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「私たちはこの世界に生まれて、生きて、やがて死んでいきます。その間にいろんな人たちに出会います。笑ったり喜んだり怒ったり泣いたりもします。

 それが人生なんです。一度きりの人生を。自分だけの人生をみんなが生きています」

 まるはまりあ先生のお話をじっと目と耳をかたむけて聞いている。

「まるちゃんにはまるちゃんにしかできないことがあります。うまくできないこともたくさんあると思います。私もおんなじです。でもできることもあります。それを見つけて欲しいんです。まるちゃんにはきっとそれができます。

 ゆっくりと時間をかけて、探してください。

 自分にできることを。自分の愛する人を。まるちゃんが人生の中で一番大切だと思えることを」とまりあ先生は言った。

「はい。わかりました。まりあ先生」とまるは笑顔でそう言った。(後日、あのお話は昔恩師から聞いた受け売りのお話なんですとこっそりと教えてくれた)


 数日後。担任の南雲先生が笑顔でまるのお家にケーキを持ってやってきた。

「小林さん。調子はどう? 元気でやってる?」南雲先生は相変わらずの明るい笑顔でまるに言った。

「はい。大丈夫です」とまるは南雲先生に言った。「ならよかった」と南雲先生は言った。(まるのお家から帰るときに南雲先生はまるの手を握って、なにかを受け渡すように、固い握手をした)


 一ヶ月後。

 

 ある日の夜。眠る前の時間。

「ゆっくりね。お休み、まる」と言ってお母さんは(電気を消して)まるの部屋を出て行こうとした。

「お母さん」

「なに?」少し疲れた顔のお母さんは言う。

「いつもありがとう。迷惑ばかりかけて本当にごめんなさい」と小さな声でまるは言った。

 するとお母さんは(まるの言葉を聞いて)すごく驚いた顔をしたあとで、本当に嬉しそうな顔になってにっこりと笑うと、そのあとすぐにお母さんの目から涙が溢れて、そのまま泣きながら、ベットの上で横になっているまるのところに駆け寄って、まるのことをぎゅっと抱きしめてくれた。

 まるはお母さんの涙を見ることも初めてだったし、こんなに強く抱きしめられることも初めてだったので、どうしていいかわからずに、ただそのままじっとしていた。(じっとしているのは得意だった)

「……まる」

 少し時間が過ぎたあとでお母さんは言った。

「なに? お母さん」まるは言う。

 まるはお母さんの言葉を待った。

 でも、そのあとお母さんは結局、まるになにも言わなかった。

 お母さんはまるを抱きしめたままで、……ずっと、ずっと、ただ(月の照らす)薄明りの中で、とても静かに泣いていた。


 ゆっくりとおやすみなさい。


 まるとさんかくとしかく 終わり

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