに出会って、チートな能力を授かったりするよね?

私は別に、神様らしき人にもあっていない。


(チートな能力は手に入ってるのかな)


とりあえず分かったことは、どうやらこの世界、魔法がある世界らしいってことだ。



「えっと、私の能力って?」


「ふむ。調べてみるか」



そう言って、代表らしき男の人が私に手をかざす。

いや、ちょっと納得しかけたけど、チートだろうとそうじゃなかろうと、別に変な能力はいらない。

それよりも。



「あの、帰りたいんですけど」


「それは無理だな。それより、あなたの能力だけど、魔力は潤沢にあるようだけど、これと言って抜きん出ている何かはなさそうだ。おかしいな」



今、サラッと無理とかいいましたね?

しかも、特に能力がないとか、それがおかしいとかどういうことだ。



「では、彼女は救国の聖女ではない、と?」



別の人が言う。



「座標軸がズレたか?しかし、魔力がこれだけ潤沢にあることはすごい。仕込めば使えるかもな」


「いや、元の世界に返してください」



私はノーと言える異世界人。

そもそもなんで、魔力なんてあるのかよくわからないけど、彼らの言葉からして、私は国を救う為に喚ばれたらしい。


(むりむり。そんな大役無理だから)



「だから、それは無理だと言っただろう。異世界転移は片道通行。逆行は不可能だ。」


「そんなっ」



再度、元の世界に戻るのは不可能だと断じられて、目頭が熱くなる、と同時に涙がボロボロ溢れだした。


(なんで私一人が。なんで私が、召喚なんてされちゃったの?私は、特別な知識も経験もない、普通の会社員なのに。世界を救うなんて、そんな責任の重いこと、やりたくない。みんなに会いたい。帰りたい)



「大魔法使い様……」


「あー……なんかコイツ、ちょっとこの世界との順応も不安定みたいだし、しばらく俺が預かるわ」



不安そうな周囲の魔法使いらしき人たちに、声をかけてきた男性が言う。



「このままだとコイツの魂も揺らぐ。定着するまでは、何が原因で狭間に落っこちるかわからねぇし、この件は俺の預かりとする」


「しかし、聖女でないのなら……」


「召喚の儀は、千年に一度きり。知ってるよな?」



周りで話しているのを聞いて、どうやら私は聖女と間違えて召喚されたらしいということと、帰れないこと、そして、本物の聖女ももう召喚する事はできないということがわかった。

そして、私の存在はまだ不安定だということも。



「コイツは異世界からの客人だ。丁重にもてなすように」



きっぱりそう言うと、その男性は私の肩を抱いた。

思わぬ温もりに、ビクッとなる。



「よし、帰るか」



コオオォォ、と音がして、私はまた光に包まれ、そして今度こそ気を失った。

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